冬もそろそろ終わりそうな季節
真向いの家の解体がそろそろ終わりそうだ
まぁ・・いろいろ現象が起きた
この家の息子が「もう・・・ちょっとね・・この実家には戻れないよ・・・
解体工事を来週からします・・・工事の間、色々とご迷惑をかけますけれどよろしくお願いします」と挨拶にきてくれた
およそ3週間ほど解体工事で昼間はすごい騒音だった
その真向いの家の隣のアパートの人たち、特に夜勤者は地獄だったろうなと思う
私の地区というか道路を境にしている
6件の家が建っていた(その中にアパートもあるけれど)
ここ2~3年の間に3軒ほどの家が解体されてそこのところは更地になっている
老夫婦が多くみんな息子や娘の家へ引っ越していった
一気に見晴らしがよくなり騒音が余計に聞こえるようになった
家のすぐ隣が国道が走っていて午前0時ごろまでは騒音地獄だ
電車帰りの人が多くて最終電車が終わるまでが地獄だ
本当に寂しい
私やF子はいろいろとかわいがってもらえた
お菓子やジュースなどもらったこともあった
さて・・・そのアパートのJさん
真向いの解体が始まる頃にアパートへ引っ越してきたみたい
私が朝に会社へ行くときにパタリとあった
お互いに何気なく挨拶をしたのが付き合いの始まりだ
工場勤めで夜勤が多くたまにしか会わない
年は25歳くらいなのかな
独身だ
両親はもう当の昔に死去されていた
たまに私の家へ遊びに来る
やはり一人だと寂しいのだろう
うちから子供たちの声がよく聞こえていて「賑やかでいいですね」と言ってくる
「それじゃあ、夕食を食べに来て」と誘ったのだ
はじめはびっくりして拒否をしていたけれど私が強くすすめたので最後には「はい」となった
性格はS君とよく似てる
快活で話が面白い
S君との初対面の時にふたりとも同時に「おう!兄弟」と挨拶をした
お互いに「え!」という顔になりまじまじと顔を見ていた
余りの可笑しさに二人は笑った
それ以来、S君とJさんは大親友になった
Jさんも実家に一人で暮らしている妹さんがいる
たまに心配になって実家へ帰って妹の様子を見に行くとか
その妹さんがアパートへ来たのだろう
二人揃って夕方、家に来た
「こんばんわ・・・」と玄関から声がした
3人娘が走って行って玄関を開けた
「こんばんわ・・・楓ちゃん、葵ちゃん、カナちゃん・・・」
「わ!!兄ちゃんだ!!パパ!!!兄ちゃんが来たよ」と楓の大きな声
Jさんは夜勤から帰って寝るまでなかなか寝付けなく外に出て煙草を吸うのが日課みたい
葵とカナちゃんが庭で遊んでいるのを見るのが楽しみになったと話してくれた
たまにお菓子やジュースを手渡してくれていた
「一応・・・俺・・監視役な・・・夕飯を食べさせてもらってるから・・・何かあったら俺が助けに行くぜ」と言ってくれた
3人娘もすごくなついていて「兄ちゃん」と呼ぶようになった
本当に助かる
義理母が家に来るまでの間は2人しかいない
本当に心配なのだ
1時間でもJさんが見てくれれば安心だ
「こんばんわ~~」とJさんの後ろから女の人が出できたので3人娘たちはびっくり
「わ・・・びっくりしたんだぞ!!」と葵の大きな声
「ご・・ごめんね・・脅かすつもりはなかったのよ、ごめんね」と頭を下げた
3人娘に案内されて2人はリビングへ来た
「兄がいつもお世話になっています、妹のJ子です・・」と女の人は挨拶をした
みんな一斉に振り向いて・・・目が点になった
「おい・・F・・・Jの妹、むちゃ、かわいい」とS君は私に小声て話してきた
「え・・おいおい・・隣にF子いるぞ、聞こえたらどうするんだよ」と小声で注意をした
