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私は、映画がかなり好きで、
DVDをよく借りに行くのだが、
近くにあるG店によく行く。安いし。
以前からホラー物が好きで、
邦画のホラーは、
1人で観るには苦手だったが、
洋画のホラーにも飽きてきて、邦画も借りるようになっていた。
しかし、今の邦画ホラーは、
『本当にあった呪いのビデオ』とか、
『監視カメラに映った恐怖映画』などと言った、DVDが多いみたいで。
たまたま、そのお店だけなのかも知れないが。
そうして金曜日の夜、今日も私は、1人寂しくレンタルビデオ店へと向かった。
( 帰りに、ビール買って、、、)
などと考えながら、
車で5分くらいの所にある、近くのG店に着いた。
先週の分のDVDを返却し、
( さて、今日は、何を借りようかな)
と、ワクワクしていた。
丁度、一昨日、仕事で腹の立つ事があったせいなのか、かなり刺激的で怖そうなDVDばかりに目が行く。
ストレス発散とでも言うのだろうか。
しかし、借りるDVDを選別し過ぎてしまい、
かなり決めかねていた。
そうして、棚の前をウロウロしていると、
いつの間にか、隣に若い女性が立っている事に気付いた。
うーん、20代前半くらい?の清楚系。
彼女も何か、DVDを探しているみたいだ。
私は、特に気にもとめず、黙々とDVDを物色していたが、
すると、その女性が私に近づいて来て、
「あの、すみません。
知りませんか?
このDVDの、、、
どこにあるか、知りませんか?」
と言ってきたので、
私は、お店の方に聞いたら良いですよ、と答え、また棚に目をやった。
「知らないんですか、、、そうですか、、」
と、聞こえた気がしたが、
その瞬間、突然の携帯の着信音に、私はかなり驚き、
「うわっ!」
と、かるく声を上げてしまった。
何だかDVDを探している時って、周りが見えてないみたいで。
( あ、、、私の携帯か、)
高校の時の友達の、A美からだ。
A美は、高校時代に仲良かった8人グループの1人。家が近くて、よく一緒に帰っていたので、特に仲が良かった。
「もーし、久しぶりやなー!元気か?」
「お久やな〜 、
K ( 私の事です)、今、何しとれん?」
「今? 1人寂しく、
DVDを借りに来とるとこや」
「 (笑) そうなんや」
私が、急なA美からの電話が気になり、
「で、どしたん?」と訊ねると、
「あのな、」
少しだけA美の声のトーンが、下がった気がした。
「少し前に、色々と写真、整理しとったら、
高校の仲間内で撮った写真が、何枚も出てきたんや」
「そうなんや?
懐かしすぃー。
みんな結婚したりして、全然、集まってないもんな。
みんな元気なん?
Tちゃん、2人目産まれたって聞いたけど、
お祝いもあげてないわー
もう独身貴族は、アナタとワ・タ・シ ♡」
など、ふざけてましたが、
「あぁ、そうやな、、、」
どことなくA美の様子がおかしいので、
店内と言う事もあり、一旦、店の外に出た。
「何かあったん?」
「あのな、、、明日って時間あるか?」
「どしたん、急に」
「いや、とりあえず、家に来て欲しいんや」
何を聞いても、今は言えないと言うし。
じゃあ、明日の午後2時に行く、と言う事になり、電話を切った。
( あー、
何か映画とか観る気、無くなったなー )
などと思いながらも一応、店内に戻る。
どれもこれも、つまらなさそう。
何気なく周りを見ると、さっきの女性がまだDVDを探しているのが目に入った。
( 明日もあるし、今日は借りるのよそうかな )
と、思いながら帰ろうとした時に、
「あ、あった!」
と声が聞こえ、見ると、あの女性がようやくお目当てのDVDを見つけたようだった。
私は、どんなDVDを必死に探してたいたのかと興味が湧き、彼女が立ち去った後、そのDVDを探してみた。
1本だけ、パッケージから抜き取られているDVDのタイトルには、
『絶対に見てはいけない恐怖映像 Part3』
と書かれていた。
私は、市松人形に血飛沫の飛んだパッケージを見て、
( あぁ、ありがちやなー 笑。
こんなの探しとったん?
