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長編10
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違和感

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自分の乗っている電車は動いていないのに、

隣の電車が進みだした時に、

あたかも、自分の電車が進み出したかの様に感じる。

違和感、、とも違うかも知れないが、

変な感じ。

部屋に居て、

何となく違和感を感じる時、その違和感を探す。

見つかる時と、

見つからない時もある。

例えば、

電池切れで、

何時間も前から止まっている壁時計。

カーペットの微妙なズレ。

トリックアートも、また、

その1つかも知れない。

壁に掛けられている絵を見つめると、

何となく違和感が生じ、

目が錯覚してしまうらしい。

見つめすぎると、

気分が悪くなる場合があるらしく、

その場合は目を閉じるか、

絵から離れなければいけないそうだ。

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『違和感』と言えば、

私が社会人になった頃、

その頃、

バリバリのキャリアウーマンであった、

2個上の先輩が、

休憩中にしてくれた話がある。

強い女の、代名詞的な彼女。

かなりの美人。

うーん、、今で言うなら、

ミラ・ジョヴォヴィッチ的な綺麗さ、

と言うのであろうか。

私生活では、

3つ年下の彼氏がいる、とは聞いていたが、私の、憧れだった。

仮に、

その先輩を、Aさんとしよう。

そんなAさんが、

数年前、高校時代の友人に、

家に招かれたそうだ。

急に、

携帯への、知らない番号からの電話。

Aさんは、仕事関係かも知れないと思い、

電話に出た。

「もしもし、、Aですが、、、」

「ちょーと、やだぁー!

Aったら〜! アハハハッ!!

私よ? わ・た・しっ!

高校ん時に、仲良かったYよっ!

元気にしてたァ〜?」

「あっ、Y!?

私は、元気にしてたけど、、、。

どうして私の携帯番号、分かったの、、?」

Aさんは、驚きと、

そして、少し気味が悪かったらしい。

「あー、ほら、

友達に、Hっていたでしょ?

彼女から、聞いたのよ〜!」

Aさんは、

( うん? 友人のHは知っているけど、

彼女が私の携番、知ってるか、、、?)

そう思いながら、

何となくAさんは、Yさんのくだらない話に、

適当に合わせていた。

段々、面倒臭くなり、

「あっ、主任に呼ばれてるから!じゃ、」

と、電話を切ったそうだ。

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その後、何度か、

Yさんからの着信があったそうだが、

無視していたらしい。

( 関わりたくない、、、)

正直、そんな気持ちがあったそう。

すると、

ある日、携帯を見たら、

" 着信 32件 "

となっていたらしい。

それらは全て、Yさんからのものだった。

Aさんが、

携帯番号を変えようと思った矢先に、

固定電話からの着信があった。

( 取引先の会社からかも、、、)

そう思い、急いで電話に出た。

「もしもし、△△会社のAですが、、、」

「やだァ〜、

ちゃんと、電話に出れるんじゃん?

何で、無視するのぉ〜?

ふふふ、まぁ、良いけどね。

Aはさ、美人だし、仕事も出来るし、

私なんかとは、大違いよねー。」

それは、、、

Yからの電話だったそうだ。

「だから、何?

何で、電話してくるわけ?

悪いけど、迷惑なんだけ、、、」

Aさんの言葉を、遮るかの様に、

Yさんが言った。

「あなたに、、

紹介したい人がいるの、よ!

私の、婚約者、、?

ヤダっ、私ったら、、恥ずかしい〜。

ほら、私達って、親友だったじゃない?

だから、ね?

会ってくれるかしらァ〜?」

Aさんは、最初は断ったそうだが、

執拗いYに対してら

『仕事も忙しいし、

今後、一切、連絡して来ない』

と言う約束で、

Yさんと、その婚約者に、会いに行く事になった。

( Aさんにしてみれば、

日頃のYからの電話が、

かなりのストレスになっており、

その2人に会う事で、

もう連絡が、来ないのなら、、、)

と、かなり限界だったと言う。

「じゃ、

次の日曜日に、、、場所は、、、

Aは、何時頃に来れる?」

「あ、あぁ、2時頃かな、、、」

「うんっ!分かったァ!

