長編8
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取り替え時

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誰しもが、

日常的に使っている物を、

取り替えたり、、買い替えたり、、

そのタイミングが分からなかったり、、

中々、

捨てる事が出来ない物が、あると思う。

(そうじゃ無い方も、

いらっしゃるかも知れません。

"断捨離"

なんて言う言葉も流行ってましたからね。)

私の男友達は、

それが

『下着のパンツ』

だと言う。

銭湯に、友人と行っても、

「そんなボロボロなパンツ、

履いとんの!? 新しいの履けやー」

と、言われるし、

奥さんが、

新しいパンツを買って来ても、

前からある、ボロボロなパンツを、履くのだそうだ。

1度、奥さんが、

" ボロボロのパンツを、全部捨てる "

と言う、大事件が発生し、

彼は、

かなり、ブチ切れたそうで。

(、、、

書きながら、段々と思ってきたのだが、

何なのだろうか、この話は、、、)

とにかく、

捨て時が分からず、

中々、捨てられないのだそう。

私にとっての、

それは、

『歯ブラシ』

毛先が広がっているのに、

中々捨てられず、取り替え時が分からない。

しかし、結局、取り替えてみると、

次の瞬間には、

捨てた歯ブラシの事など、

記憶の遥か彼方だ。

存在すら忘れている。

あんなにお世話になったのに、、、。

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ある知り合いから聞いた話。

昔、私の地方で、こんな事があったそうだ。

当時、中学1年生だった男の子。

( 仮にMとします)

M君は、小学生の頃は活発で、友達も多く、

人気者だった。

少年野球に入り、

そこでも活躍していたそうだ。

『将来の夢は、プロ野球選手。

松井秀喜みたいになりたい。』

松井選手は、石川県の出身で、身近に感じられ、

松井選手の活躍ぶりも

凄かったので、憧れるのは当たり前だ。

そんなM君だったが、

中学校に入って、半年くらい経った頃から、

様子がおかしくなったと言う。

そのうちに、学校に行かなくなり、

部屋に引きこもるようになる。

母親は、

" 学校でイジメに合っているのでは? "

と、何度も、何度も、学校に足を運んだ。

しかし、

「いくら調査しても、

" M君がイジメにあっている "

と言う証拠は、何一つ出てきません。

精神的な病院に、

相談されてみたら、どうですか?」

学校側からの対応は、

毎回、毎回、同じだった。

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それから、M君の状態は、

更に、エスカレートして行き、

母親が、何か言おうものなら、

暴れ出し、時には暴力をふるった。

父親は、仕事に忙しく、

M君には、全く興味を示さなかったらしい。

母親に言われて、M君と話をしても、

結局は、

怒鳴り散らして、終わりだったそうだ。

旦那は頼れない。

母親は、完全に限界だった。

すでに精神崩壊していたのかも知れない。

既に、M君は部屋から出て来なくなっていた。

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ある晩、

夕飯をM君の部屋の前に届けに行った時に、

それは起こったそうだ。

「M、、、?

夕飯、ここに置いとくし、、ね、」

母親が、そう声を掛けて、

立ち去ろうとした時に、

急に怒鳴り声が聞こえて来た。

「お前の飯は、

いつも、いつも、不味いんじゃっ!!

〇ックか何か、買って来い!!」

その言葉に、母親は、

完全に冷静さを失い、今までの我慢が、

一気に出てしまった。

「あんたが悪いんやろ!?

学校にも行かんと!!理由聞いても、言わんし。

お母さんが、どんだけ辛い目に合っとるか、

あんた、分かっとるんけっ!?

近所の人にも、変な目で見られて。」

1度、言ってしまうと、もう止まらない。

そうして、

絶対に、

言ってはいけない事を言ってしまった。

「お母さん、

あんたみたいな子供、いらんわ!

