中編5
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楽する道、、、?

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これは、ある男の話。

男は、非常に貧しく、

食べる物も無く、棲む所も無く、

その日暮らし、とも言えない生活だった。

そんな生活に耐えきれなくなり、

ある日、男は自殺しようと考える。

死んでしまえば、

空腹や、寒さ、、、

何もかもから、解き放たれるのだと。

ある森へ行き、ある木に、

紐をぶら下げる。

それを選ぶには、

かなり迷い、

枝が、丈夫で無ければならないし、

そうして、

木の近くに、

地面よりも高い、何かが無ければならない。

そこから、空中へ歩く為の。

しかし、焦る。

自分が死にたいと言う、

この、強烈な気持ちが消える前に、

死ななければ、、、。

やっと見付けた、

その、ある木の紐の輪に首にかけ、

切り株に足を乗せ、

1歩前に足を出そうとした瞬間、

男は思った。

(オレは今までに、

悪い事など、何もしてはいない。

盗み1つさえ、した事は無い。

なのに、

殺人犯でさえ、

刑務所で飯を食い、眠る所も与えられている。

こんな不条理な事があって良いのか、、、)

よく知りもしない、

安易な考えが、浮かんでしまったようです。

男は、首から紐を外して、

切り株から下りた。

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その後、男は、様々な罪を犯していく。

警察に、捕まりたいが為に。

刑務所に、入りたいが為に。

しかし、男は、元々臆病な性格でして、

1晩でも、留置所でも、

眠れる所さえ、あれば、、と。

だから、先程、犯してきた自分の罪を、

すぐに警察へ行き、自主申告した。

しかし、自首と言う事もあり、

しかも、そこまで大した罪でもない。

先程も言ったように、男は臆病だった。

ところがある日、

念願が叶い、

留置所で、1泊する事が出来たようです。

男は、喜び勇んだ。

留置所での生活を堪能する。

しかし、次の日には釈放された。

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男は、また罪を犯し、

留置所での生活を堪能する。

もはや、常連客だったんでしょう。

すると段々と、

罪を犯す感覚が、麻痺してくるのでした。

( このくらいなら、また留置所で1泊だな。)

昔は、1泊でも良いから、、、と、

思っていたのに。

そして、男は、考える。

刑務所に入れば、

留置所のような生活が、何日も続くんだろう。

オレにとっては、素晴らしい事じゃあないか。

刑務所に入りたい。

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そうして、また、男は罪を犯す。

臆病では無くなった。

人を殺してみた。

いつもなら、すぐに自主申告しに行く。

しかし、男は、考える。

1人くらい殺しても、

また留置所なんじゃないか?

オレは、刑務所に入りたいんだ。

男の感覚は、

大変に、麻痺してしまったのでしょう。

それは全て、自我、自分の欲望の為に。

自分が、、、。

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その後、男は、また罪を犯していく。

もう1人、まだ足りないな、

もう1人、まだ足りない。

もう1人、まだ足りないだろう。

もう1人、まだ、、、

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そんなある日、男の所に、男が来た。

「少し、お話をいいですか?」

男は、その男が警察だと思い、

それは、それは、喜んだ。

取り調べを受ける。

男は、意気揚々と話をした。

そして、裁判が開かれた。

男の罪名は『連続殺人犯』。

もはや、たまに飛び交う遺族からの罵りは、

男にとっての賞賛の声にしか聞こえなかった。

裁判中、

早く、早く、捕まりたい、

早く、早く、刑務所へ行きたい、と、

ワクワクしていた男に下された判決。

それは『死刑』だった。

「ちょっと待ってくれよ!

オレは死刑になる為に、

罪を犯していた訳じゃあ無いんだ!

ただ、刑務所に入りたかっただけなんだ!」

男の言葉に耳を貸す人は、

誰もいないのでした。

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その後、男の念願だった刑務所に入れた、

と、思ったのだが、

そこは拘置所だった。

しかし、数日後、

やっと、やっと、男の求めていたもの、

食べる物も、寝る所もある、刑務所に入れた。

死刑執行を待ちながら、生活する場所。

戸外運動もある。

刑務官も優しい。

しかし、刑務官は、

死刑執行命令が出るその時に備えて、

死刑囚を " 心身ともに健康な状態 " に、

保っておかなければならない。

自殺をされてしまえば、

刑の執行が出来なかった事になりますし、

自殺、自傷、逃走など事故防止のため、

天井に設置されたカメラで、

24時間監視されているのでした。

今では、

死刑執行は、直前まで明かさないらしく、

大きく取り乱したり、

自殺されてしまったりすると困るからだ、と。

そして更には、

死刑囚の中には、自由を拘束され、

死刑執行の恐怖に怯える状態が、

長く続いたことで、精神が不安定になる、

『拘禁症状』が出る者もいるのだとか。

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昔、誰かに訊ねた事がある。

「死刑って、酷い事をした人にとっては、

ラクじゃない?

無期懲役の方がキツいでしょ?」

「無期懲役とはね、

殆ど、存在しないに等しいんだ、たぶん。

仮釈放なども、あるしね。

しかし、、、

死刑の意味は、ちゃんとあるのだよ?

死刑囚は、毎日、毎日、怯えるんだよ。

何故かって?

刑務官の靴音が、

コツ、コツ、コツ、

と、聞こえる度に、死刑執行の言渡しを、

伝えに来たのじゃあないかって。

それは、それは、恐怖だろうよ。」

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その頃の ( 今も同じかも知れません )

死刑方法は、絞首刑だった。

死刑囚の身長と体重を測り、

同じ体重の砂袋を作って、何回も実験する。

踏み板から落ちた瞬間に、

衝撃で首が、30センチくらい伸びる事を考え、

ロープの長さを決める。

首が締まって死ぬのではなく、

脊髄が一気に切れるから、

痛みを感じずに死ねると言うらしい。

奇しくも、

遠い昔に、男が自殺しようと思っていた、、、

それと、同じ死に方だったようです。

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ある日、男は、

いつもの様に、

刑務所の自分の部屋のベッドで、

仰向けに横になっていた。

男は、考える。

オレの人生は、何だったんだ?

どこで、、、間違った?

あの頃は、食べる物も無く、棲む所も無く、、

だけど、

普通に食事をしたい、

屋根のある部屋で寝たい、、、

誰しもが、そう思うだろうよ。

そう思ったって、不思議じゃあ無いだろう?

オレは、限界だったんだ。

でも、、、自由だった。

そして、

自分の死を、自分で選択できた、、、。」

男の目から、自然と涙が溢れる。

怖い、

怖い、

怖い、

死にたくない、、、

死ぬのが、、怖い。

もはや、男は、取り憑かれたかの様に、

その恐怖に耐えらえなかった。

先程述べた『拘禁状態』なのかも知れない。

、、、

、、、、、、。

一体、、オレは、いつ死ぬんだ?

今日か?明日か!?

もう、イヤだ、、こんな毎日は、、、。

そんな時、

刑務官の、

コツ、コツ、コツ、

と言う足音が聞こえてきた。

男は、、、。

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