じゃ、楽しみにしてるねっ!」

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次の日曜日、

Aさんの足取りは重い。

しかし、車のアクセルを踏む、、、。

そして、敷地内に車を止めて、

足を動かせば、、、

自然と、Yさん家に向かってしまう、、。

( 少しの我慢だ、

挨拶だけ済ませて帰ろ、、、)

Aさんが、

インターフォンを押そうとした瞬間に、

玄関のドアが開いた。

「やだァ〜 A! 久しぶり〜!!」

久しぶりに見たYさんは、見違える程、、、

綺麗にはなってはいなかった。

高校時代から、お世辞にも綺麗では無かったが、

しかも、今は、

化粧を失敗したピエロの様な、変な化粧をしている。

、、、高校時代、、

お互いに本が大好きで、

ただ、それだけで仲良くなった。

そんな仲だったが、

Aさんには、大切な人だった。

勿論、

クラスの中では、AさんはYさんに

話しかけない。

YさんもAさんに、話しかけない。

察して頂きたいのだが、

AさんにはAさんの、YさんにはYさんの、

クラス内での、ヒエラルキーが存在していた。

( その上と下にいるのが、どちらなのかは、

何となく分かって頂けると思う。)

しかし、、、

仲良くなればなる程、、

Yさんの過剰な依存心、

過剰なまでの嫉妬、、、。

Aさんは、ヒエラルキー云々、関係なく、

1人の友達として、

少しずつ距離を取って行ったと言う。

Aさんは、下らない理由で、

友達を捨てる様な、そんな人ではない事を、私が良く知っている。

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「さァ、上がってぇ〜!」

Yさんの嬉しそうな言葉に、

「いや、Yの元気そうな顔も見れたし、

あっ、これ、つまらない物だけど、

ロールケーキ。婚約者さんと食べて?

じゃ、私はこれで、、、」

「えーっ!!

だって、婚約者にも会ってくれるって、

言ってたじゃァん!!」

Aさんは、正直、

これ以上、面倒事を起こすのは不味いと言うか、

怖いと言うか、、、。

そう思い、家に入った。

Yが、嬉しそうに言う。

「素敵な家でしょー?

私がプロデュースしたんだよッ!?

ちょっと待ってて?

今、ダーリン呼んで来るから!」

Aさんは、意味も無く何となく訊ねたらしい。

「Yって、視力悪かったっけ?」

何故なら、Yさんがメガネをかけていたから。

「あー、うん。

本とか読んでたら、視力落ちちゃってね、

だから、今はメガネ生活なのよ?

あっ、ちょっと待っててねェ〜、

ふふふっ。」

家に入った時から、何だか体調が悪かった。

通された応接室、、、。

何だか、違和感を感じる。

( やだ、早く帰りたい、、、)

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すると、2階から、Yさんと男性が現れた。

(!?)

Aさんは、一瞬、言葉を失った。

「あぁ〜!

Aさァ〜、彼が、あまりにもカッコイイから、

ビックリしたんでしょ〜?」

( いや、そうじゃあ無い、、、

この、人、、、)

「さ、座って!

今、お茶いれてくるから!

Aは、紅茶好きだよねぇ?

あーッと、ディンブラだったっけ?

丁度、茶葉あるし、ね?

あと、Aのお土産のロールケーキもっ!

待っててねぇ〜」

そう言って、Yは応接室を後にした。

急に、

「あ、あのっ、初めまして。

僕、R、、と言います。

Aさんの事は、いつも、いつも、

アイツから聞いてますよ。

すごく、美人で、すごく、良い人だって。」

「いえいえ、

それはYが、勝手に、、、。」

「今日は、

せっかく久しぶりに、Yと会えたんですし、、、

ゆっくりとしていって下さいね?

ね? Aさん?」

「お待たせしましたァ〜!

Aの好きな紅茶と、

そして、お手製クッキーですよぉ〜!!」

Aさんは仕方無く、

顔を引き攣らせながらも、

何となく話を合わせていたらしいのだが、

( 何なんだ?

この部屋の、違和感、、、)

と、気になっていた。

( しかも、ロールケーキは出さんのかっ!)

と、腹も立てていた。

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暫くの拷問の内、

「、、、あの、、おトイレお借りできる?」

耐えきれず、Aさんは、言ったそうだ。

「あぁー、部屋を出て左にあるよ〜」

「じゃあ、ちょっと失礼するね、」

そう言って、部屋を出た瞬間に、

Rの声が聞こえて来た。

「ねぇ、Yさァ〜、

Aさんってさ、美人だって聞いてたけど、

かなりブスじャね? ヤバくない?」

「ちょっとぉ〜 R〜?

私の親友に対して、それは酷くない?

許さないかんね〜?

でも、、、

まァ、ね〜、歳とったしか、な、?

クスクスッ、、

でも、彼女はプライドが高いから、

美人ですねぇ〜って、

嘘でも良いから、煽てといてよッ?」

そんな会話を耳にしつつ、

Aさんは、

( クソったれめがぁー!!) と、

かなり胸糞悪く、トイレに行った。

別に、用を足したかった訳じゃあ無い。

とりあえず、

あの居心地悪い応接室から、離れたかった。

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トイレに行くと、

洗面所、トイレの中、絵画が飾ってあった。

Aさんはまた、違和感を感じる。

自分が見れるとこ、全て見た。

そこで、ある事に気付いたと言う。

、、、、、、。

この絵、このトイレ、この鏡、、、

全部、、、歪んでない、、、?

