長編12
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レンタルビデオ店

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私は、映画がかなり好きで、

DVDをよく借りに行くのだが、

近くにあるG店によく行く。安いし。

以前からホラー物が好きで、

邦画のホラーは、

1人で観るには苦手だったが、

洋画のホラーにも飽きてきて、邦画も借りるようになっていた。

しかし、今の邦画ホラーは、

『本当にあった呪いのビデオ』とか、

『監視カメラに映った恐怖映画』などと言った、DVDが多いみたいで。

たまたま、そのお店だけなのかも知れないが。

そうして金曜日の夜、今日も私は、1人寂しくレンタルビデオ店へと向かった。

( 帰りに、ビール買って、、、)

などと考えながら、

車で5分くらいの所にある、近くのG店に着いた。

先週の分のDVDを返却し、

( さて、今日は、何を借りようかな)

と、ワクワクしていた。

丁度、一昨日、仕事で腹の立つ事があったせいなのか、かなり刺激的で怖そうなDVDばかりに目が行く。

ストレス発散とでも言うのだろうか。

しかし、借りるDVDを選別し過ぎてしまい、

かなり決めかねていた。

そうして、棚の前をウロウロしていると、

いつの間にか、隣に若い女性が立っている事に気付いた。

うーん、20代前半くらい?の清楚系。

彼女も何か、DVDを探しているみたいだ。

私は、特に気にもとめず、黙々とDVDを物色していたが、

すると、その女性が私に近づいて来て、

「あの、すみません。

知りませんか?

このDVDの、、、

どこにあるか、知りませんか?」

と言ってきたので、

私は、お店の方に聞いたら良いですよ、と答え、また棚に目をやった。

「知らないんですか、、、そうですか、、」

と、聞こえた気がしたが、

その瞬間、突然の携帯の着信音に、私はかなり驚き、

「うわっ!」

と、かるく声を上げてしまった。

何だかDVDを探している時って、周りが見えてないみたいで。

( あ、、、私の携帯か、)

高校の時の友達の、A美からだ。

A美は、高校時代に仲良かった8人グループの1人。家が近くて、よく一緒に帰っていたので、特に仲が良かった。

「もーし、久しぶりやなー!元気か?」

「お久やな〜 、

K ( 私の事です)、今、何しとれん?」

「今? 1人寂しく、

DVDを借りに来とるとこや」

「 (笑) そうなんや」

私が、急なA美からの電話が気になり、

「で、どしたん?」と訊ねると、

「あのな、」

少しだけA美の声のトーンが、下がった気がした。

「少し前に、色々と写真、整理しとったら、

高校の仲間内で撮った写真が、何枚も出てきたんや」

「そうなんや?

懐かしすぃー。

みんな結婚したりして、全然、集まってないもんな。

みんな元気なん?

Tちゃん、2人目産まれたって聞いたけど、

お祝いもあげてないわー

もう独身貴族は、アナタとワ・タ・シ ♡」

など、ふざけてましたが、

「あぁ、そうやな、、、」

どことなくA美の様子がおかしいので、

店内と言う事もあり、一旦、店の外に出た。

「何かあったん?」

「あのな、、、明日って時間あるか?」

「どしたん、急に」

「いや、とりあえず、家に来て欲しいんや」

何を聞いても、今は言えないと言うし。

じゃあ、明日の午後2時に行く、と言う事になり、電話を切った。

( あー、

何か映画とか観る気、無くなったなー )

などと思いながらも一応、店内に戻る。

どれもこれも、つまらなさそう。

何気なく周りを見ると、さっきの女性がまだDVDを探しているのが目に入った。

( 明日もあるし、今日は借りるのよそうかな )

と、思いながら帰ろうとした時に、

「あ、あった!」

と声が聞こえ、見ると、あの女性がようやくお目当てのDVDを見つけたようだった。

私は、どんなDVDを必死に探してたいたのかと興味が湧き、彼女が立ち去った後、そのDVDを探してみた。

1本だけ、パッケージから抜き取られているDVDのタイトルには、

『絶対に見てはいけない恐怖映像 Part3』

と書かれていた。

私は、市松人形に血飛沫の飛んだパッケージを見て、

( あぁ、ありがちやなー 笑。

こんなの探しとったん?

