短編2
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Mの独り語り

「ターンエーとレコンギスタのどちらが時系列的に先か後かで、いまだに不毛な議論がファンの間で続いてるんだけど、本当にナンセンスだ」

あぁ、まただ。

またいつもの話が始まった。

「公式発表はターンエーが後だと発表したとか、おハゲ総監督がインタビューでレコンギスタが後だと発言したとか、馬鹿みたいなマウント合戦ばかり。もう、うんざりだ」

僕はその手の話には詳しくないが、どうやら彼はガンダムについて熱く語っているらしい。

うんざりなのは僕の方だ。

ガンダムについて彼なりの持論があるようで、同じ話を何度も何度も、耳にタコができるくらい聞かされている。

「宇宙世紀以外のアナザーは、作品一つ一つを純粋に楽しめばいいじゃないか。GだってWだって00だってオルフェンズだって、他作品との時系列なんて最初から考えてなかったからこそ、素晴らしい作品になったじゃないか」

一方的かつ情熱的な独り語りは、時間とともに加速度的に盛り上がり続ける。

彼が盛り上がれば盛り上がるほど、反比例的に僕の感情はドンドン冷めていく。

非常に迷惑だと感じているこちらの気持ちは、微塵も彼に伝わってはいない。

「そもそも時系列に並べる必要性などないんだ。だって、全てのシリーズは、ビルドシリーズの劇中劇ってことになるんだからさ」

僕にはわかる。

このフレーズが出ると、そろそろオチだ。

「まぁ、そもそも、僕自身の中では、ターンエーもレコンギスタもガンダムとは認めてないけどね」

オチまで話すと、満足したのか、彼は僕の目の前から姿を消した。

翌日、ついに耐えきれなくなった僕は彼、友人Mの家をたずねた。

彼の親に許可をもらって部屋に入れてもらうと、感情のままに不満をぶちまけた。

「毎晩毎晩、枕元で同じ話ばかりしやがって!!お前はもう、事故で死んだんだよ!!いい加減、成仏しやがれ!!」

そう言うや否や、右手いっぱいに握りしめた塩を思いっきり叩きつけた。

遺影がわりの、彼の肖像画に向かって…。

Concrete
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