優しい子が、欲しいわ。

交換できるんやったら、

他の子と、取り替えたいわっ!!」

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その夜、、、

M君は、自殺した。

遺書も何も無かった。

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次の日の朝に、いつもの様に、

母親は、M君への昼食を運びに行った。

( M君はいつも、昼過ぎまで寝ていたらしい )

母親が呼び掛けても、

返事が無い。

(あぁ、今日は機嫌が悪いんやな、、)

そう思い、立ち去ろうとした時に、

母親は、部屋のドアの隙間に

紙切れが挟まっているのに気付く。

何気なく手に取る。

愕然とした。

『とりかえれば 』

何とかドアを開けて、中に入ると、

そこにはM君の変わり果てた姿があった。

( どのような方法で、

自殺をしたのかは、分かりません )

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それから2、3日後。

帰宅した父親が言う。

「最近、Mは、どうなんや!?」

かなり不機嫌に聞く。

母親は、少々困った顔をしながら、

「私、、分からんくて、、、」

「何をや? Mの事でか!?」

「いやぁ、分かっとるんやけど、

タイミングがなぁ、、分からんくてねぇ。

何処をどう、取り替えて良いんか、、、」

父親は、

母親がおかしい事を、何となく察した。

急いで、M君の部屋に向かう。

ドアを開けた瞬間に、

父親は、鼻を腕で覆った。

魚が腐ったような、

それ以上の、恐ろしく生臭い匂い。

変な虫が、飛んでいる。

部屋は、真っ赤だった。

その赤が何なのか、

そして、

明らかにM君が死んでいる、と言う事は、

父親にも、瞬時に分かった。

M君は、血まみれの顔で、

両方の目玉がなく、両方の耳も無く、

開けっ放しの口からは、

血を垂れ流している。

舌らしき物が、口の端からはみ出ている。

まさに、皮一枚だけで繋がっていた。

そんな状態の頭部だけが、、、

枕に寝かされていた。

そして、

両腕、両足は切断されており、

血まみれの床に落ちている何本かの歯、、。

頭皮がこびり付いた、無数の髪の毛。

そして、性器、、、らしきもの。

父親は、

思わず嘔吐してしまった。

よく見ると、

ペンチやらノコギリ、アイスピック、

包丁やキッチンバサミ、中華包丁、計量スプーン、

そして、枝切り鋏、、、。

など、M君に対して使われた道具が、、

それらが、床に、

きちんと綺麗に、気味悪く並べられていた。

時間が経っていたのか、

固まって、どす黒くなっていた血もあった。

「おぃっ!!

お前! これはどう言うことやっ!?」

「いやぁね〜、

Mも、取り替えれば?って言うしね、、、。

ほら?」

母親は、あの紙切れを父親に見せた。

「、、、?

取り替えるって、、何の事や?」

「私も、Mに言ったんですよぉ?

新しいのと取り替えんなんね!って。

古くなって、使い心地が悪いから、って、

私は、ずぅっと、、、

そう思ってたんですよ?

でも、、

取り替え時が、分からんくて、ねぇ、、?

だから、

いつ、捨てれば良いんかも分からんし、、。

どこを、どう、取り替えれば良いのかも分かりませんし。

とりあえず、取り替えやすいように、

こうしてみたんですけどねぇ、、。

この方が、取り替えやすいでしょ?

次が、女の子でも良いですしね!

イヤだっ!私ったら、、恥ずかしい、、、。

私とMは、

あなたに迷惑ばかりかけて来たから、、、。

あなたは、そんな家がイヤで、

あまり家に帰って来なくなったんやよね?

だから、私も役に立ちたくて、、ね?

ふふっ、、、。

あっ、お父さん!

そう言えば、

脳みそも取り替えたいんやけど、、、。

頭蓋骨って、硬いんでしょう?

テレビで観たんやけどねぇ、ふふふっ。

一応、チェーンソー買って来たんで、

あなたが、やって下さいね?

お父さんだって、

早く新しいのと、取り替えたいでしょう?

