短編2
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黒猫が見てる

黒猫は不吉。

それは、はるか昔から続く迷信だ。

隣の席のN君と僕は話していた。

すると、S君が間に割り込んでこんな話をした。

「黒猫は不吉だ。」

N君は興味なさげに本に視線を向ける。

僕は、苦笑するしかなかった。

それには理由がある。

S君は迷信やオカルトが好きだ、

好きな分にはいいのだが。

その考えを他人に押し付けたり、

動物を虐めたりするのだ。

「嘘だね。僕も、黒猫にあったし横切られたけど

不幸なんてないよ」

N君が切り捨てるように言うと、

S君はN君に罵詈雑言を吐いて自分の席に着いた。

「大丈夫?」

平気だよ、とN君は何食わぬ顔で答えた。

知ってるかい?

N君は僕に話しかける。

黒猫が不吉というのは迷信だ、しかし悲しいけれど

信じてるが故に罪のない命が葬られてきたのも事実だよ。

けれど。

猫が不思議な生き物であるのは同意だね。

猫は長く生きると猫又になるという話も聞くしね。

「猫に限らず命をいたぶるものにはそれ相応の罰がある、という話さ」

僕は、少し怖くなった。

何気なく教室のベランダを見ると、

黒猫が一斉にこちらを見つめていた。

一匹が僕とN君を見てにゃーん、と可愛らしい声で鳴いた。

「ほら、ご覧よ。どこが不幸になるんだい?」

「わぁ、可愛いね。むしろ幸せだよ」

僕とN君は、その黒猫の可愛らしさに夢中になっていただから気がつかなかった。

他の黒猫がじっとS君を睨みつけていたことに。

数日後。

S君は、いきなり道路に飛びだしクルマに轢かれて

亡くなった。

これは、後から聞いた話だが

S君は黒猫の迷信を信じており、事あるごとに

黒猫を虐めていたそうだ。

ある日のこと近所に住む黒猫の親子にボールを投げつけた、何回も何回も彼らが動かなくなるまで。

親子は死んでしまったそうだ。

その日から、S君はどんどんおかしくなった。

うわごとのように黒猫は不吉だ、と言い続けた。

そして。

事故の3日前から、

S君はまるで猫のような声を出し、

四つん這いで動き、

食事も猫のように食べ、

風呂も嫌がるようになった。

まるで猫の様に。

N君が言っていた。

「猫はいじめない事だ。猫はいじめられたことは

忘れないからね」

早く帰ろう、と急かすN君を追いかけながら

僕はちらりとS君の事故現場を見る。

黒猫が、にゃーんとひと鳴きした。

余談だが、S君が亡くなったあの事故現場には

黒猫の親子がS君を見つめていたそうだ。

Concrete
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