長編10
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合わせ鏡

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これは小学校の時に、

私の学校へ転校してきた女の子の話です。

お父さんが転勤族で、

新しい学校で、やっと友達が出来て、

仲良く遊べる様になっても、

暫くするとまた、転校しなければならなくなってしまう、そんな家庭の子でした。

だからなのでしょうか、

その女の子は、周囲の注目を集めるのが得意でした。

彼女は、ヒトミちゃんと言って、

とても可愛い子でした。

都会から引越して来て、

肌は透ける様に白くて、少し茶色い長い髪は、いつもカールしていて、

それをフワフワのリボンで、いつも結んでいました。

洋服も、ピンクや白の、

レースやフリルの着いた洋服で、

(今で言う、甘ロリでしょう)

話し方も、こんな田舎には絶対にいないタイプの、

お人形さんみたいな女の子でした。

おまけに、話も面白いから、

周りの女の子達は、必然的にヒトミちゃんと仲良くなっていきました。

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ある日の放課後、ヒトミちゃんと、

クラスの女の子何人かが、教室で楽しそうに話していました。私が忘れ物を取りに、教室に戻った時です。

「あ、Kちゃん ( 私の事 ) 、

Kちゃんも、一緒にお話ししない?」

ヒトミちゃんが、軽い笑顔で言いました。

さながら女王様の様に、クラスの女の子達を侍らかせて。

私は、何だかイヤだったので、

「忘れ物、取りに来ただけやし、急いどるから。」

と言って、教室を後にしました。

教室からは笑い声が聞こえます。

(何なん!?)

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次の日、学校へ行くと、ヒトミちゃんと

女の子達が、何やらヒソヒソと話していましたが、気にせず自分の席に座りました。

すると、クラスの女の子が来て、

「ねぇ、Kちゃん、

今日の放課後ってヒマか?」

「あー、別に用事は無いけど、どしたん?」

「ヒトミちゃんがな、

面白い話をしてくれるらしいんや。

そんで、Kちゃんも誘おうって、ヒトミちゃんが言うとるんやけど。」

(えー、行きたくないわー)

そう言おうとした時、

タイミングが悪い事に、ちょうどチャイムが鳴ってしまい、その女の子は、

じゃあ、また放課後にな、と自分の席に戻りました。

私は1日中、ずっと憂鬱でした。

(あー、どうすっかなー。

急に用事が出来たとか、言おうかなぁ。

でも、そんなん絶対に、

変やと思われるやろうしなー)

そうして、

ついに放課後になりました。

私は帰る訳にもいかず、

どうして良いのかも分からず、

何度も、机の引き出しを見てみたり、ランドセルを開けてみたり、ぎこちなくしていました。

すると、後ろから、

「Kちゃん、一緒にお話ししよ?」

と、可愛らしい声が聞こえました。

何故だか私は、一瞬ゾクッとしましたが、

すぐにヒトミちゃんだと分かり、

振り返って、

「何の話するん?」

と聞きました。

「えー、面白いお話しだよー」

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ヒトミちゃんとクラスの女の子3人、

そして、私。

ヒトミちゃんの席の周りに集まりました。

「ヒトミちゃん、

面白い話って、どんな話なん?」

誰かが、堰を切らしたように聞きました。

うふふ、、、

と、ヒトミちゃんは嬉しそうに笑うと、

「ねぇ、みんなは、

『合わせ鏡』って知ってる?」

「えっ、鏡と鏡を合わせて見るやつやろ?」

「そう。

それがね、、、」

ヒトミちゃんは、

勿体ぶるかの様に、中々、話をしません。

「ねぇ、気になるし早く教えてや」

「えー、でも、、、

ちょっとだけ、怖い話だけど良いの?」

「怖い話なん?」

みんな、少し躊躇しましたが、気になるものは気になるので、

聞きたい、と、誰かが言いました。

「じゃあ、教えてあげる。

あのね、夜中の12時ちょうどに、合わせ鏡をするの。そして、何個も並んだ自分の顔の、13番目の顔がね、自分の死ぬ時の顔なんだって。

良かったら、

みんなも見てみたら、どうかしら?」

(アホくせー、

そんなのが本当にあるんやったら、

この世の中、どうするよ )

「Kちゃんも、してみたら?

あ・わ・せ・か・が・み 。」

私の心の中を読んだかのように、

そうしてクスクスっと、ヒトミちゃんは笑って言いました。

「ねぇ、じゃあ、

ヒトミちゃんはやった事あるんか?

その、『合わせ鏡』って言うやつ。」

私は、ムカつきにムカついて聞きました。

「私?

私はね、やった事は無いの。

でも、、、

前の学校で、1番仲良かったお友達が、

この話を聞いて、やってみたんだって!」

「そんで、その子、

自分の死ぬ顔、見れたん?」

私は、少しキツい口調で言ってしまいました。

「えー、Kちゃん、怒ってる?

