短編2
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カラスが見てる

N美は、よく動物を虐めていた。

猫や犬、小鳥、ネズミ、虫。

自分より小さい弱い生き物たちを虐めた。

そんなN美は、カラスが嫌いだった。

彼らは、大変賢く。

虐められたことを忘れない。

N美の幼馴染がそんなことを言っていた。

その忠告を無視し、かつて彼女はカラスに石を投げたことがあった。

仕返しとばかりにカラスは、N美を追いかけつつきまわした。

N美が、中学に上がった頃気弱そうな同級生の女の子

を虐めた。

気に食わなかった。

気が弱いくせに、いじめはよくないと動物をいじめるN美に食ってかかった。

毎日、毎日。

生卵をぶつけたり、バケツの水をかけたり、机を隠した、しかし。

ある日のこと。N美は、いつも通り学校へ行くと

気に食わないあの女がいないことに気がついた。

全校集会で、校長が悲しそうに告げた。

K崎D子さんが、自宅で自殺していたのをご両親が発見されたそうです。

と。

N美の中で、嫌な思いがぐるぐる回る。

これは、最早。自分が殺したも当然ではないか。

N美は、違うと心の中で否定する。

あいつが勝手に死んだんじゃないか。

自分は悪くない。

カァー。

カァー。

不意に。

大嫌いなカラスの鳴き声が耳に入る。

カラスが数羽こちらをじっと見ている。

まるで。

N美のことを責めているような目だった。

その目が嫌いだった。

死んだD子と同じ目だった。

(ユルサナイ。ユルサナイ。)

(ボクラノトモダチ、オマエコロシタ)

(ゼッタイユルサナイ。フクシュウシテヤル)

カラスたちの声が頭に響いた。

N美は思い出した。

D子は、カラスとよく遊んでいた。

カラスもD子の言うことを聞いていた。

N美が、固まっていると一匹風変わりなカラスが

こちらをじっと見つめていた。

それは、血走った人の目をしていた。

カァーーーーーーーーーーー!

其奴が一度大きく鳴くとN美は気絶した。

周りの生徒がびっくりして、

近づくとN美は取り乱し逃げ出した。

その後も、N美は奇声を上げ意味のわからないことを言い続けた。

「カラスの化け物」

と。

その後。

N美は、精神病院に入院していたが。

何度も脱走しかけた末に

三年後。

病室で遺体で発見された。

その死体の有様を見て警察は

「まるで、鳥に啄ばまれたようだ」

と話していた。

カァー。

その様を見たカラスが一羽、

飛び立ったのを刑事が見ていた。

そのカラスの目は、まるで人間の目だった。

と彼は言った。

N美の遺体を見た

幼馴染の彼は一言こう言った。

「だから、いじめるなって言ったのに。

カラスは仲間を大事にする動物だから。」

と言い残しその場を去っていった。

カラスたちにとってD子は、偉大な母だったんだよ。

彼の言い残した言葉は最早喧騒にかき消されて、

霧散した。

Concrete
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