どうせ、この後に彼氏とでも観るんやろ )

と、パッケージを元に戻した。

すると、右隣に同じDVDがもう1本ある事に気が付き、何だか私も観てみたくなり、そのDVDを借りる事にした。

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家に帰り、ビールを飲みながら、

DVDを観始めたのだが、

まぁ、他のDVDと同様、心霊映像や心霊写真など、嘘くさい内容のてんこ盛りだった。

( 何であの女性は、

こんなDVDを必死に探してたんやろ?)

と思いながら、観ていると、

急にDVDが停止した。

( このDVD、古いんじゃないんかい?)と、

再生ボタンを押すと、急にDVDは巻戻り、

そして、先程観た映像が、また流れ始めた。

それは、

若い男女5人が、ビデオカメラを持ち、

からかい半分で廃病院の心霊スポットへ行くと言う内容のもの。

奥に進むと、その内の誰かが、

変な声が聞こえると言い始めて、1人逃走。

更に奥へ進むと、『手術室』がある。

中に入り、ビデオカメラを回していると、

女性らしき霊がビデオカメラに映り、

( 心霊映像に写る女性の霊は、

形相はさて置き、

黒髪に白い服が多いような、

清楚系が多いような、、、

そんな気が、

するような、しないような 、、、)

その女が追いかけて来たと言って、

皆が逃げ出し、叫び声の嵐。

途中でビデオカメラを持っていた男は、

ビデオカメラを投げ出す。

最後に逃げていた女性が転び、投げ捨てられたカメラに、地面越しに顔が映る。

そして、女性が「助けて!」と叫んだかと思うと、

奥の暗闇から、女が四つん這いで追いかけて来て、

白く伸びてきた腕に、右足首を掴まれ、

暗闇に引きずり込まれて行ってしまう。

ざっくり言うとこんな内容なんだけど、

よくありがちなパターン。

( へぇー、

じゃあ、誰がこのビデオカメラを回収したんやろうか?

後で、取りに戻ってきたんか? 笑。

いやいや、性格悪すぎやわ。私、、、)

そして、私はDVDを観終わると、

ビールを一気に飲み干して、ベッドに向かった。

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次の日、あまり乗り気では無かったが、

とりあえず家を出た。

「何かお土産、買ってくかー」

近くのケーキ屋で、苺のロールケーキを買い、A美の家に向かう。

「ピンポーン」

暫くしてドアが開き、久しぶりのA美の顔がドア越しに覗いた。

「A美、久しぶりー!」

「来てくれたんや!」

「お土産もな!!」

そう言って、家にお邪魔した。

途中、A美の母親に会い、

「あらー、もしかしてKちゃん?

久しぶりやわ〜!!

ゆっくりして行ってね。

後から何か、、、

「おかん、うるさい!」

A美は、ご両親とあまり上手く行っていないと聞いていたので、私も挨拶も早々に、A美の部屋に急いだ。

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2人は、久しぶりに会ったので、

暫くは、昔の話で盛り上がっていたが、

中々話を切り出さないA美に、

何だか私は、段々とイライラしてきて、

「今日、私を呼んだのは何でや?」

と単刀直入に聞いてみた。

場の雰囲気が一気に変わり、

A美は黙ったままだったのだが、暫くして、

何枚かの写真を、私の前に置いた。

「実は、、、

他のは大丈夫なんやけど、

やけど、この写真、、、

全部、私の右足だけ、写っとらんのや。

高校の時の写真も気になって、

見てみたら、右足が消えとってな、、、

高校ん時は確かに写っとったのに。」

私はすぐに、

前に置かれた何十枚もの写真を見てみた。

どれを見ても、どれを見ても、

確かに、A美の右足が、

スカートの下から、

また、ズボンを履いている時は、腰の付け根から膝の辺りまで薄くなっていて、右足首なんて完全に写っていない。

沈黙が続き、やっとA美が口を開いた。

「写真に写らなかったとこって、

そのうち失うとかって、聞いたわ、、、。

何でか分からんけど、

急にな、久しぶりに写真を整理しようって、

思ってん。

やけど、こんな写真ばっかりで気持ち悪くなって、、、

Kって、昔からこう言うの得意やろ?」

( 得意って言うか、、、)

「あんた、霊感あるやん!

私のおばあちゃんが死ぬ時も、みんなと遊んどったのに、あんたは、早く帰った方が良いって、私に言うたやん?

