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短編2
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怪物

おじいちゃんと一緒に裏山へ山菜取りに出かけたとき、ぽっかりとした洞穴を山腹で見つけた。

鬼の巣窟。その洞穴はそう呼ばれている。

この裏山には昔から鬼がいると言われている。

というのも──。

なんでもその昔、この村周辺に大熊が出没したことがあった。それは稀に見る大雪の年だった。

一番村はずれに住む高橋家が荒らされたことから端を発する。

高橋家は父母子の三人暮らしで、その日はちょうど出先から戻ってきたときであった。親戚の家へ赴くために家族総出で出かけていたのである。

高橋家の当主、高橋一洋は言葉を失った。

家がめちゃくちゃにされていたのだ。扉は切り裂かれ、箪笥から物が散乱し、囲炉裏端は灰まみれ。

盗人だと疑うことはなかった。家の周りには獣の大きな足跡が積雪にくっきりと残っていたからだ。

大熊の仕業だ。

その足跡を見てすぐに悟った。

このことはすぐに村中で騒がれることになった。村人達は集会を開いて、どうするかを話し合った。

その結果、村一番のマタギであった五平という若者が熊狩りに出かけることになった。

だが熊狩りの前夜、事件は起こった。

真夜中に五平の家の戸が激しく叩かれた。

五平が戸を開けると、血だらけの高橋一洋がそこに立っていた。

一洋はふらふらになりながら妻と子が熊に襲われていると必死に叫んだ。

大熊はまた、高橋家に戻ってきていたのだ。

五平は猟銃を手に、急いで高橋家に向かった。

そうして五平が高橋家についた時、ちょうど獣影が戸口から出てきている所だった。

五平はすばやく銃を構え、引き金を引いた。

暗闇に銃声が響くと、その獣影は山の方へ逃げていった。

確実に命中した。

だがそれ以上、闇夜を追うことはできなかった。

後に残ったものは悲惨だった。

妻は顔が半分齧られたまま息絶え、子は上半身が見つからなかった。

五平は寝ずに朝を待って、血痕を追って山に入った。

くっきりと血痕が積雪に残っており、追うのはそう難しいことではなかった。

しかし、血痕を追って山腹まで登ってきたときであった。

そこには異様な光景が広がっていた。

まるで濡れたぼろ切れを絞ったかのごとく、そこには多量の血痕が飛び散っていた。

そして、そこで血痕はぴたりと消えている。

五平は周りを見渡してみた。

しかし、大熊の死体はどこにもなかった。

村人達はこの不思議な出来事を鬼の仕業だといった。

熊を鬼が喰ったのだ、と──。

私は以前、この話は本当なのかとおじいちゃんに聞いたことがあった。

ちなみに、おじいちゃんの名前は五平である。

五平おじいちゃんは言った。

いいや、あれは鬼なんかじゃなかった…。

そして、それ以上は何も教えてくれなかった。

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