中編3
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瘴気の溜まり場

少し長くなりますがどうぞお付き合いください。

父の仕事の関係でお世話になったK本さんという方とその方の住んでいる地域にまつわる実話。

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K本さん一家は練馬区のとある地域に一軒家を構え、K本さん、旦那さん、息子2人、そして義母の5人で暮らしていた。

その地域は中心が盆地になっていて、そこには1.5メートルほどの深さの池がある公園になっていた。池の水は綺麗で、釣りをしにくる人もいるらしい。公園には雑木林もあり、日があまりささない暗い場所だと言う。

K本さん宅を含めた住宅がその公園を囲むようにして配置されており、一見何の変哲もない住宅街なのだが、この地域では謎の死を遂げる人が相次いだという。

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始まりは、父がK本さん宅で仕事をしていた最中に、盆地の公園に人だかりを見つけた所から。

自販機に飲み物を買いに行くついでに人だかりの方へと近寄ると、警官が複数人と野次馬達が集まっていた。父は釣り道具を持ったおじさんに「何かあったんですか」と聞くと、

「あんま見ない方がいいよ。水死体だから」

と。

興味が湧いた父は、警官が包囲している池の方を見ると、透き通った水面に背広を着た男がうつ伏せでプカプカ浮いていたらしい。

男の髪は真っ白で、鍋に浮かぶ白滝のようにユラユラと揺れ、皮膚は青白く変色していた。

警察官に死因を聞いたら、酔っ払った男が立ちションをしようとして、誤って転落したのだろうとのこと。

K本さん宅に戻った父は、玄関先でK本さんに下の公園であったことを話すと、

「あら…そうなのね…」

と悲しそうに返事をした。

すると奥から腰の曲がった義母が、「なになにどうしたのよ!」と躍り出てきた。

父は公園での出来事を繰り返し話した。

すると義母は、「この辺、多いのよ。亡くなる方!」とある体験談を話し始めたという。

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この義母は、腰こそ90度に曲がっているが、下の公園で散歩をよくするらしく、朝早くに公園に降りると、同じく散歩をしている30代くらいの女の人をよく見かけていた。

彼女とは何回か会話を交わした事があるらしく、植物や鳥が好きでよくこの公園で眺めているらしい。

ある朝、義母がいつものように散歩をしに公園まで降りていくと、その女性が雑木林に少し入ったところで後ろを向いて立っていたそうで、

「あら、おはようございます。」

と声をかけたが、返事がない。

「あの!おはようございます!」

2度目の挨拶にも反応しなかったので、呆れて公園の周りをグルっと散歩し始めたそう。

15分ほどして雑木林の前を通りかかると、女性はまだ後ろ向きに突っ立っていたので、

近寄って声をかけようとしたら、女性は地面から10センチほど浮いていたらしい。

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義母はその話をとても楽しそうに話していたそうで、

その手の話に興味津々な父はその話を聞いて、

「うわぁ。そりゃ怖いですね!」

なんて言ってたが、それを横で聞いていたK本さんは義母に、

「ちょっとお母様、やめてくださいな…」

と困った顔をしていたという。

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数年後、たまたま実家に帰ってきていた私は、父から再びK本さん宅の話を聞くことになる。

「K本さん、亡くなったよ。」

私は耳を疑った。

私自身も以前父の仕事の手伝いをした際に、K本さんにはお会いした事があったのだが、まだ50代の貴婦人というイメージで、美味しいフレンチトーストをご馳走になったのを昨日のことのように思い出せる。

くも膜下出血による急死だったそうだ。

父はこう続けた。

「その後すぐ、K本さんとこの2人いた息子。次男の方が自殺したらしい。俺何回か話したことあったから驚いたよ。」

その後残りの家族がどうなったのかは、父も分からないそうだ。

2006年には、この公園のトイレで、落雷により男性が1人亡くなっている。

近くの木に雷が落ちたのを見て、トイレに駆け込んだが、不運なことにトイレにも雷が落ちてそのまま亡くなった。

この地域には「陰」の空気や瘴気が溜まり、

マイナスな何かが、彼らに影響したのではないだろうか。

私は霊的現象こそ信じていないものの

不審な死が相次ぐこの地域には、それらと何らかの因果関係があると考えている。

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