休みの日の昼下がりに、のほほんと私は寒空を見上げてブルブル震えながら、愛車を停めた場所の斜め向かいをチラ見した。
黒い国産車輛がヌウっと姿を現して、牛乳屋の硝子張りの出入り口に横付けされる。
直後に、黒い車輛の出て来た所からいつの間にやらシルバーのドイツ車輛………フォルクスワーゲンが出て来ていたのだが、黒い車輛の後ろに居ただろう僅か数秒の内に音も無く現れ、尚且つ運転手の姿も見当たらない………
「ウヒョーっ♪」
本来、違った意味で身震いしつつ恐れおののくか、「見間違いだ」とでも割り切って、さっさと立ち去るのが通常だろうが、私は目の前のおかしな出来事に腹の中で歓喜した。
又、怪異が舌打ちしているのかな………むふふ。
作者芝阪雁茂
遂に、住み始めて1年近くの場所で珍現象が。
「怖いと言うよりネタが出来た」と喜んでしまうのは、怪異からすれば当てが外れて、腹立たしいのかなと思う位に、歓喜に打ち震えてしまったのは内緒で御座います。