中編7
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おとんの夢

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これは、実話です。

脚色は一切ありません。

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私が小学生の時の話。

まだ、弟 ( 仮にAとします ) が、

生まれて間もない頃。

当時、私は7歳だったと思う。

私は家族4人、2階にある、

一つの部屋で一緒に寝ていた。

1階には、

かなり賢かった犬ちゃんがいた。

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ある夜、私はおかんに起こされた。

夜中だ。

「なんや〜」

私は半分寝ながら、おかんに言った。

「ねぇ、、、おとんが変なんや、

どうしよう、、、」

( 変て、なんや、、、?)

おとんを見る。

かなり、うなされている。

「おとん、どしたん?」

そう、私がおかんに聞くと、

「変な声で、目が覚めて、

犬ちゃんも吠えとるし、、、。

起きてみたら、

おとんがうなされとって、、、。

おかん、

どうして良いか分からんし、、

K ( 私の事です )を、起こしたんや」

うちは、

かかぁ天下で、いつも強気なおかんだが、

こう言う時は、滅法弱気だ。

昔、おかんが言っていた。

「自分は怖がりだし、

本当は強くなんかない。

だけど、

強くなければ、

この家を支えて行く事なんて出来ない。」

当時、うちは商売をしていて、

おとんは頼りなく、おかんに全部、任せきりだった。

だから、おかんも勝気な性格だし、

弱音などは、吐かなかったのだろう。

ただ、

小学校1年生くらいの私が、

幼い弟の面倒を見たり、

宴会の片付けなど、手伝ったり、

すごく、かなーり、

立派な子供でしたので ( 自慢 ) 笑。

しかし、今、思えば、

子供の私にしか、頼る人もおらず、

相当に辛かったんだと思う。

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おとんは、相変わらずうなされている。

子供ながらにも、尋常では無い事は分かった。

すごい汗だ。

おかんは、横で泣いている。

「おとん、」

と、何度か呼び掛けてみた。

反応無し。

次の瞬間、おとんの目が、カッと開いた。

正直、怖かったが、

何せ私は、幼い頃から

おとんに、

ホラー映画を散々、観せられていたので、

( エクソシストは、6歳に制覇 )

今思えば、

( なんて親だ、ディズニー観せろっ!)

と思うのだが。

そんな、描写は何万回と観ていたので、

普通に受け入れられた。

〔 しかし、、、

そんな幼い頃の、ホラー映画ライフも、

そう言った類の映画が大嫌いなおかんが、

ある日、たまたま、

おとんと私が観ていたホラー映画を、

チラッと観てしまったらしく、、、。

そして、その夜、

「弟が、口から大きな血の塊を吐く」

と言う、夢を見たそうで。

そうして、

我が家には、瞬時に、

" ホラー映画禁止令 " が、出された。〕

(当たり前の成り行きだ。)

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咄嗟に、おとんの左手を握る。

「おとん!帰って来てやっ!!」

何故かしら、

そんな言葉を口走っていた。

おとんは、一点を見つめながら、

そこを、かなり睨んでいた。

( 誰かおるんか? 戦っとるん?)

幼い私には、その様にしか思えなかった。

(じゃあ、おとんと一緒に、

戦わんといかんのじゃないけ?)

そう思い、

弟は寝ていたのだが、おかんに、

「Aの手を、握って、」と、言った。

おかんは泣きながら、

弟の、小さな手を握る。

そして、

「Aの手を握ったまま、

おかんも、おとんの手を握って、」

と言った。

「おとん、負けんな!

頑張れ!って、帰って来て!って、

いっぱい言うて!!」

おかんは、おとんの左手を握りながら、

その通りにした。

私も、おとんの手を握りながら、

しかし、ふと、

おとんの目線の先を見た。

普通の天井、、、。

(おとん、何を見とれん?)

私は、おとんの左手を離し、右側に行った。

そして、おとんの隣に自分も寝て、

右手を握った。

おとんの視線の先に目を向ける。

(うん、、、?)

黒いモヤみたいのが、見えた気がした。

すると私は、

その場所から目が離せなくなってしまった。

おとんと私、

2人で、そこを見ていた。

そのうち、私は段々と、睨み出して来た。

(この変なのが、

おとんを連れて行こうとしとるんや、

絶対に、負けんしっ!)

私は、目を瞑ったらダメな気がして、

黒いモヤを睨みながら、おとんにも言った。

「ねぇ!おとんっ!!

目を瞑ったら、ダメやよ!

瞬きしたらダメやし!

ずっと睨んどってやっ!!」

私も、瞬きもせずに、睨み続けた。

瞬きをしないから、涙が出ていた。

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そうして、

暫く、そんな状態が続いたが、

ある瞬間に、

黒いモヤの中に、

2つの小さな白い点が、見えた。

(こいつの目や!)

何だか、そんな気がして、

私は、その目に向かって叫んだ。

「あんた、誰や!?

どっから来たん!?

こっちは4人、おるんやぞ!!

はよ、帰れま!!

おとんに変な事したら、許さんしねっ!!

バーカ!アホ!死ねっ!!

どっか行け!!

変な目しやがって、気持ち悪いんや!!

どっか行けっ!どっか行けっ!

2度と来んなや!!

うちから、出てけーっ!!

