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私が大学時代の時の話です。
夏に、私のアパートで後輩達と5人で酒盛りをしていました。
「K姉ぇさ、(私の事です)
何かさ、夏だし? 怖い話とかないの?」
「う〜ん、、、」
そう言って、私の体験談や誰かから聞いた怖い話を、2つ3つ、話しました。
すると、
「ねぇ!今から心霊スポット行かない?」
誰かが言い出しました。
良いねぇ、みんなが賛同しました。
うちの大学ならではの、心霊スポットツアーです。
今まで、色んな所に行きました。
しかし、みんな酒を飲んでいます。
そこで、絶対にヒマだろうと思われる後輩に電話をしました。
「今から心霊スポット行くんだけど、あんたも行かない?」
すぐに、運転手は見付かりました。
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合流し、どこに行くか決めてると、
1人の後輩が言い出しました。
「S町って所に、
ダムがあるんだけど、
そこに吊り橋がかかってるらしくて。
心霊スポットなんだって。」
「あー、聞いた事あるー
赤ちゃん抱いた女の人が、吊り橋のとこに、
立ってるとか、、、?」
S町とは、県内でもかなり外れにある町で、
ここから車で向かっても、1時間以上かかる所でした。
時計を見ると、11時半過ぎ。
向こうに着く頃にはピッタリの時間かもな、と思いました。
「K姉ぇ、どうする? そこにする?」
「うん、そうしよう」
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そして2台の車に、3、4で別れて出発しました。
私は3人乗りの車の、後部座席に座りました。
途中、携帯で連絡を取りながら、その道を知っているTが乗っている、もう1台の車が先導していました。
車内は、ホラーモード満載で、怖い話やら、
今から行く吊り橋の話やらで盛り上がっていました。もうそろそろ着くんじゃない?って頃になり、
車内は大興奮でしたが、
助手席に乗っていた後輩が、
いきなり
「すみません、涙が止まらないんです。」
と、どうしたら良いか分からない顔で、私を見てきました。
え?どうした?と聞くと、
「今、来る途中に、右側に大きな石碑ありましたよね、そのすぐ先にビニールシートで覆われた、小さい小屋がありましたよね?
そこに、女が立ってたんです。
その直後から、涙が止まらないんです」
Fは、涙声で言いました。
彼は沖縄の人で、2浪して私と同じ大学に入りました。
運転手も、
そんなのあったっけ、、、?
と動揺していましたが、
私は、
「帰りも同じ道を通るし、
その時に、みんなで確認しよ?」
と、何とかその場を収めたのですが、
暫くするとFが、途端に、
「早く着かないかな?
何か楽しいっすね!ねぇ、K姉ぇ?」
と、異常なまでのハイテンションに変わっていました。
私は、うん、もうすぐじゃない?と、
彼に合わせるのが精一杯でした。
( さっきまで泣いてたのに、どうしたんだ?)
すると、電話が鳴りました。
先導車の後輩からです。
「もしもーし」
「あっ、K姉ぇ?
この先に吊り橋の入口があるんだけど、
通り越して、反対の入口から吊り橋渡るから、着いて来て下さいねー」
その事を運転手に伝え、私達はダムに沿って、周りを走りました。
暫くすると先導車がハザードをつけて、
道の脇に止まりました。
あ、着いたのかな?
一旦、みんな車から降りました。
「真っ暗じゃん、怖〜い」
「今、何時なん?」
「今は、、、1時ちょい過ぎ」
この心霊スポットを知ってた後輩のTが言いました。
「今から、吊り橋を渡るんだけど、
やっちゃいけない事があるらしくて、、、」
( いかにも "心霊スポットあるある" だな )
と、私は半分面白がっていました。
Tが言うには、
1. 吊り橋の途中で車のエンジンを切らない事。
2. 決して、車の外には出てはいけない事。
「ねぇ、
それやっちゃったら、どうなんの?」
ナイス質問、と私は思い、Tの答えをみんなで待っていましたが、Tの口からは
「いや、知らない」
えー!!
