wallpaper:1063
これは、実話です。
脚色は一切ありません。
separator
私が小学生の時の話。
まだ、弟 ( 仮にAとします ) が、
生まれて間もない頃。
当時、私は7歳だったと思う。
私は家族4人、2階にある、
一つの部屋で一緒に寝ていた。
1階には、
かなり賢かった犬ちゃんがいた。
separator
ある夜、私はおかんに起こされた。
夜中だ。
「なんや〜」
私は半分寝ながら、おかんに言った。
「ねぇ、、、おとんが変なんや、
どうしよう、、、」
( 変て、なんや、、、?)
おとんを見る。
かなり、うなされている。
「おとん、どしたん?」
そう、私がおかんに聞くと、
「変な声で、目が覚めて、
犬ちゃんも吠えとるし、、、。
起きてみたら、
おとんがうなされとって、、、。
おかん、
どうして良いか分からんし、、
K ( 私の事です )を、起こしたんや」
うちは、
かかぁ天下で、いつも強気なおかんだが、
こう言う時は、滅法弱気だ。
昔、おかんが言っていた。
「自分は怖がりだし、
本当は強くなんかない。
だけど、
強くなければ、
この家を支えて行く事なんて出来ない。」
当時、うちは商売をしていて、
おとんは頼りなく、おかんに全部、任せきりだった。
だから、おかんも勝気な性格だし、
弱音などは、吐かなかったのだろう。
ただ、
小学校1年生くらいの私が、
幼い弟の面倒を見たり、
宴会の片付けなど、手伝ったり、
すごく、かなーり、
立派な子供でしたので ( 自慢 ) 笑。
しかし、今、思えば、
子供の私にしか、頼る人もおらず、
相当に辛かったんだと思う。
separator
おとんは、相変わらずうなされている。
子供ながらにも、尋常では無い事は分かった。
すごい汗だ。
おかんは、横で泣いている。
「おとん、」
と、何度か呼び掛けてみた。
反応無し。
次の瞬間、おとんの目が、カッと開いた。
正直、怖かったが、
何せ私は、幼い頃から
おとんに、
ホラー映画を散々、観せられていたので、
( エクソシストは、6歳に制覇 )
今思えば、
( なんて親だ、ディズニー観せろっ!)
と思うのだが。
そんな、描写は何万回と観ていたので、
普通に受け入れられた。
〔 しかし、、、
そんな幼い頃の、ホラー映画ライフも、
そう言った類の映画が大嫌いなおかんが、
ある日、たまたま、
おとんと私が観ていたホラー映画を、
チラッと観てしまったらしく、、、。
そして、その夜、
「弟が、口から大きな血の塊を吐く」
と言う、夢を見たそうで。
そうして、
我が家には、瞬時に、
" ホラー映画禁止令 " が、出された。〕
(当たり前の成り行きだ。)
separator
咄嗟に、おとんの左手を握る。
「おとん!帰って来てやっ!!」
何故かしら、
そんな言葉を口走っていた。
おとんは、一点を見つめながら、
そこを、かなり睨んでいた。
( 誰かおるんか? 戦っとるん?)
幼い私には、その様にしか思えなかった。
(じゃあ、おとんと一緒に、
戦わんといかんのじゃないけ?)
そう思い、
弟は寝ていたのだが、おかんに、
「Aの手を、握って、」と、言った。
おかんは泣きながら、
弟の、小さな手を握る。
そして、
「Aの手を握ったまま、
おかんも、おとんの手を握って、」
と言った。
「おとん、負けんな!
頑張れ!って、帰って来て!って、
いっぱい言うて!!」
おかんは、おとんの左手を握りながら、
その通りにした。
私も、おとんの手を握りながら、
しかし、ふと、
おとんの目線の先を見た。
普通の天井、、、。
(おとん、何を見とれん?)
私は、おとんの左手を離し、右側に行った。
そして、おとんの隣に自分も寝て、
右手を握った。
おとんの視線の先に目を向ける。
(うん、、、?)
黒いモヤみたいのが、見えた気がした。
すると私は、
その場所から目が離せなくなってしまった。
おとんと私、
2人で、そこを見ていた。
そのうち、私は段々と、睨み出して来た。
(この変なのが、
おとんを連れて行こうとしとるんや、
絶対に、負けんしっ!)
私は、目を瞑ったらダメな気がして、
黒いモヤを睨みながら、おとんにも言った。
「ねぇ!おとんっ!!
目を瞑ったら、ダメやよ!
瞬きしたらダメやし!
ずっと睨んどってやっ!!」
私も、瞬きもせずに、睨み続けた。
瞬きをしないから、涙が出ていた。
separator
そうして、
暫く、そんな状態が続いたが、
ある瞬間に、
黒いモヤの中に、
2つの小さな白い点が、見えた。
(こいつの目や!)
何だか、そんな気がして、
私は、その目に向かって叫んだ。
「あんた、誰や!?
どっから来たん!?
こっちは4人、おるんやぞ!!
はよ、帰れま!!
おとんに変な事したら、許さんしねっ!!
バーカ!アホ!死ねっ!!
どっか行け!!
変な目しやがって、気持ち悪いんや!!
どっか行けっ!どっか行けっ!
2度と来んなや!!
うちから、出てけーっ!!