頼る人、あんたしかおらんで、、、」

( 申し訳無いが、こりゃあ、困った。

確かに、

身体の一部分が写真に写らなかった時って、

『 先祖の霊の

" その部分に気を付けなさい " と言う忠告 』って、聞いた事あるけど、

こんな、何枚も何枚も、右足写って無いのって、どうすりゃ良いんや )

私は暫く写真を見ていて、ある事に気付いた。

「ねぇ、A美。

この写真撮る前に、どっか行った?」

「えっ、、、」

「いや、高校ん時は別にして、

この写真見とると、A美の髪型が全部同じやし。同じ時期に撮ったんかなぁって。

でも、この後の写真って、、、」

するとA美は、更に、

黙って写真を出してきた。

A美の右足は、やはり写っていないが、

本来なら右足が在る辺りに、

その周りには、赤っぽい変なモヤの様なものが、纒わり付いている。

「何回、撮ってもそう言うのが写るし、

今は上半身だけの写真しか、撮らんのや、、、」

( 赤い色? これは、、、)

私はすぐに、その何十枚もの写真と一緒に、

A美をお寺に連れて行かなければ、と思った。

私は、急いでおかんに電話し、

「 ここら辺で1番、大きいお寺どこや!?」

「はぁ?何や急に?」

「A美がヤバいんやって!

とにかく、早く教えてっ!!」

すぐにそのお寺へ、A美を連れて行った。

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おかんから連絡が行っていたらしく、

私達はすぐに通されたが、

A美は、違う場所に連れて行かれた。

そして私は、そのお寺のご住職であろうと思われる方の前に通された。

その部屋は、全く何も無い部屋だった。

ただ、ただ、

ご住職と、私のみが存在していた。

「お話は、お母様の方から聞きました。

何でも、お友達が大変らしい、と。」

私は、必死に事の成り行きを説明した。

ご住職は黙って私の話を聞き、

暫く後に、口を開き、

「お友達は、、、

何か特別な事をなさったのかな?」

私が黙っていると、

「あなたは、優しい。

そして、そのようなあなたの事を守っておられる方は、とても強い。

しかし、、、

あなたは、最近、誰かに頼られた事はありませんでしたか?

その者の力は、執念深く、

そして、とてつもなく強い。」

私は、ふと、レンタルビデオ店の事を思い出した。

「あの、頼られたって言えば、、、

先日、レンタルビデオ店で、若い女性に

DVDの場所を聞かれた、くらいですかね、

店員に聞いてって言ったんですけど、、、」

するとご住職は、

何かを考えているかの様だったが、

『 今晩、A美はうちの寺で預かる』

『 写真はまだ、処分は出来ない 』

『 明日、朝の6時にまた来て欲しい 』

と、それだけを私に伝えると、

「もう帰りなさい、」と、

とても優しい声で仰った。

私は、分かりました、と家路についた。

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家に着き、

心配して待っててくれたおかんに、

「ありがと、助かったわ。

詳しい事は後で話すし。とにかく、ありがとね」

そう言って、自分の部屋に行き、ドーンっと、

ベッドに飛び込んだ。

「何なん!何なんやー!

訳分からん、私を巻き込むなやーっ!」

、、、、、、。

( やっぱりダメや、A美を助けんと。)

その時、

借りてきたDVDが目に入った。

何故か、そのDVDを観始めていた。

前回、急に巻き戻しになった箇所の映像が、流れ出した。

ボーッと観ている。

しかし、私は急にリモコンを手に取り、巻き戻した。

「ここはー、きゃははは、

S県にある、廃病院ですー!」

( S県、、、?)

「ここには、女性の幽霊が出ると言う噂でして、、、

果たして、そのカワイコちゃんには会えるので、しょーかー!

可愛かったら付き合いてぇー!!」

「やめなよ、呪われるよー、」

私は、最後に女性が足を引っ張られて行く所まで、何度も何度も巻き戻しながら、観た。

、、、、、、、、、、、

A美の行った大学は、S県にある。

所々に、A美に似た声が入っている。

名前の音声にだけ、モザイクがかかっているが、稀に「あ」とだけ、名前の頭文字が聞こえる。

A美の名前の最初の文字は " あ " 。

あと、最後の場面で、

暗闇に引きづり込まれていく女性が、

必死に掴んでいた物があったのだが、それは誰かの右足だった。

その右足は逃げようと、その仲間の女性の手を振り払い、走り去って行ったのだが、

その右足の内側の、脹ら脛の所にアザの様なものが見える。

A美には生まれつき、右足の脹ら脛の内側ににアザがある。赤黒い4、5センチ程の。

本人は、それをすごく気にしていたが、

大学時代の彼氏に 『A美の証し』と言われて、気にしなくなったとか。

その右足には、確かに赤黒いアザがあった。

(えっ?

