短編2
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紅葉

「ねえ、そこの彼女、お茶しない?」

ありきたりなナンパ文句。つか古くない?それ。

チャラそうな声。

チャラそうな服。

ナンパに点数をつけるのもおかしな話だが、間違いなくこの男のナンパは星一つだ。

そんな20点のナンパ男と肩を並べて歩いているのは、私は今金欠だからである。

2ヶ月近く外食なんてしていない今、ただでお茶が飲めるというのは抗い難い提案だった。

顔が並より割と良かった、というのも理由として挙げられるかもしれない。

紅葉したちょっとした観光名所の並木通りを1分前に知り合った男と歩く。

軽薄でうるさいこのトークと、場違いなヘラヘラした服装がなければ、中々良い(?)シチュエーションなのではないだろうか。

ひらひらと舞う紅葉がそばを流れる川に落ちていく。

真っ赤な紅葉で、川が染まったかのようだ。

ちはやふる かみよもきかず たつたがわ からくれないに そめくくるとは

ふと、この句を思い出した。この風景にぴったりだ。やっぱり秋はいいなぁ。

「…でさぁー、このとき、オレェー」

ああもううるさい。せっかく人が日本の秋をしみじみと感じているのに…

私が合意してついてきたとはいえ、内心苛つき始めていると。

「うわぁぁああ」

気持ちよさげに喋りまくっていた男がなんとも間抜けな悲鳴を上げた。

「こ、こここ、ココ、れ」

…あなたは鶏ですか?

「これ、手??もみ、じ、じゃない?」

その時、私は気づいた。

私は俗に言う『霊感のある人』らしく、そこまではっきりとではないが、幽霊とやらの姿をなんとなーく視ることができる。

男の後ろには、多くの子供の霊、水子霊、というのだっただろうか_________が視えた。

男には紅葉が子供の手に見えたらしい。

…比喩で子供の手を紅葉と表すこともあるけれど…

だが確かに、私にも一瞬そう見えた。

はぁ。大きなため息をついていると、男は私なんかほっといて遥か遠くまで逃げていってしまった。

私は一人で紅葉を眺めて帰ることにした。

タダより高いものはない。それを痛感した出来事だった。

_______あの男、水子霊が両の手じゃ足りない数憑いていたけど、大丈夫だろうか_____

Concrete
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