「あ・・・あかん・・・そうだった・・・」と下を向いてしまった
確かにかわいい
現役の女子大生だそうだ
「さぁさ、立ってないでここへお座り」とおふくろが2人に座るようにと優しく語りかけた
「はい・・・」と2人は椅子に座った
「さぁさ、夕飯だよ!!おチビちゃんたち、お皿とコップ、持ってきておくれ」
「わかったんだぞ!ばっちゃ!!」と葵の大きな声
3人娘たちは手際よく台所からお皿やコップを運んできた
S君と私はソファのテーブルで食事をとることにした
私はF子とJ子さんが隣同士に座ったので女同士のバトルが始まるんじゃないかと心配した
ところが以外にF子がJ子さんと話してる
二人とも初対面なはず
S君も2人の様子が気になってみていた
「おい・・F子が楽しそうに話してるぜ、びっくり」とS君は私に話しかけてきた
「たしかに・・・珍しいというかこんなのはじめてみたよ」と私もびっくり
F子は初対面の人とはほぼしゃべらない
それが今、目の前で普通に話してる
私とS君がJ子さんをあまりにも見ているのでF子が
「アニキたち!何、ジロジロ、見ているのよ!乙女を見ちゃダメでしょ!」とジロリとにらむF子
「あ・・いや・・・別に・・というか」とS君のいつもの言い訳
((あかん・・・S君・・・言い訳したらダメ・・))と私は内心思った
「おっちーー!!乙女を見たらダメなんだぞ!アニキたち」とS子まで文句を言ってきた
一同・・・大笑い
にぎやかな夕食になった
「お~い、俺様が帰ってきてやったぞ」と玄関から声がした
妹のJ子さんが玄関へ行った
「大丈夫ですか?」とオヤジに話しかけた
「ウィ・・・F子ちゃん・・・今、帰ってきてやったぞ」と顔をあげた瞬間
「あ・・・やっちまった・・ウィ・・・家を間違えちまった・・・」といいながら玄関を出て行ってしまった
「あのぉ~~今さっき・・「家を間違えた」と言って知らない人が出て行ってしまったのですが・・」とみんなに言うと
「え・・J子、おやっさんだよ!」とJさんが慌てて玄関へ行き表へ出た
オヤジ・・・側溝の溝に足がはまって座り込んでいた
「お、お、おやっさん、大丈夫ですか」と言うと肩に担いで玄関まで運んでくれた
「みっともない・・・あんた、さっさとお上がり!何酔っぱらっているのさ、臭いわね」と怒り顔のおふくろ
「うるせぇー!うわっ!うちに関取を呼んだ覚えはない、帰れ!!」とオヤジの怒鳴り声
(うわっ!!オヤジ、その言葉は禁句だぞ)
JさんとJ子さん以外は全員、固まった
カナちゃんまで固まった
「あ!ん!た!!、今、何を言った?」とおふくろのでかい声
「「関取」と言ったんだよ!」とオヤジ
「あんた・・・仏間へ行こうか!!」とおふくろはオヤジを連れて仏間へ連行した
仏間からものすごい説教
「じっちゃ・・・とうとう今晩・・・お葬式だね、パパ」と楓が心配そうに私に話しかけてきた
「おいおい・・・楓・・・」と私は楓を見つめていた
「葵ちゃん、カナちゃん・・・立ってないで椅子に座って」とF子が2人の娘に優しく言ってくれた
1時間後、ヨロヨロとオヤジがリビングへ来た
ソファに座り込み下を向いたまま
相当おふくろの説教が効いたのかな
オヤジがよそで酒を飲んで帰ってきたということは今日のお昼の商店街の会合で何かあったに違いない
おふくろもリビングへ戻ってきた
やつれた顔
JさんとJ子さんは困惑した顔になっていた
「今日は・・・もうそろそろ・・・帰りますね」とJ子さんがJさんを連れて立った時に
「いやいや・・・大丈夫ですよ、いつものことなんて、もうちょっとゆっくりしていってください、せっかく妹さんが来てくださったんでゆっくりしていってください」と私は2人を引き留めた