どうせ、この後に彼氏とでも観るんやろ )
と、パッケージを元に戻した。
すると、右隣に同じDVDがもう1本ある事に気が付き、何だか私も観てみたくなり、そのDVDを借りる事にした。
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家に帰り、ビールを飲みながら、
DVDを観始めたのだが、
まぁ、他のDVDと同様、心霊映像や心霊写真など、嘘くさい内容のてんこ盛りだった。
( 何であの女性は、
こんなDVDを必死に探してたんやろ?)
と思いながら、観ていると、
急にDVDが停止した。
( このDVD、古いんじゃないんかい?)と、
再生ボタンを押すと、急にDVDは巻戻り、
そして、先程観た映像が、また流れ始めた。
それは、
若い男女5人が、ビデオカメラを持ち、
からかい半分で廃病院の心霊スポットへ行くと言う内容のもの。
奥に進むと、その内の誰かが、
変な声が聞こえると言い始めて、1人逃走。
更に奥へ進むと、『手術室』がある。
中に入り、ビデオカメラを回していると、
女性らしき霊がビデオカメラに映り、
( 心霊映像に写る女性の霊は、
形相はさて置き、
黒髪に白い服が多いような、
清楚系が多いような、、、
そんな気が、
するような、しないような 、、、)
その女が追いかけて来たと言って、
皆が逃げ出し、叫び声の嵐。
途中でビデオカメラを持っていた男は、
ビデオカメラを投げ出す。
最後に逃げていた女性が転び、投げ捨てられたカメラに、地面越しに顔が映る。
そして、女性が「助けて!」と叫んだかと思うと、
奥の暗闇から、女が四つん這いで追いかけて来て、
白く伸びてきた腕に、右足首を掴まれ、
暗闇に引きずり込まれて行ってしまう。
ざっくり言うとこんな内容なんだけど、
よくありがちなパターン。
( へぇー、
じゃあ、誰がこのビデオカメラを回収したんやろうか?
後で、取りに戻ってきたんか? 笑。
いやいや、性格悪すぎやわ。私、、、)
そして、私はDVDを観終わると、
ビールを一気に飲み干して、ベッドに向かった。
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次の日、あまり乗り気では無かったが、
とりあえず家を出た。
「何かお土産、買ってくかー」
近くのケーキ屋で、苺のロールケーキを買い、A美の家に向かう。
「ピンポーン」
暫くしてドアが開き、久しぶりのA美の顔がドア越しに覗いた。
「A美、久しぶりー!」
「来てくれたんや!」
「お土産もな!!」
そう言って、家にお邪魔した。
途中、A美の母親に会い、
「あらー、もしかしてKちゃん?
久しぶりやわ〜!!
ゆっくりして行ってね。
後から何か、、、
「おかん、うるさい!」
A美は、ご両親とあまり上手く行っていないと聞いていたので、私も挨拶も早々に、A美の部屋に急いだ。
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2人は、久しぶりに会ったので、
暫くは、昔の話で盛り上がっていたが、
中々話を切り出さないA美に、
何だか私は、段々とイライラしてきて、
「今日、私を呼んだのは何でや?」
と単刀直入に聞いてみた。
場の雰囲気が一気に変わり、
A美は黙ったままだったのだが、暫くして、
何枚かの写真を、私の前に置いた。
「実は、、、
他のは大丈夫なんやけど、
やけど、この写真、、、
全部、私の右足だけ、写っとらんのや。
高校の時の写真も気になって、
見てみたら、右足が消えとってな、、、
高校ん時は確かに写っとったのに。」
私はすぐに、
前に置かれた何十枚もの写真を見てみた。
どれを見ても、どれを見ても、
確かに、A美の右足が、
スカートの下から、
また、ズボンを履いている時は、腰の付け根から膝の辺りまで薄くなっていて、右足首なんて完全に写っていない。
沈黙が続き、やっとA美が口を開いた。
「写真に写らなかったとこって、
そのうち失うとかって、聞いたわ、、、。
何でか分からんけど、
急にな、久しぶりに写真を整理しようって、
思ってん。
やけど、こんな写真ばっかりで気持ち悪くなって、、、
Kって、昔からこう言うの得意やろ?」
( 得意って言うか、、、)
「あんた、霊感あるやん!
私のおばあちゃんが死ぬ時も、みんなと遊んどったのに、あんたは、早く帰った方が良いって、私に言うたやん?
