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中編5
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掛け布団と実家

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私が1人暮らしを初めてから、最初の年末に

実家に帰った時の話です。

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夜遅く実家に着き、家族と軽く話をし、母が用意しておいてくれた夕食を食べ、

その日は、早々に寝ようと思いました。

その年は大雪で、例年以上に寒く、

( 実家は雪国なので )

2階に用意されてた布団の横には、

石油ストーブが置かれており、部屋を暖かくしてくれていまた。

(寒いし、おかんがストーブつけといてくれたんや)

と、有難く思いつつ、

電気を消し布団に入りました。

(久しぶりに帰ったしな、

明日は弟と、何処か行くかな、、、)

などと考えているうちに、

電車で5、6時間かけて帰って来た疲れのせいもあり、知らぬ間に寝てしまいました。

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夜中に、寒いなぁと思い、

(布団、ちゃんと掛かってないんじゃないんか、、、?)

と、布団を首元の方へ、グッと引っ張りました。

その瞬間、布団の右裾を、

逆に、思いっきり引っ張られました。

私が引っ張った掛け布団が、足元の方へ引っ張られて、

私の上半身には、毛布だけが残りました。

( えっ?

誰が、引っ張ったん、、、?)

途端に私は目が覚めました。

体を起こして、足元を見ましたが誰もいません。

ただ、そこには、

仏壇が入る訳でも無かった、仏壇入れの扉が

閉まっているだけです。

ヤバい、、、怖い、、、

私は、1階に下りて行こうかとパニックになりましたが、恐怖で身体が動きませんでした。

暫く、怖さのあまり硬直していましたが、

暗闇の中で、ぼやっと見えている仏壇入れを、

何故だかじっと見ていました。

その内に、

先程の出来事は頭から消え失せていて、

( 何でこんな仏壇入れ、作ってんろ、

何も入れる物なんて無いのに、、、)

と、意味の分からない事をボンヤリと考えていました。

( あぁ、確か、

亡くなったおじいちゃんが、この家の設計したって言うとったわ、

設計士に頼むと、お金かかる言うて。

こんな事言うて悪いけど、ケチやな。

そんなんやし、この家の造りは変なんやとか、おかん、言うとったな、、、

まぁ素人が設計してんしな、

でも、設計出来るって凄いなぁ、、、

って、

そんなんどうでも良いわ、眠いし。

何を考えとってんろ、、、)

そうして、私はまた眠りに落ちました。

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次の朝、目が覚めました。

( うん? 此処どこや?

あぁ、そうや、実家やったわ、、、)

何となく寝惚けながらも、身体を起こそうとして、

私は一瞬で目が覚めました。

私の掛け布団のシーツの、表面全体が黒く焼け焦げています。

1ミリも残さず、隅々まで。

( っ!!

布団、焦げとる!私、大丈夫やったんか!?)

私は呆然と、黒く焼け焦げたシーツを見ていました。

怖い、、、

私、死ぬところやったんかな、、、

それと同時に、

( あっ、寝る前、ストーブ消したっけ、、、)

すぐに、横のストーブを見ましたが、

火は消えていました。

ストーブ、、、

布団の、やたら近くに置いてあったんやな、

私は、放心状態でした。

その後、軽く恐怖を感じながらも、

暫く経ってから、1階に下りて行き、母にシーツが焦げた事を伝えました。

母は、分かったよ、とだけ言って、

2階に上がって行きました。

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台所で、椅子に座りながら思い出していました。

( 、、、夜中に誰か、布団を引っ張ったよな?

で、暫くの間、

仏壇入れを見とったよなぁ、、、)

そして私は、

何となく、空っぽの仏壇入れが気になりました。

私は霊能者でも、

御札を貼るようなお寺の住職でも、

何でも無いんですが、母に言いました。

「 何も入ってない仏壇入れは、

何かを入れたがるんやよ、

やし、本でもダンボールでも何でも良いから、

隙間も無いくらい、何か入れた方が良い 」

何故、そう思ったのかは分かりませんが、

そうした方が良いと思いました。

母は、分かったわ、と急いで2階に行きました。

暫くして、私も2階に行くと、

母の姿はありませんでしたが、

仏壇入れの扉が開いており、

その中には、弟の読まなくなった漫画や、

いらない服が入ったダンボールが、所狭しと詰められていました。

それを見て、私はホッとしました。

その3日後に、私は1人暮らしのアパートへと戻りました。

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それから何年も経って、

私は1人暮らしをやめて、実家に戻りました。

ある日、母と話していた時に、

" シーツ黒焦げ事件 " の話になりました。

「私、あの時、

よく火達磨にならんだなって思うわ」

と、笑いました。

母は何も言いませんでしたが、軽く笑っていました。

「あと、仏壇入れに、

何でも良いし、物を入れた方が良いって、

インチキ占い師みたいな事言うとったけど、

おかん、それ聞いて、仏壇入れに物を詰めてくれやん? 信じてくれたんか?」

すると、おかんが、

「 それまで気付かんかったけど、

あんたに言われて、おかんも自分自身、

そうした方が良いと思ったしね 、

やし、すぐに、いらん物を詰め込んだんや 」

「 あ、そう、、、

私が真剣にそんな事言うたし、気使って、

とりあえず、物を入れたんかと思っとったわ 」

すると母が言いました。

「 おかんがお嫁に来た時から、

あの部屋ってあるんや。

やけど、何の部屋なんか分からんのや、

おとんに聞いても、知らん って言うし。

なんで仏壇入れあるんや?って、

不思議やろ?

それで、たまに掃除しに行くと、

必ず仏壇入れの扉が、少し開いとるんやよ。

建付けが悪いし、所詮、素人が設計した家やしやって最初は思っとったよ、

やけど、行く度、行く度、扉開いとったら、

気味悪いやろ?

だから、それから掃除の回数も減ってって。

まぁ今回、あんたが帰って来るって言うんで

久しぶりに掃除したけどね。

あんたが、そんな事言い出すし、びっくりしたわ、

やけど、それが正解やって、おかん、思ってん。中には物が詰まっとるし扉は閉まらん、

だから、変に開く事もないし。

なんか、スッキリして、今は洗濯物を干す部屋にしとるわ」

と、母が笑いました。

私は、胸騒ぎがしました。

自分の焦げた掛け布団を思い出しました。

同じ部屋です。

「 ねぇ、

冬にストーブ焚いて、洗濯物を乾かしとらんか?」

「 あぁ、そうやね 」

「 絶対に、やめて!

乾かんのやったら、私がコインランドリーで乾かすし、絶対にそれだけはやめて!」

母は、分かったと言い、

それからは、

乾きにくい物はコインランドリーで乾かしました。

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その後、その部屋では、1度も寝てはいません。

相変わらず、洗濯物干し場です。

勿論、冬にストーブは使っていません。

しかし、私にとっては、

今でも気になる事があります。

私の掛け布団を引っ張った誰かは、

私を火事から助けようとしてくれたのか、、、

それとも、

丁度、私の足元に在った、何も入る事の無い、

空っぽの仏壇入れが、

寂しくて、私を入れようとしたのか、、、。

神様か、死神か、

どちらだったんでしょう?

Concrete
コメント怖い
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怖いよ!命あってよかったです。
今までのお話で1番怖かったよ!

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