こわ〜い。」

私は呆れて、

何も言う気も起きませんでした。

「で、そのお友達、、、本当に見たん?」

誰かが、気になって聞いてしまいました。

ヒトミちゃんは、

少し考えてから、少し笑うと言いました。

「見たよ?」

「それで、どうなったん?」

「言えなーい」

えー、教えてよーと、

女の子達は騒いでいましたが、

「やってみたら分かるよ?」

と、天使の様な笑顔で言い、

「もし、合わせ鏡したら、教えてね!

じゃあ、私、バレエのお稽古の時間だから。

また、明日ね!」

そう言って、ヒトミちゃんは帰って行きました。

その後、教室に残った女の子達は、

どうする?やってみる?

でも、怖くないか?

などと、キャーキャー騒いでいましたが、

私は1人で、腸煮えくり返っていました。

ヒトミちゃんの、人をバカにした様な、あの態度に。

( 今思えば、当時の私は、

子供ながらにも子供過ぎると言うか、、、。

そんなにムキになって、

相手にしなきゃ良かったんですよね )

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その日の夜、

私は『合わせ鏡』をしました。

少し、いや、かなり怖かったですが、

それよりも、

ヒトミちゃんの態度が腹立たしかった方が、

勝ってしまったみたいで。

洗面所に行き、鏡を合わせて、

1.2.3.4、、、と数えて、

夜の12時ちょうどに、

13番目に映っている、自分の顔を見ました。

、、、、、、。

、、、普通の顔、、、。

いつもの、自分の顔、、、。

( やっぱり、

怖がらせる為のウソだったんやな。

明日、言うてやる。)

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次の日、学校へ行くと、

私はヒトミちゃんに話しかけました。

「ねぇ、

今日も放課後、みんなで集まるん?」

「うん、たぶん。

どうしたの?

Kちゃんも、私と一緒に話したいの?」

そうして、クスっと笑いました。

「うん、話したいわー」

「そうなんだぁー、じゃあ、放課後ね!」

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放課後、

昨日のメンバーが集まっており、

特に意味の無い話を、暫くしていましたが、

ヒトミちゃんが、急に言い出しました。

「ねぇ、昨日、

『合わせ鏡』やった人いる?」

みんな、

えー、だって怖いもん、やっとらんよーと

口々に言いましたが、

( 、、、チッ、つまんねーの、、、)

と、ボソッと呟いたヒトミちゃんの声を、

私は聞き逃しませんでした。

それで、私が言いました。

「やってみたわ。」

みんなの視線が一斉に、私に向けられました。

「12時ちょうどに、13番目の顔やろ?

見たよ。」

「で、どうだったの!?」

ヒトミちゃんが食い入るように、私に聞いてきました。

「教えてあげても良いんやけど、

ヒトミちゃんの友達の話、聞かせてや。」

「良いから、早く答えてっ!!」

ヒトミちゃんは、恐ろしく大声で怒鳴りました。周りは、時が止まったかの様に、

誰1人動かず、誰1人として声を出しませんでした。

いや、" 動けないし、声が出せない " の方が、

正しいかも知れません。

「ほんなら、教えてあげるわ。」

私が言いました。

「普通。

普通の、いつもの自分の顔やったわ。」

「Kちゃん!

本当に、合わせ鏡したの!?」

ヒトミちゃんが、イラついているのが分かりました。

「ちゃんとやったから、言うとるんやろ。

そんで、私が聞きたいのは、

ヒトミちゃんの友達はどうなったんや?

って、事や。」

ヒトミちゃんは、暫く、

すごく悔しそうな顔をしていましたが、

急に、開き直った顔で話し出しました。

「良いわよ、教えてあげる。

あの子は、、、。

私から、合わせ鏡の話を聞いて、

それをやったの。

そしたら次の日から、おかしくなって。

トイレの鏡を見て叫び出したり、

窓ガラスを割ったり。窓ガラスに、自分が映ってたんだと思うけど。

挙句の果てには、給食のスプーンとか、、、

とにかく自分が映る物、全てを見れなくなったのよ。

そのうち、学校に来れなくなって、、、。

ある日、お見舞いに行ったの。

あの子の家にね。

チャイムを鳴らすと、母さんが出て来て、

すっごく、やつれてるの。

でね、あの子には会えないって言うのよ。

私、ムカついちゃって。

明日、引っ越すからって、ウソついて、

ようやく家の中に入れてもらえたの。

だって、気になるじゃない?

あの子の、コト・・・。

私の1番のお友達だから、心配よ。

みんなもそう思うでしょ?」

私は、微かにヒトミちゃんが笑った気がしました。

「でね、中に入ると、

家の中は、滅茶苦茶!!

