タルパさんの語り3(伏拝の怪)

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タルパさんの語り3(伏拝の怪)

最近、良く登場する俺の友人である、タルパさん。

この噺はですねぇ。発表するか悩みました。

その理由は最後に語りましょうか。

これはね。タルパさんが警備員のお仕事を始めたばかりの時に経験した噺だそうです。

タルパさんの出身地に『伏拝(ふしおがみ)』って所があるそうで、そこで体験された噺です。

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その『伏拝』って場所なんですけどねぇ。

国道沿いにありまして、山を切り崩し道を通してるんですけど、何かを避ける様にカーブがあるんです。

そのせいか事故も多い。

道路を拡張の工事を警備する為、タルパさんはもう1人の警備員と現場に向かいます。

長期現場なもんで、タルパさん達警備員にも良い現場なんです。

作業はね、通行止めをして、人や車が入って来ない様に見張るんです。

封鎖した後ね、持ち場に着く前に、社長でね、皆が親方って呼んでる方がタルパさん達に作業場に女性が入ってるなんて言うのです。

封鎖前に誰も居ない事は確認してるのでおかしいって思ったわけですが、当然、誰も居ない。

タルパ「親方、誰も居ないよ」

親方「マジか?確かに見たんだけどなぁ」

そんな事が何日か続くんですね。

その日によって女性だったり、子供だったり、動物だったり様々なんですね。

しかも、不思議な事に、誰一人として目撃した人物だったり、動物の容姿の詳細を覚えて無い。

人物ならどんな格好してるとか、髪の長さとか、動物なら、犬とか猫とか、それを全く覚えて無いって言うんです。でもねそんな事が続いても、工事はしなきゃいけない。こうなったら、閉鎖前に確認して誰も居なければ、何を見ても作業を始める事にしたんですね。

警備員の2名はそれぞれ、通行止めしている入り口付近に1名づつ付いてます。

何も無い所ですからねぇ。心細いわけだ。

親方の計らいで、警備員2名と親方はトランシーバーを持って仕事に取り掛かってました。

2人で雑談でもしてれば、気が少しは楽だろうってね。

ただ、親方も面白い方でねぇ。

俺の悪口言ってたら、タダじゃおかねぇぞ。なんて笑いながら言ってました。

タルパさん度胸ありますからねぇ。親方のそんな冗談に親方の悪口いっぱい言おうぜとか笑いながら返したんですね。

数日は何も起きなかった。

トランシーバーも、警備員2名、たまに親方が加わる雑談。それから親方から、一服とか、飯の号令。

それくらいにしか使われ無かったんですが、

そんなある日。

ざざっ、

ざざっ、

ノイズが入った。

最初のうちはその程度だったんですが、次第に何やら話し声みたいなものが聞こえる様になります。

ただね、何を言ってるかまでは分からないんです。

それは、作業している職人さん達も体験しているんですよ。

足に何かがまとわりつく感覚が、あったり、肩を叩かれて振り返っても誰も居ない。とにかく不思議な事起きたんですね。

そのせいでね、タルパさんの相方何名か変わってるんです。

タルパさんは最後までその現場に行ったんです。

理由は2つありまして、

一つは早く終わるから。国道沿いの現場なので、通行止めに出来る時間が、決まってるんですよ。

その会社は何かトラブルがあると、困るって事で通常6時までの作業を4時に終えるんですよ。

早く終わっても日当は同じですからね。

美味しいわけだ。

後はね。タルパさんはこの怪現象を、楽しんでいたんですね。

そんな現場も最終日が近づいて来ます。そんなある日、作業を終えて、ちゃんと道路が使えるか、忘れ物無いかを警備員2名で見回るんですよ。

手袋が落ちてる。

あれ?職人さん忘れたのかなって相方の警備員が拾う。

すると、ずっしりと重さがある。

そう、まるで手首を持ったみたいにね。

ビックリした相方さん手を離す。

地面に落ちた手袋はすぅっとぺしゃんこになる。

手首なんて無いんですよ。

流石にもう触れる気になれず、そのままにした。

そして、最終日をむかえました。

色んな事起きたので、最終日だけは6時まで作業する事になり、5時を過ぎてうっすらと明るくなって来ました。

最後の見回りをしてる時タルパさん見たんですよ。

木々が生い茂る中奥に不揃いな石が無数に並んでる。

タルパさん分かってしまった。

それね、いわゆる無縁仏なんですね。

中には小型で円形の石もありました。

昔は動物を埋めて、墓石にそんな物使ってましたからね。

この現場で起きた怪現象はこれが原因だった。

すると、職人さん達が車を止めてた辺りが騒がしい。

タルパさん達が駆けつけると

車のガラスに無数の手形がついてた。

男性と思われる大きなもの。

女性と思われる少し小さなもの。

子供と思われる小さなもの。

動物の足跡と思われるもの。

タルパさんが聞かせてくれたのは、こんな噺でした。

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さて、この噺ですが、冒頭に書いた通り、発表するか迷いました。

いつもタルパさんから噺聞く時ですが、俺は仕事中なんですよ。

噺の要所をメモしておくのです。

メモをリュックの中にしまい、帰った後、カラーボックスの2段目に置いたんですよ。

そこね、俺が払い込み用紙や、仕事のシフトなんかを書いたメモを置いてる。

タルパさんから聞いた噺をメモを見ながら構造練ろうと思いメモを探すと…

まだ、未発表の噺のメモはあったのですが、この伏拝のメモだけ無くなってたんですよ。

タルパさんと相談して今回は発表しました。

何が起きても責任は負いかねますがね…。

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