このお化けがっ!!」
私は、瞬きせず、涙を流しながら、
おとんの右手を強く握りながら言った。
(もっとも、
その時に発した言葉は、自分でもあまり
覚えておらず、後におかんから聞いた。
小学生らしい、罵倒である。)
すると一瞬、
白い2つの点は、更に白く光った。
( 負けたらダメやっ!)
私も、更に睨みつけた。
すると、白い光が弱まって行った気がする。
後は、おとんだ。
隣を見る。
おとんは、まだ一点を見て睨み続けている。
咄嗟に、私は、
おとんに覆いかぶさった。
そして、さっきの場所を睨んだ。
(私が睨み続けてやるし、おとんから離れてや!)
でも、それはダメだった。
おとんは、相変わらずだった。
(あぁ、これは、
おとんが何とかせんと、いかんのや、、、)
子供ながらに、そう思った。
有難い事に、
ホラー映画をずっと、観せられていたせいか、
ホラー関係の知識はかなりあったので、
「おかん、手、離していいわ、
そんで、塩とか酒?あるか?」
おかんは、戸惑いながらも取りに行った。
separator
戻って来たおかんに、
「バーカ!バーカ!
みたいな感じで、おとんに塩、ぶつけて!」
もう、おかんもヤケクソだった。
「おとんのバカめ!」
(私は、
おとんの〜、とは言ってないと思うけれども。)
私は、よく分からないが酒をぶちまけた。
そして、おかんに、
「天井にも塩ぶつけて!
死ねっ!とか言うて、ぶつけて!」
そして私は、
部屋の窓を開けた。
しかし、弟が、
一番窓側に寝ていたので、
おかんに
Aの手を握るように、言った。
一緒に連れていかれたら大変だと、思った。
そして、窓の横で、
「早う、出てけや!
他の人の所に、行ったらいいやん!!
うちは、絶対に、無理やしな!!
あんたの嫌いな犬、
うちにおるの、知っとるんやろ?
うちの犬ちゃんは、賢いからな、強いし。
下から、連れて来るか?
おとんから、離れてや!!
どっかに、行ってぇーーっ!!!」
私は、大絶叫だったらしく、
この話も、後におかんから聞いた。
separator
そして、少し後、
おとんが喋った。
「、、怖かった、、、」
何があってん!?と、家族は聞いたが、
「明日、、話すわ、、、」
と言い、1階に降りて行った。
separator
翌日、
おとんから、話が切り出された。
「昨日、寝とったら、夢見たんや、、、。
何か、すごい気持ちの悪い夢や。
そしたら、急に目の前に、
『死神』?
みたいな格好したやつが、現れてな。」
そして、おとんは、
そいつの絵を描いてくれた。
それは、
まさに『死神』だった。
黒いフードを被り、
その黒が果てしなく広がっていて、
目は小さく白い点。
私が見た、小さな白い点と似ていた。
そして、
まさかとは思うが、大きな鎌を持っていた。
「でもな、
おとんは、目をそらしたら、
絶対にダメやと思うて、ずっと睨んどったんや。
でも、もうダメかも知れんって、思った時、
Kとか、おかんとか、Aの声が聞こえて来てんて。
そしたら、
いつの間にか、Kが、おとんの隣におって、
『K、危ないし、帰れ!』
って言うんやけど、
Kが、そいつに向かって、
バーカ!バーカ!って言っとるんや。
それでな、
一瞬、Kか居なくなったと思ったら、
急に、おとんの前に立っとるんや。
そいつから、
おとんを守ってくれてるみたいにな。
おかんと、Aの、
『帰って来て』って声も聞こえとって、
しまいには、うちの犬も出て来てな。
威嚇するように、すごい吠えとったわ。
そしたら、
そいつの色が薄くなって来たんやけど、、、
そこから、おとんは記憶無いんや。
目が覚めて、自分を落ち着けようと、
タバコを吸いに行った所からは、
覚えとるんやけどな。
、、、、、、。
、、みんな、ありがとうな、、、
おとん、どうなっとったんやろな?」
そこで、その話は終わった。
separator
そんな事があったにも関わらず、
相変わらず、おとんは頼りなく、
そして、性懲りも無く、ゴルフに行く。
(ここまで来ると、
さすがに、頭が腐ってんじゃないかと思う。
脳みそが、普通の人の半分しか無いとか?
だから、歳食ってハゲたんだね〜 プププッ。
せっかく、
キレイな奥さんと、結婚できたのに。
この、ド阿呆めがっ!!
あ、うちのおかんは美人なんです。
私は、残念ながら、似てないです 笑。)
separator
あの出来事以来、
おとんには何も起きてはいません。
私は、ホラー映画観といて良かったーと、
思う反面、
7、8歳の子供に、全てを委ねるなっ!
と言う、
よく分からない葛藤が、残る出来事でした。
この話を書くにあたり、
色んな事を、久しぶりに思い出しましたが、
あの変なヤツが何だったのかは、
分かりませんし、
一歩間違えれば、
おとんは、連れて行かれたのだろうか、
と、今更ながら恐怖を感じます。
もしかして、この頃から、
一か八かの大勝負的な、
勘に頼るやり方をしていたのでしょうね。
そして、
何故、おとんが標的にされたのか。
日頃の行いの悪さですかね 笑。
作者退会会員
かなりの方言です。すみません。
解釈出来ない方、質問受付中です。