中編5
  • 表示切替
  • 使い方

街灯の男

wallpaper:1063

1年程、前の話だろうか。

近所の親戚の家に、

母から用事を頼まれて行った時の話。

separator

私は、親戚のおばちゃんが、

あまり、好きでは無く、、

( はっきり言おう、キライだ。)

用事を済ませて、

さっさと帰ろうとした。

その時、

「もう、夕方やし、

うちでお夕飯、食べていって!」

( でた。

あぁー、だからイヤなんやよなぁー。)

丁重にお断りしたものの、

私の手には負えない。

「美味しいですねー、この煮物!」

私は煮物がキライだ。

「そうやろー?

おばちゃんの得意料理なんや!

どんどん、食べてな?」

その後は、コーヒーやら何やら出されて、

結局、帰るのが9時過ぎになった。

私も、そろそろ限界に達していたので、

「もう、こんな時間ですし、失礼します。」

「気を付けてな。また、おいでや?」

そんな言葉は、もう耳には入ってこず、

私は、

苦痛から逃れるかの様に、親戚の家を後にした。

(おかん、

自分も、おばちゃんの事をキライやからって、

私に用事を、頼まんといて欲しいわ。

次からは、絶対に断る!断固として!)

そう思い、

プンプンしながら、家に向かって帰った。

separator

近所と言う事もあり、

私は歩いて行ったのだか、辺りはすっかり暗くなっていて、街灯の灯りだけが、

やけに目に付いた。

すると、

道の先の街灯の下に、人が歩いていた。

なんの不思議も無い事だ。

私が、そのまま歩いていると、

おかしな事に気付いた。

まだ、その人は街灯の下を歩いている。

明らかに、前へ進んでいない。

ずっと街灯の下で歩いている。

(、、あれっ?

まだ、おるわ。

足踏みしとる様に見えるんやけど、、。)

近付くにつれて、

その人の容姿が、分かってくる。

背はあまり高くないが、

中肉中背の男性。髪は、黒くて短い。

グレーのダボッとしたズボンに、

黄土色に近い茶色の上着。

(しかし、、

あいつは何故、足踏みを、、、?)

かるく怖かったので、

私はその道を左に曲がり、別の道から帰る事にした。

、、あれっ?、、、

道を曲がった先の街灯の下に、さっきと同じ男がいる。

歩いているかの様に見えるが、

しかし進まず、また足踏み状態。

( これは、、、)

私は、男がいる街灯の道を、

途中で右に曲がった。

、、、。

その道の先の街灯にも、男がいる。

やはり、歩いているのに進んでいない。

これは、ヤバいと思った。

( でも、アイツは今、あそこにいるし、

それなら、、、)

と、道を引き返した。

、、無駄だった、、、。

やはり、街灯の下にはあの男がいる。

私は、かなりの恐怖と、

それに加えて、

何故に携帯を持って来なかったのか、

私の大馬鹿野郎!と、かなり苛立ち、

そして、焦っていた。

こんな時に限って、他の通行人はいない。

( どうしたら良いんやろ、、、)

私は、自慢の頭の良さ (ウソ) を駆使して、

街灯を避けながら、どうにか家に帰れないかと考えた。

とにかく、

街灯に、辿り着かなければ良いんだから、、、

考える。

考える。

その間も、前の街灯には男が歩いている。

暫く考え、そうして私は、道順を決めた。

まず、ここを右に行って、そしたら街灯があるから、その直前を左に。

そして、、、

最後は、塀を登らなければならないと言う、

かなり過酷なプランだったが、

これしか家に辿り着く方法が無い。

もちろん、街灯の正確な位置なんて把握してない。

だけど仕方無いのだ。

曖昧な記憶を頼るしか、、、。

私は、プラン通りに進む。

( よし、よし、)

上手く行っていた。

順調に進んでいるはずだった。

しかし、

ある角を曲がった所で、私は愕然とした。

私が知らない内に、

そこには、新しい街灯が立っていた。

( 、、、えっ?

いつの間に、、できたん、、?)

勿論、男は歩いている。

私は、先に行く事も、引き返す事も出来ずにいた。

つーか、何なん!?この男!!

段々と腹が立って来た。

その時に、ふと、

( 私が、その男の横を、

普通に歩いて行ったらどうなるんやろ?)

変な考えが生まれた。

極限状態の私は、ゆっくりと街灯に近付いた。

そうして、

男の背中がはっきりと分かる所まで来た時に、

その男は、歩きながら、

ゆっくりと、こちらを振り返ろうとした。

( 見ちゃいけないっ!)

何故だか分からないが、

私はそう感じて、ダッシュで戻った。

separator

私に残されている道は、2つ。

1つは、よその民家に侵入しつつ家に辿り着くか、

もう1つは、、、絶対にしたくない、

男の横を、ダッシュで走り抜けるか、だ。

しかし、ヤツも歩いており、

それがいつ、ダッシュに変わるかも分からない。

私は、不法侵入者を選んだ。

命には変えられない。

明らかに、あの男はおかしい。

この世の者なのか、、、。

separator

そうして、私は民家から民家へと、

街灯がある道路側は通らずに、忍びの者の様に、渡り歩いた。

やっと家が見えた。

走って家に入ろうとした、瞬間、、、

、、あぁ、、、そうなんや、、、。

絶望が生まれた。

家の玄関にある、玄関灯の下に、

アイツは居た。

我が家には、他に出入り出来る所は無い。

もう、パニックになり、

近所迷惑も考えず、

電気の明かりが見える部屋の窓に向かって、

大声で叫んだ。

「おかーんっ!!

聞こえるけーっ!?

玄関のとこの灯り、消してーっ!

ねぇー!!

玄関の灯り、消してーっ!!

早くーっ!!

( あっ、、、ヤバい、、、)

おかーんっ!!

玄関から、出て来んといてや!!

絶対に、灯り消すまで、外に出てきたら

ダメや!!

分かったかーっ!?

とにかく、

今すぐに消してーっ!!

絶対に、外に出て来んといてーっ!!」

その間も、

ソイツはうちの玄関の前で、歩いている。

( ヤバい、、、ヤバい、、、)

その瞬間、

フッと玄関灯が消えた。

そして、おかんが出てきた。

「あんた!何があったんや!?

こんな夜に大声出して!どしたん?」

私は泣いていた。

泣きながら、おかんに抱きついた。

おかんは、それ以上何も言わず、私を連れて家に入った。

separator

翌日、おかんに昨晩の話をしてみた。

おかんは、あまり話さなかった。

( 後に、何故あの時に、

あまり話さなかったのかと、

理由を聞いてみたら、

おかんが逆に、かなり怖くなってしまったらしく、恐怖で喋れなかったらしい。

ちなみに、おかんは、

そう言った類が苦手である。)

separator

その後、私は、夜道が怖くなってしまい、

暫くは、夜の外出が出来なかった。

とりあえず今は、大丈夫だが。

しかし、

あの男は、何をしたかったんだろうか?

そして、一体、何者だったのか、、、。

あの時に、男の顔を見ていたら、どうなっていたのだろう?

何か、とんでもない事が起きたのだろうか?

考えればキリが無く、

私も、あれからはあの男と会っていないので、

どうでも良いや、と片付けてみる。

しかし少しだけ、今でも街灯が、苦手だ。

Normal
コメント怖い
10
13
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信