「でも・・・」と困惑した顔のJ子さん
「巧兄ちゃん、2階へ行こうよ」と仁が巧を誘ってそそくさと2階へ行ってしまった
「おれ・・仏間へ行くわ」とオヤジの声
ヨロヨロと立ち上がりリビングから出て行った
少し落ち着いてきた
JさんやJ子さんの小さい時の話や思い出話などでリビングは賑やかになった
時間もそろそろ午後11時を過ぎた
「そろそろおチビちゃんたち、仏間へ行こうね」とおふくろの声
「ばっちゃ!もう寝るんだぞ」と元気のいい返事で葵を先頭に3人娘は仏間へ行った
「本当にかわいい!!」とJ子さんは3人娘を見ていた
「さぁ、俺たちも帰ろう、J子」
「ええ・・・兄さん」
「ちょっと待って・・家に泊まっていけばいいと思う」と私
「いや・・家、すぐそこだから」と苦笑いのJさん
あ・・そうだった・・・すぐそこだった
兄妹の2人きりにさせてあげないと・・・
二人は挨拶をして家を出て行った
「さて・・・Sアニキ・・・私たちも帰ろう」とF子
「そうだな・・・帰るか」とS君
「アニキ!帰るね、明日、早くに撮影をしなくちゃいけないから、ママ、S子姉さん、アニキ、また来るね」とバイバイをしながらリビングから出て行った
私とS子とおふくろだけになった
話すネタがない
「わたしは仏間へ行くよ」とおふくろは出て行った
「パパ、眠くて仕方ない、先に寝るね」とS子
私は全然眠くない
少し庭へ出てみた
まだ夜間は肌寒い
ふとアパートを見た
どの窓にも明かりが点いていない
Jさんか借りている部屋はどこなのかわからないけど全部屋明かりは点いていない
もう寝たのかな・・・それとも2人でどこかへ出かけたのかな・・・
やはり寒い、外にいると風邪ひきそうだ
早々に中へ入った
リビングへ戻りTVをつけた
いつのまにか寝てしまったようだ
あれ以来、Jさんは家に来なくなった
朝もJさんを見ていないと葵がそう言っていた
どうしたんだろう?
何かあったのかな・・・
しかし、アパートの部屋がわからない
おふくろに頼んでアパートの管理会社にJさんのことを聞いた
驚くべきことになった
夕飯時におふくろがJさんについて話し出した
「今日ね、アパートの管理会社に問い合わせたのよね
そしたら・・・あのアパートは誰も借りていないということなのよ」と驚いた顔のおふくろ
「え・・・アパートってだれも住んでいないの?」と私はびっくりした
「そうなのよ・・・たしかに人の気配はしないものね・・それで、あのアパート・・・来月に解体する予定だと言っていたわ・・・」
「いや・・ちょっとまって・・・じゃあJさんは・・・あのアパートの住人じゃなかったんだ・・・どこに住んでるんだろ・・」
「さぁ・・・わからないわね」
どういうこった
一体Jさんはどこに住んでるんだ
あれ以来全然家に来ない
朝も見かけない
これはJさんの実家に聞いたほうがいいのかな
幸い思い出話などで住所や周辺の状況を話していた
Jさんが言っていた住所を調べて電話をしてみようか
早速次の朝にJさんの実家へ電話を掛けた
「え・・・J?・・・はい・・・たしかに私の息子ですけれど・・・」
私は今までの経緯を詳しく話をした
「ええ・・・それは・・・どういうことでしょ・・・ちょっと意味が分からないです」と言う何かモヤモヤした返事だ
「ちょっと話がよくわらないです・・・なぜ私の息子があなた様の家へ行ったのでしょう・・・おかしな話ですね・・」という返事
おかしな話?・・・・そうかな・・・
どうも・・・話が噛み合っていない