顔が映りそうな物は、何にも無いのよね。

それで、私はあの子の部屋に向かったんだけど、部屋の前に行くとね、

中から、小さな笑い声が聞こえるの。

部屋のドアを開けてみたら、

あの子が、後ろ向きに床に座ってて。

私が声をかけても、ずっと笑ってるのよ。

しかも、あんなに嫌ってた鏡が、

あの子の目の前にあってね、

おかしいでしょー?

でさ、あの子が言うの。

『ヒトミちゃん?

来てくれたの? 頼みがあるんだけど 、、、』って。

なあに?って私は言ったわ。

そしたら、あの子、こっちを見て、

何て言ったと思う?

『片目がもう無いから、やりずらくて、、、

手伝ってくれない?』

だって!

あの子の右目、

ハサミでくり抜こうとしたらしいんだけど、

全然、下手くそでねー、

とにかくグチャグチャなのよ!

私、思わず笑っちゃった。

それで、

左目を、くり抜くの手伝ってって。

私は、喜んで手伝ってあげたわ。

1番仲良しのお友達でしょう?

そんなの当たり前の事よ。

お友達が、困ってる時は助けなきゃ。

それで、手伝ってやったんだけどさー、

すごいの!

目玉って、

ハサミで取り出そうとしても難しいのね。

だからね、

スプーンを使ったの!!

すっごく良いアイデアだと思わない?

みんなも、そう思うでしょ?

どうせなら、

綺麗に取り出してあげたいじゃない?

でもさー、瞼が邪魔なんだよ。

だから瞼をハサミで切って、目玉だけが、

ちゃんと見えるようにしたの。

私、天才かもって思っちゃった!!

まぁ、

ここからが、大変だったんだけどね。

目玉にスプーンを入れる時って、

まだ堅いメロンを、スプーンでくり出すよりも、かなり力がいるのよ。

そして、メロンの果汁みたいに、やたら手に張り付く赤い汁が出てきて、

それをね、甘いねって2人で言いながら、

一緒に頑張ったの。

もう、おかしくって、おかしくって、

お互い大笑いして!!

目玉をね、くり出したのは良いんだけど、

最後に、変な太い糸みたいな物が、

目玉と繋がってて、ぶらさげてんだよねー。

邪魔っつーの?

これじゃあ、ダメだよね!

ちゃんと、ハサミで切らないと、

目玉を取り出した事にならないもんね。

だって、私って友達を大事にするから!

うふふふっ。

『右目も、ヒトミちゃんに、

手伝ってもらえば良かったー!』って、

あの子、悔しがってたから、

ごめんねって、慰めてやったけど。

でも私が、もう少し早く行けば、

右目も手伝ってあげれたのに。

可哀想な事をしたわ。

それで、、、

何で、目玉が要らなくなったの?って、

優しく聞いてやったの。

すると、あの子がね、

『目玉がある方が怖いから。』

って言うのよ!

私、思わず、

吹き出しそうになっちゃったけど、

笑いをこらえながら、あの子の両手を掴んで、

そうよね、きっと、そうだわ、って、

同情するように、声を掛けてやったのよ。

でもその後に、

私、また転校する事になって。

泣きながら、引っ越したのよ、、、?

だけどね、

今でもあの子とは、文通してるの。

本当に仲良しなのよ!

昨日も手紙が来てたから、お返事書かなきゃ!

うふふふっ 、、、」

………………

きっと、

その場にいたみんなが、

逃げ出したかったんだと思います。

私は、咄嗟に思いました。

( だから、この子は、

転校し続けとるんじゃないんかな?

絶対に、精神的におかしいわ。何で、病院に、、、)

私は聞きました。

「ねぇ、ヒトミちゃんのお父さんって、

何の仕事しとるの?」

ヒトミちゃんは、

とても、とても得意げな顔をして言いました。

「お医者さん。」

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暫くしてすぐに、ヒトミちゃんはまた転校して行きました。

あの出来事以来、

クラスの女の子は、誰も近寄らなくなってしまい、1人でポツンと居ましたが、何故か寂しそうではありませんでしたし、

たまに、1人で薄ら笑いをしているのを見た事がありましたが、

以前の出来事もあり、かなり気味悪かったです。

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父親の都合で、転校を繰り返して行く内に、

友達を作る為に、気を引く為に、

そのような、気味の悪い作り話をしていたのか。

それとも、本当に父親が医者で、

彼女の精神的な、、、何らかの理由で、

転校を繰り返していたのか。

それとも、父親と思っている相手は、

赤の他人の精神科のお医者さんだったのか。

それとも、、、

それとも、、、

想像は膨らみますが、

私には、分かりません。

­­ … あと­­ …………

このような話の最後に、

こんな事を言ってしまうのは、

かなり場壊しで、

申し訳ないのですが、

合わせ鏡の13番目の顔なんて、

小さ過ぎて、ちっとも分からないし、数を数えるのも大変でしたし。

もしかしたら、私が見たのは、

12番目の顔だったかもしれないですね。

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