このお化けがっ!!」

私は、瞬きせず、涙を流しながら、

おとんの右手を強く握りながら言った。

(もっとも、

その時に発した言葉は、自分でもあまり

覚えておらず、後におかんから聞いた。

小学生らしい、罵倒である。)

すると一瞬、

白い2つの点は、更に白く光った。

( 負けたらダメやっ!)

私も、更に睨みつけた。

すると、白い光が弱まって行った気がする。

後は、おとんだ。

隣を見る。

おとんは、まだ一点を見て睨み続けている。

咄嗟に、私は、

おとんに覆いかぶさった。

そして、さっきの場所を睨んだ。

(私が睨み続けてやるし、おとんから離れてや!)

でも、それはダメだった。

おとんは、相変わらずだった。

(あぁ、これは、

おとんが何とかせんと、いかんのや、、、)

子供ながらに、そう思った。

有難い事に、

ホラー映画をずっと、観せられていたせいか、

ホラー関係の知識はかなりあったので、

「おかん、手、離していいわ、

そんで、塩とか酒?あるか?」

おかんは、戸惑いながらも取りに行った。

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戻って来たおかんに、

「バーカ!バーカ!

みたいな感じで、おとんに塩、ぶつけて!」

もう、おかんもヤケクソだった。

「おとんのバカめ!」

(私は、

おとんの〜、とは言ってないと思うけれども。)

私は、よく分からないが酒をぶちまけた。

そして、おかんに、

「天井にも塩ぶつけて!

死ねっ!とか言うて、ぶつけて!」

そして私は、

部屋の窓を開けた。

しかし、弟が、

一番窓側に寝ていたので、

おかんに

Aの手を握るように、言った。

一緒に連れていかれたら大変だと、思った。

そして、窓の横で、

「早う、出てけや!

他の人の所に、行ったらいいやん!!

うちは、絶対に、無理やしな!!

あんたの嫌いな犬、

うちにおるの、知っとるんやろ?

うちの犬ちゃんは、賢いからな、強いし。

下から、連れて来るか?

おとんから、離れてや!!

どっかに、行ってぇーーっ!!!」

私は、大絶叫だったらしく、

この話も、後におかんから聞いた。

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そして、少し後、

おとんが喋った。

「、、怖かった、、、」

何があってん!?と、家族は聞いたが、

「明日、、話すわ、、、」

と言い、1階に降りて行った。

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翌日、

おとんから、話が切り出された。

「昨日、寝とったら、夢見たんや、、、。

何か、すごい気持ちの悪い夢や。

そしたら、急に目の前に、

『死神』?

みたいな格好したやつが、現れてな。」

そして、おとんは、

そいつの絵を描いてくれた。

それは、

まさに『死神』だった。

黒いフードを被り、

その黒が果てしなく広がっていて、

目は小さく白い点。

私が見た、小さな白い点と似ていた。

そして、

まさかとは思うが、大きな鎌を持っていた。

「でもな、

おとんは、目をそらしたら、

絶対にダメやと思うて、ずっと睨んどったんや。

でも、もうダメかも知れんって、思った時、

Kとか、おかんとか、Aの声が聞こえて来てんて。

そしたら、

いつの間にか、Kが、おとんの隣におって、

『K、危ないし、帰れ!』

って言うんやけど、

Kが、そいつに向かって、

バーカ!バーカ!って言っとるんや。

それでな、

一瞬、Kか居なくなったと思ったら、

急に、おとんの前に立っとるんや。

そいつから、

おとんを守ってくれてるみたいにな。

おかんと、Aの、

『帰って来て』って声も聞こえとって、

しまいには、うちの犬も出て来てな。

威嚇するように、すごい吠えとったわ。

そしたら、

そいつの色が薄くなって来たんやけど、、、

そこから、おとんは記憶無いんや。

目が覚めて、自分を落ち着けようと、

タバコを吸いに行った所からは、

覚えとるんやけどな。

、、、、、、。

、、みんな、ありがとうな、、、

おとん、どうなっとったんやろな?」

そこで、その話は終わった。

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そんな事があったにも関わらず、

相変わらず、おとんは頼りなく、

そして、性懲りも無く、ゴルフに行く。

(ここまで来ると、

さすがに、頭が腐ってんじゃないかと思う。

脳みそが、普通の人の半分しか無いとか?

だから、歳食ってハゲたんだね〜 プププッ。

せっかく、

キレイな奥さんと、結婚できたのに。

この、ド阿呆めがっ!!

あ、うちのおかんは美人なんです。

私は、残念ながら、似てないです 笑。)

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あの出来事以来、

おとんには何も起きてはいません。

私は、ホラー映画観といて良かったーと、

思う反面、

7、8歳の子供に、全てを委ねるなっ!

と言う、

よく分からない葛藤が、残る出来事でした。

この話を書くにあたり、

色んな事を、久しぶりに思い出しましたが、

あの変なヤツが何だったのかは、

分かりませんし、

一歩間違えれば、

おとんは、連れて行かれたのだろうか、

と、今更ながら恐怖を感じます。

もしかして、この頃から、

一か八かの大勝負的な、

勘に頼るやり方をしていたのでしょうね。

そして、

何故、おとんが標的にされたのか。

日頃の行いの悪さですかね 笑。

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