いくら説明をしても似たような返事ばかり
「すいません・・・直接行って説明をしたいですけれど」
「いや・・・ちょっとそれは・・・困ります・・・」と困惑した声
拒否されて電話を切られた
これは・・・何かおかしい
何かを隠しているような気がする
これは確かめたほうがいいかも
オヤジとおふくろに電話でのやり取りを話しをした
「まぁ・・得体のしれない者からいきなり電話がかかってきて息子のことを話し出したら気味が悪いよな・・・」とオヤジは頷いていた
「こりゃ・・・オヤジ・・・行ってみるしかないよ」と私
「そうだな・・・せがれ、明日、一緒に行ってみるか」とオヤジは無表情の顔をして何かを考えているようだ
明日になり
早速Jさんの実家へ行った
Jさんの母親はびっくりした顔になっていた
オヤジが母親に事細かく説明をした
しぶしぶ家へ上がらせてもらうことになった
案内されていく途中で・・・和室のある部屋の襖が開いていた
何気なくその和室の部屋を見て私は立ち止まった
「どうなされました?」と母親
「いや・・そのぉ・・・あの位牌は誰のですか?」と私は失礼ながら聞いた
「あれは・・・私たちの子供たちですよ・・・もう20年前になりますわね
2人とも・・・幼稚園へ行く途中で・・・」と母親は顔を手で覆い泣き出した
「す、す、すいません・・・もう・・幼稚園へ行く途中で車にはねられてね・・
2人とも即死でした・・・・まだこれからだというのに・・・ほんとうに・・・かわいそうで・・・JとJ子と言います・・・5歳と3歳でした・・・」
私とオヤジはその場でヘナヘナと座り込んでしまった
そんな・・・ばかな・・・もう亡くなっていたとは・・・じゃああのJさんとJ子さんは誰なんだ?・・・大人になったJさんとJ子さんなのか?・・・・
私はJさんたちが来たあの晩のJさんやJ子さんと私の子供たちの楽しい夕飯時の時の様子を写した写真を母親に見せた
母親に見せたとたんに大泣きになった
「た・・たしかに、面影が残ってます・・・2人とも・・・そんな・・・でもこの笑顔は・・」と言いながら母親は座り込んでしまった
しばらく沈黙になった
「す、すいません、確かに私たちの子供たちです・・・もうあれから20年経ってるんですよね・・・もう大人になっててもおかしくはない・・・いいものを見せてもらいました・・」と母親は立ち上がって一礼をした
「私たちもまさか・・・まるでそのぉ・・・生きてたんですよ・・・とても亡くられているとは感じませんでした・・・まさか・・・」と私もすこし涙目になった
「そのぉ・・すいません・・位牌にお線香をあげたいのですが・・」と私は母親に頼み込んだ
「はい、どうぞ、これも何かの縁でしょう・・・どうぞ線香を子供たちにあげてください」と言ってくれた
オヤジと私は位牌に線香をあげた
「安らかに眠るんだよ、Jさん、J子さん」と私は小さな声で言いながら私は線香をあげた
作者名無しの幽霊
いやはや・・・もうびっくり
昼間の出来事を夕飯時に話をしたら全員が口を開けたまま・・固まっていた
無理もない
あの晩に来たJさんやJ子さんが幽霊だなんで誰も思わなかった
特に葵はすごいショックを受けた
「兄ちゃんが幽霊だなんであたちは信じないんだぞ!!お菓子やジュースをもらったんだぞ、面白い話をたくさん聞いたんだぞ、パパ!!!悪い冗談は顔だけにするんだぞ」と葵は大泣きをした
「いや・・顔!?・・・冗談で言ってないよ、葵・・・すべて事実だよ」と私は葵を抱き上げた
今日の夕飯は葬式みたいなシーンとした夕食になった
縁は縁でもこういう縁での出会いはもうしたくない