「じゃあ、車止めて、外に出ても
何にも無いかも知れないって事だろ?」
みんなからは非難の嵐でしたが、
「いや、止めた方が良い。
この場所は、元々ネットで知ったんだけど、
かなり危ないらしいから。
でさ、
確かもう1つ、禁止事項があったんだよな、、、
思い出せないんだけど、、、。
だから、変な事すんなよ。」
「まぁ、とりあえず行ってみようよ」
誰かが、そう言いましたが、
私は最年長と言う事もあり、
みんなを危ない目に遭わせては、と思い、
「みんなさ、Tの言った事、守りなよ?」
と釘を刺したのですが、、、。
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今度は私たちの車が、先に走りました。
先に吊り橋を渡り、渡り終えたとこで、後続車を見ました。
( はぁっ!?)
私は、焦りました。
後続車は、吊り橋の丁度、ど真ん中で止まっており、
そこには3人が、車を降りてウロウロしていました。
多分、車内に1人残っているのは、Tでしょう。
私は叫びました。
「早く、車に乗って!!
こっちに来て!早くっ!!」
しかし虚しくも、私の声はダムの底の暗闇に、
消えていきました。
どうしよう、、、
( 後から絶対に説教だ!!)
と思いつつ、どれだけ声を張り上げても、
彼らの耳には届かないようでした。
えっ?
でも、Tは、何で3人を止めなかったの?
止められなかった、、、??
いやいや、、、
、、、、、、、、、。
ふ〜ん、なるほどね、
この心霊スポット、でっち上げだな。
そう思った瞬間に、
それなら、こっちも悪戯してやれっと、
吊り橋で彷徨いるその中の1人に、電話をかけました。
「もしもしっ? かよ姉ぇ?」
「うん、あんた達、はや、く、、、
わざと声を途切れさせました。
「えっ?もしもしっ?」
私は思いっきり低い声で、
" わ、たしに、あ、いに、、、きて、くれ、た、んで、、しょ、、
い、っしょに、いて、、、ずっ、と、、、
さ、みし、いよ、、、
さみ、、、し、い、、、
い、ま、、、むかえにいくよ "
私は笑いをこらえながら電話を切りました。
彼ら3人が、一瞬固まり、急いで車に乗り込んでいるのが見えました。急いでいて足を踏み落とすといけないな、と不意に思いました。
そこで、こちらの車のクラクションで、
" ブッブブ、ブーブー、ブブッ "
と、お笑い番組でありがちな音を、何回も鳴らしました。ちゃんと、こっちに来いよ、と。
車が急発進し、こちらに向かって来ました。
私はクラクションを鳴らし続けていました。
吊り橋を渡り終えた時、彼らはいっせいに車から飛び出し、私に言いました。
「ねぇっ!K姉ぇ、電話した!?」
私は、素知らぬ顔で、
「えっ?してないけど、何で?」
と、答えると、
「K姉ぇから電話来たんだよ、
で、出たらさ、変な声が聞こえて、、、」
そりゃあ、そうだろうよ、
と、内心ニヤつきながら聞きました。
「え?どんな声がしたん?」
「な、なんかさ、」
うん、うん、
私は、笑いをこらえるのが必死です。
「低い女の声でさ、、、
うん、うん、
『どのあしを、、、ひっぱろうか、、、』
って、半分笑ってんの 」
えっ?
「私、そんな電話してないよ!
確かに、Tの注意も守んなかったあんた達を、
怖がらせようと思って、不気味な電話したけど、
私、、、そんな事、言って無いっ!」
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とにかく、みんな気持ち悪くなり、
早く帰ろうとしていた時に、
Tが急に、
「あっ!!」と、言いました。
みんなは、
早く帰りたいのに、何?
と、少々煩わしく思いましたが、Tは言いました。
「もう1つの禁止事項、思い出した、、、」
えっ?