頼る人、あんたしかおらんで、、、」
( 申し訳無いが、こりゃあ、困った。
確かに、
身体の一部分が写真に写らなかった時って、
『 先祖の霊の
" その部分に気を付けなさい " と言う忠告 』って、聞いた事あるけど、
こんな、何枚も何枚も、右足写って無いのって、どうすりゃ良いんや )
私は暫く写真を見ていて、ある事に気付いた。
「ねぇ、A美。
この写真撮る前に、どっか行った?」
「えっ、、、」
「いや、高校ん時は別にして、
この写真見とると、A美の髪型が全部同じやし。同じ時期に撮ったんかなぁって。
でも、この後の写真って、、、」
するとA美は、更に、
黙って写真を出してきた。
A美の右足は、やはり写っていないが、
本来なら右足が在る辺りに、
その周りには、赤っぽい変なモヤの様なものが、纒わり付いている。
「何回、撮ってもそう言うのが写るし、
今は上半身だけの写真しか、撮らんのや、、、」
( 赤い色? これは、、、)
私はすぐに、その何十枚もの写真と一緒に、
A美をお寺に連れて行かなければ、と思った。
私は、急いでおかんに電話し、
「 ここら辺で1番、大きいお寺どこや!?」
「はぁ?何や急に?」
「A美がヤバいんやって!
とにかく、早く教えてっ!!」
すぐにそのお寺へ、A美を連れて行った。
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おかんから連絡が行っていたらしく、
私達はすぐに通されたが、
A美は、違う場所に連れて行かれた。
そして私は、そのお寺のご住職であろうと思われる方の前に通された。
その部屋は、全く何も無い部屋だった。
ただ、ただ、
ご住職と、私のみが存在していた。
「お話は、お母様の方から聞きました。
何でも、お友達が大変らしい、と。」
私は、必死に事の成り行きを説明した。
ご住職は黙って私の話を聞き、
暫く後に、口を開き、
「お友達は、、、
何か特別な事をなさったのかな?」
私が黙っていると、
「あなたは、優しい。
そして、そのようなあなたの事を守っておられる方は、とても強い。
しかし、、、
あなたは、最近、誰かに頼られた事はありませんでしたか?
その者の力は、執念深く、
そして、とてつもなく強い。」
私は、ふと、レンタルビデオ店の事を思い出した。
「あの、頼られたって言えば、、、
先日、レンタルビデオ店で、若い女性に
DVDの場所を聞かれた、くらいですかね、
店員に聞いてって言ったんですけど、、、」
するとご住職は、
何かを考えているかの様だったが、
『 今晩、A美はうちの寺で預かる』
『 写真はまだ、処分は出来ない 』
『 明日、朝の6時にまた来て欲しい 』
と、それだけを私に伝えると、
「もう帰りなさい、」と、
とても優しい声で仰った。
私は、分かりました、と家路についた。
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家に着き、
心配して待っててくれたおかんに、
「ありがと、助かったわ。
詳しい事は後で話すし。とにかく、ありがとね」
そう言って、自分の部屋に行き、ドーンっと、
ベッドに飛び込んだ。
「何なん!何なんやー!
訳分からん、私を巻き込むなやーっ!」
、、、、、、。
( やっぱりダメや、A美を助けんと。)
その時、
借りてきたDVDが目に入った。
何故か、そのDVDを観始めていた。
前回、急に巻き戻しになった箇所の映像が、流れ出した。
ボーッと観ている。
しかし、私は急にリモコンを手に取り、巻き戻した。
「ここはー、きゃははは、
S県にある、廃病院ですー!」
( S県、、、?)
「ここには、女性の幽霊が出ると言う噂でして、、、
果たして、そのカワイコちゃんには会えるので、しょーかー!
可愛かったら付き合いてぇー!!」
「やめなよ、呪われるよー、」
私は、最後に女性が足を引っ張られて行く所まで、何度も何度も巻き戻しながら、観た。
、、、、、、、、、、、
A美の行った大学は、S県にある。
所々に、A美に似た声が入っている。
名前の音声にだけ、モザイクがかかっているが、稀に「あ」とだけ、名前の頭文字が聞こえる。
A美の名前の最初の文字は " あ " 。
あと、最後の場面で、
暗闇に引きづり込まれていく女性が、
必死に掴んでいた物があったのだが、それは誰かの右足だった。
その右足は逃げようと、その仲間の女性の手を振り払い、走り去って行ったのだが、
その右足の内側の、脹ら脛の所にアザの様なものが見える。
A美には生まれつき、右足の脹ら脛の内側ににアザがある。赤黒い4、5センチ程の。
本人は、それをすごく気にしていたが、
大学時代の彼氏に 『A美の証し』と言われて、気にしなくなったとか。
その右足には、確かに赤黒いアザがあった。
(えっ?