まぁ、取り替え時は、

お父さんが決めて下さいよ、ね?

それで、、、

古いの捨てたら、

新しいのが必要でしょうから、、、。

次の、お父さんの休みの日にでも、

新しいの買いに行かんと。

私だけで決めると、また失敗しますから!

一緒に行って下さいねぇ?

アハハハ、、、!!

ヤダ、ヤダ、

きちんと商品の裏の説明書き、見んとねぇ。

自分に合っとる物なんか、どうか、

分からないですからね。

ほんっと、私ってそそっかしいわぁ〜!

やし、お父さん?

次の休みは、空けといて下さいね。

新しい物って、ウキウキしますねぇ、、!!

ねぇ、、、お父さん?

うふふふ、、、」

次の瞬間、

父親は警察に電話をしたらしい。

それで、この事件が明るみに出たらしく、

母親は、

死体遺棄、過失致死罪、死体損壊、、、

などの罪で、逮捕されたらしいのだが、

精神鑑定の結果、母親に心神喪失が見られた事により、減刑となったらしく。

( と言う、知り合いの話です。

私は、ちょっと分からないですし、

しかも、刑事事件などは疎いので。

肝心な所を、、、すみません。

しかも、

判決が、かなり長引いたらしく。

とりあえず、人伝の話なので、

説明も合っているのやら、分かりません。)

たまたま、

話をしてくれた知り合いが、

この事件の事を詳しく知っていたのか、

もしくは、私を怖がらせるための、

でっち上げの話なのか。

( わざわざ図書館に行って、

過去の新聞を閲覧し調べる程、

私はヒマじゃあ無いですし、

それが事実だろうが、そうでは無かろうが、

正直、私にしてみたら、

どうだって良い事でしたので。

本当に、このご家族が存在するのであれば、

大変に申し訳無い事ですが。)

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今回は、

知り合いから聞いた話に基づいて、

かなり、脚色を混じえたお話です。

取り替え時、買い替え時って、

古くなった、、

使い心地が悪くなった、、

そう言った理由から、

以前の物を捨て、

新しい物を、手にする事ですよね。

しかし、

そのタイミングが掴めない方も、

多いのではないでしょうか?

「あー、まぁ、明日で良いや、」とか。

「捨てたいんだけどなぁ、

新しい物に、取り替えたいんだけどなぁ。」

そう思いながら、長引いたり、、、。

それと、この話を、

一色単にするつもりは無いのですが、

私は、

M君も、そして、母親も気の毒に思います。

( 父親は、阿呆ったれですが )

M君のように、母親の、たった一言が、

引き金になる場合もあります。

『自分で、自分を捨てたい』

『自分の事を取り替えたいのなら、

そうすれば良い、、、』

私は本人では無いので、

そのツラさや苦しみは分かりませんが、

私自身でも、

『自分を捨てたい、、、。

自分を取り替えられたら、、、。』

と、その気持ちは分かります。

変に思われたら、困るのですが、、。

その『いつ』は、

誰にも分かりません。

他人でも、自分でも、

いつ、襲ってくるか分からない、

捨てたい衝動。

取り替えたい衝動。

結局の所、

私には、この話の真相は分かりませんし、

実際はどうだったのかも分かりませんし。

ただ、、、

M君が書いたと言う、紙切れの文字だけは、

事実だそうです。

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@さとる
さとるさん、コメントをありがとうございます!
全然、素晴らしい話では無いのですが、、、。
でも、
あの、さとるさんに、
そう言って頂けて、
あひるは嬉しい限りです!!
さとるさんの作品は、いつも独特な怖さや、
不気味さがあり、
読んでて、かなりゾッとします。
ここに繋がるのかぁ、とか、
よく、こんな表現出来るなぁとか、
選ばれた単語や文章が、凄いなぁとか。
勝手に学んでおります。
また、さとるさんの作品を、楽しみにしております!!

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