みんなTを見つめていました。
Tは、言いにくそうに話しました。
「吊り橋にいる人に、電話かけちゃダメだって、
電話に出てもダメだって、、、」
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みんな無言で帰りました。
帰り道、Fが言っていた石碑を見ました。
( 残念ながら、
女を見たと言う家は、見付かりませんでした)
その石碑は、ダムに沈んだその町への、
その町で生き死にした方、お墓などを供養する為の物だったみたいです。
帰り道は、Fも普通でした。
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また1時間以上かけて、ようやく帰って来て、
何人かは私のアパートに残りました。
その中には、Fもいました。
今日は怖いし泊まってくー、って女の子もいて、
残ってたお酒を飲みながら、
いつの間にやら、5、6人で雑魚寝していました。
明け方だったんでしょうか、
私は寝汗をかいていて、目を覚ましました。
部屋の中を見ると、明かりが見えます。
それは夏の早朝の、窓からの明かりとは違いました。
パソコンが開かれています。
その前には、Fが正座をして、画面に食い入る様に見ています。
「うん、、、? F、どした?」
返事がありません。
私は、近づいて行き、
「何、見てん、の、、、」
と、聞こうとして、パソコンの画面を見ました。
画面上には、
「助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて、、、
画面いっぱいに、
その文字がびっしりと書かれていました。
私は、怖くなり、
「あんたが書いたん?」
と、震える声で聞きました。
Fは、黙ったまま、微動だにせずパソコンの画面を見ています。
私は、Fの肩をゆすりながら、
「Fっ!しっかりしてっ!!」
と、Fの背中を思いっきり叩きました。
Fがこちらを見ました。
目からは涙が流れています。
( あ、そう言えば、心霊スポットに行く途中でも、
涙が止まらないって、不安がってたよな )
私は、優しく声をかけました。
「何か、悲しい事があって泣いてるの?」
Fは、黙っています。
「言いたい事があるの?」
するとFは、初めて頷きました。
「何?」
「せき、、ひの、、、よこ、、い、えに、、
わた、、しと、む、、すめ、が、、、
で、、ら、れ、、ない、、、」
そう言うとFは、パタっと寝てしまいました。
(石碑の横の家、、、
私は見えなかったけど、確かFが、ビニールシートで覆われてる様な家があったって、
そこに、女がいたって言ってた、な、、、)
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私は次の日に、TとFを連れて、そのダムへと向かいました。
石碑が見えました。
しかし、その先に家などありません。
「ねぇ、Fさ、家を見たのって、どこらへん?」
「確か、石碑を過ぎてから、1分も経たないとこだったと思います。」
私は車から降り、石碑の周辺を探しました。
10分程、ウロウロしてたでしょうか。
見つけました。
石碑のすぐ向こうに、小さな祠を。
山の斜面と言う事もあり、
また、草や木などで埋もれていたので中々見つけられなかったのですが。
そして、その祠には、ビニールシートが被せてありました。
きっと、地元の方が、雨に濡れると可哀想だから、とかけたのでしょうか?
しかし、そのビニールシートは、逆に母娘を縛り付ける物になってしまっていた様です。
私は、Fに言いました。
「私が外しても良いんだけど、
Fが、ビニールシートを外す?」
すると、Fは頷き、思いっきりビニールシートを外して、遠くに追いやりました。
そこには、小さなお地蔵さんがいました。
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「いやぁ、ヒヤヒヤしたけどさ、
とりあえず、その後、Fが大丈夫そうだから良かったよー」
2、3日後、相変わらず、
また私の家で、みんなで飲んでいました。
Fが、安心した感じで言いました。
「いや、オレも、後から話を聞いてゾッとしましたよ、覚えてないんすもん。
でも、それからは大丈夫っぽいかな」
和やかな雰囲気の中、
Tが言い出しにくそうに、口を開きました。
「でも、あの時、吊り橋にいた時の電話、、、
何だったんすかね? K姉ぇと違った訳でしょ?」
「うん、、、
まぁ、私も悪かったんだけどさー。
みんなが危ないと思ってね、つい、、、」
Tが続けました。
「あの後、オレ、あの吊り橋の事、また調べたんす。
そしたら、やっぱり禁止事項は3つありました。
オレ達は、全てを破ったんです。
Fの事もあるけれど、それは別件だと思うんですよね。
でも、全てを破ったのに、オレ達には何も起きないのっておかしくないですか?」
「じゃあさ、全てを破った人は、どうなるのかって、ネットに書いてあった?
それが知りたい。」
そう私が言うと、Tは、
「、、、その中の誰かが、
失踪と言うか、行方不明になるって、、、」
「で、誰か行方不明になったの?」
私は、心霊関係では禁句の、現実話をしました。
「誰もいなくならないよ。
私がクラクションで威嚇しといたからね 笑。
でも、何かあったら、すぐ言いなよ。
それと、、、
う〜ん、、、。
次は、、、どこ行く?」
みんなで大爆笑しました。
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その後、そのダムの、吊り橋の禁止事項に、
新たに付け加えられた事がありました。
" 誰かがクラクションを鳴らしている内に、
橋を渡りきると、呪われずにすむ "
と。
Tが書いたんですかね?
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他の心霊スポットでの体験談は、
またの機会に、お話し出来ればと思います。
作者退会会員
久しぶりの投稿です。ドキドキです。