これってA美の足、、、か?)
私には衝撃的だったが、
何せ、ビデオカメラの映像だし、そう言う風に見えたのかも、と自分に言い聞かせた。
だが、やはり気になる。
(明日、A美に会えたら聞いてみよう)
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翌朝6時に、私はお寺にいた。
ご住職に伝わるかは分からないが、あのDVDを持って来た。
「おはようございます。
あの、A美は、、、」
ご住職は、
「おはようございます。
よく来てくれましたね。」
とだけ仰った。
「あの、ご住職に是非、観て頂きたいものがあるんですが、よろしいでしょうか?」
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その後、ご住職に説明をしながら、
あのDVDを見て頂いた。
ご住職は、黙って最後まで観て下さった。
「 、、、と言う、私の見解です。
本人に聞いてみないと分からない事だとは
思いましたが、やはり、ご住職に観て頂きたいと思ったんです。
それで、、、
以前に、ご住職にお話ししたと思いますが、
レンタルビデオ店で、若い女性が探してたDVDって言うのが、実は、このDVDなんです。
何か、関係があるんじゃないんですか?」
ご住職は、目を瞑り黙っておられましたが、
暫くして、私をじっと見つめました。
「あなたは、、、
要は、架け橋の様な役目になってしまわれたようです。
2人から助けを求められてしまった。
" 過ちを犯した方 " と " 侵された方 " から。
" 恨む者 " と "恨まれる者 " から。
『恨む』『羨む』、、、
両方、意味は全く違いますが、若くて楽しそうな彼女達に、羨ましい気持ちがあったのやも
知れません。
そうして『悔しい』と言う気持ち。
全ては、元々は人間から生まれ出る感情です。
以前、私があなたに、
『最近、誰かに頼られた事は無いですか』
とお聞きした時、
あなたはまだ、お分かりにはなっていなかったのです。
" 既に頼られてしまっていた "
そして、
" 頼られてしまった "
この2つをです。
無論、私でさえ難しい事です。
しかし、一見、関係の無いものに思えても、
それとは関係がある。
この世の中には1つ足りとも、
関係の無いものなど、無いのです。
あなたは、、、
その者の、川の流れに、、、
その川に浮かぶ船の如く流され、
いつの間にか辿り着いてしまった。
それは、
あのビデオを、撮影された時からです。
あなたは覚えていなくとも、
その者は、あなたを覚えています。
私の思った通りに、その者は執念深く、
とても強く、あなたのご友人を苦しめるやも知れません。
いいですか、
あなたには、その者よりも力があります。
あなたに手出しは出来ない。
しかし、今後一切、
ご友人に情けをかけてはなりません。
ご友人は、私達でお助けします。
そして、この事は、、、
最低5年は、口には出してはなりません。
このDVDは、私の方で対処します。
今回の事で、色々と、ご心労されたでしょう。
あなたは、何も考えずに、
そして、
早くお帰りなさい。」
私は自分に起こっている事が、
まるでテレビ番組の様な感じで、全くリアルさが感じられなかった。
しかし、
最後にどうしても聞きたい事があった。
「あの、A美を苦しめているのは、
あの廃病院の霊ですか?
それとも、手を振り払らわれて、
引きづり込まれて行った、A美の仲間ですか?」
ご住職は、首を振った。
私はこれ以上、何も言えなくなり、
ご住職に、
お礼と、そして、A美をよろしくお願い致します、とだけ言い、お寺を後にした。
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その後、
私からは、A美に連絡はとっていない。
しかし、嫌な連絡は来てないので大丈夫なんだろう、と思いたい。
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もう5年以上経ち、
このお話を書いていますが、
書いている途中に、
蛍光灯がチカチカしだして、ついたり消えたり。
最後には、電気は消えてしまいました。
( 本当の話です )
たまたまでしょうが、1人で怖がってました。
あと、、、、、、、
今、気になっている事があります。
私の借りたDVDは、お寺に預けましたが、
あの時の女性が借りて行った、もう1本のDVDは、
今も存在しているのでしょうか。
作者退会会員
長編です。
もし良ければ、読んでみて下さい。