これってA美の足、、、か?)

私には衝撃的だったが、

何せ、ビデオカメラの映像だし、そう言う風に見えたのかも、と自分に言い聞かせた。

だが、やはり気になる。

(明日、A美に会えたら聞いてみよう)

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翌朝6時に、私はお寺にいた。

ご住職に伝わるかは分からないが、あのDVDを持って来た。

「おはようございます。

あの、A美は、、、」

ご住職は、

「おはようございます。

よく来てくれましたね。」

とだけ仰った。

「あの、ご住職に是非、観て頂きたいものがあるんですが、よろしいでしょうか?」

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その後、ご住職に説明をしながら、

あのDVDを見て頂いた。

ご住職は、黙って最後まで観て下さった。

「 、、、と言う、私の見解です。

本人に聞いてみないと分からない事だとは

思いましたが、やはり、ご住職に観て頂きたいと思ったんです。

それで、、、

以前に、ご住職にお話ししたと思いますが、

レンタルビデオ店で、若い女性が探してたDVDって言うのが、実は、このDVDなんです。

何か、関係があるんじゃないんですか?」

ご住職は、目を瞑り黙っておられましたが、

暫くして、私をじっと見つめました。

「あなたは、、、

要は、架け橋の様な役目になってしまわれたようです。

2人から助けを求められてしまった。

" 過ちを犯した方 " と " 侵された方 " から。

" 恨む者 " と "恨まれる者 " から。

『恨む』『羨む』、、、

両方、意味は全く違いますが、若くて楽しそうな彼女達に、羨ましい気持ちがあったのやも

知れません。

そうして『悔しい』と言う気持ち。

全ては、元々は人間から生まれ出る感情です。

以前、私があなたに、

『最近、誰かに頼られた事は無いですか』

とお聞きした時、

あなたはまだ、お分かりにはなっていなかったのです。

" 既に頼られてしまっていた "

そして、

" 頼られてしまった "

この2つをです。

無論、私でさえ難しい事です。

しかし、一見、関係の無いものに思えても、

それとは関係がある。

この世の中には1つ足りとも、

関係の無いものなど、無いのです。

あなたは、、、

その者の、川の流れに、、、

その川に浮かぶ船の如く流され、

いつの間にか辿り着いてしまった。

それは、

あのビデオを、撮影された時からです。

あなたは覚えていなくとも、

その者は、あなたを覚えています。

私の思った通りに、その者は執念深く、

とても強く、あなたのご友人を苦しめるやも知れません。

いいですか、

あなたには、その者よりも力があります。

あなたに手出しは出来ない。

しかし、今後一切、

ご友人に情けをかけてはなりません。

ご友人は、私達でお助けします。

そして、この事は、、、

最低5年は、口には出してはなりません。

このDVDは、私の方で対処します。

今回の事で、色々と、ご心労されたでしょう。

あなたは、何も考えずに、

そして、

早くお帰りなさい。」

私は自分に起こっている事が、

まるでテレビ番組の様な感じで、全くリアルさが感じられなかった。

しかし、

最後にどうしても聞きたい事があった。

「あの、A美を苦しめているのは、

あの廃病院の霊ですか?

それとも、手を振り払らわれて、

引きづり込まれて行った、A美の仲間ですか?」

ご住職は、首を振った。

私はこれ以上、何も言えなくなり、

ご住職に、

お礼と、そして、A美をよろしくお願い致します、とだけ言い、お寺を後にした。

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その後、

私からは、A美に連絡はとっていない。

しかし、嫌な連絡は来てないので大丈夫なんだろう、と思いたい。

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もう5年以上経ち、

このお話を書いていますが、

書いている途中に、

蛍光灯がチカチカしだして、ついたり消えたり。

最後には、電気は消えてしまいました。

( 本当の話です )

たまたまでしょうが、1人で怖がってました。

あと、、、、、、、

今、気になっている事があります。

私の借りたDVDは、お寺に預けましたが、

あの時の女性が借りて行った、もう1本のDVDは、

今も存在しているのでしょうか。

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