短編2
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美童丸

見目は果報のもとい

てなことを申しますが 美しく生まれたばっかりに 不幸な人生を歩まれたかたもいるようです

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平安のころ 旅の雲水が伊吹山中にて 可愛らしい赤子を拾いまして

これを美童丸と名づけて 裕福そうな家々の戸口へ立たせては 物乞いをさせていたそうです

やがて絶世の美少年へと育った彼を 今度は知り合いの寺へ売り払ったというから ひどい坊主もあったもんですな

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寺では お稚児さんとして重宝がられたようですが

美しいご婦人の相手ならまだしも 抹香くさい坊さんの夜伽じゃ嫌んなります

ついに我慢しきれず 寺へ火を放って逃げたんだとか……

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浪々の身となり やがてたどり着いたのが延暦寺

言わずと知れた 天台宗の本山であります

ここで僧として修行をはじめますが 美少年は頭を丸めてもやっぱり美少年

里の女どもが放っちゃおかない

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「やだもう可愛いっ!」

なあんて言われ あるときついに一人の後家さんと通じてしまいました

このことが 女嫌いで有名な伝教大師の耳に入りまして

「お前は破門だっ」てんで とうとう比叡山を追われてしまいます

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生みの親に捨てられ

育ての僧にも捨てられ

最後には大師様にまで捨てられて

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あな口惜しやな われ三たび捨てられしぞ

このうえは鬼となりて 世を呪いたてまつらん

なうまくさまんだ そわたやうんたらた……

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美童丸 ついには鬼へと変じてしまいました

これがご存知 酒呑童子でありまして 一説には「捨て童子」がその語源なんだとか

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とまあ 美貌が仇になったというお話でしたが

拝見したところ 読者の皆さまにおかれては そのような心配は ご無用と存じます

容姿は、人並みが一番。

呵々――

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