しかも、私、

平衡感覚が、何だかおかしい。

吐きそうになって来た。

だから、体調が悪くなったり、

違和感を感じたの、、?

そして、Aさんは、

バレないように、至る所を写メに撮ったらしい。

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暫くして、何事も無かったかのように、

Aさんは、応接室に戻って来た。

Rさんが、

Yさんの指示通りに、Aさんを褒め始めた。

「いやぁ、Aさんって、

ほんとお綺麗ですよねェ〜!」

Aさんは、その言葉を無視し、

そして、

1枚の画像を、Rさんに見せたそうだ。

「これ、誰か分かります?」

「、、、いや、分からないなぁ、、」

「えっ?

ご存知無いんですか?

これ、オードリー・ヘップバーンですよ?

これは、これは、、、

大変に、失礼致しました。」

「いや、いや!知ってるよッ!!

当たり前じャあないですかっ!!

でも、、、

こんな顔、、でしたっけ、、、?」

その瞬間、

急に、Yさんが不機嫌そうに言った。

と、言うよりも、怒鳴り声に近かった。

「何で、いきなり、

そんな画像を、彼に見せるわけッ!?」

「別に、意味は無いけど?」

Aさんは、普通に答えた。

Rさんは、

頭を抱えて、何やらブツブツ言っている。

「チッ」

と、Yさんが、

軽く舌打ちしたのが、聞こえたそうだ。

そして急に、にこやかに、

「あら、

私ったら、やだァ〜、

Aは忙しいのに、長居をさせちゃったわね〜。

また、連絡するから、いつでも遊びに来て!

今度は、別の茶葉を用意しとくわね?

ふふふッ。

ほら、R?

Aが帰るから、挨拶して?」

Rさんが、何かを言う前に、Aさんは、

「じゃ、またね。」

と、家を後にしたらしい。

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「で、その後、どうなったんですか?」

私は、続きが気になり、

慌てふためいて聞いた。

「彼女からの連絡は、ピタっと止んだ。

ねぇ、Kちゃん ( 私の事です ) 、、、

これ、見て?」

Aさんから手渡された携帯を見た。

変な絵や、鏡、色んな物が、

何枚か写っていた。

見ている内に、気持ち悪くなってきた。

「Aさん、これ何ですか?

見てると、吐きそうなんですけど、、、」

「それは、Yの家のトイレ。」

「えっ、、、?

ヤバくないですか!?」

「うん。

でも、その後、、、

私が、Yの家に行った後にね、

1度だけ、Yから電話が来たの。

私は、電話に出てみた。

そしたら、彼女がね、、、」

『この前は、楽しかったわァ。

来てくれてありがとう。

婚約者にも会わせられたしね、ふふッ。

あっ、彼ったらね、可笑しい事言うのよ?

Aさんって、

美人なんじゃ無かったの?って。

Yの方が、絶対に可愛いのに、って!

あっ、ごめん!

惚気けちゃッた!!

、、、、、、。

まぁ、あれね、

あんたは美人で良いわよね、、、。

私が、どれだけ苦労して、

彼の感覚をずらしたか、、、

あんたには、

一生、分かんないんでしょうねッ!!

だ、か、らぁ〜、

邪魔だけは、しないでくれるゥ?

ね?

あんたは、

周りの下らない男どもに、チヤホヤされて、

下らない恋愛ごっこをしてりゃあ、良いのよ?

わ、か、り、ま、す、かァー?

ふふふっ。

あんたとは違って、

私には、真実の愛があるんだから!

、、、高校ん時から、

あんたには、心底ムカついてたんだよッ!!

美人で、皆の人気者で、

私と仲良くしてたのも、

優越感を味わう為だからだろうがっ!!

しかも、私の好きな人まで、、、』

「って、言ってきてね、

彼女、、、頭、おかしいよね?

だから、私は、

『、、Yさぁ、

あんた、ブサイクになったね、、、』

って言って、電話切ったの。」

「その後、Yさんは、、、?」

「え?

知らなぁい、知りたくも無いしね。」

私は、聞いて良いのか悪いのか分からずに、

でも、聞いた。

「あの、、、

Rさんって、

Aさんの元カレ、、、ですか?

そして、

Yさんが片思いしてた、相手、、、?」

「Yの家で会った時は、ビックリしたけど、

Yなりの復讐って言うのか、、、。

だから、絶対に私には見せたかったのよ。

Rは、私の事なんて、

分かんなくなっちゃってるし、

Yの変な洗脳?っつーか?

私もさ、高校ん時に、

まさか、YがRの事を好きなんて、全然、知らなかったから。

、、、。

ま、そんな事もあったなぁって話。

聞いてくれて、ありがと。

ほらっ、

Kちゃん、仕事戻るよー」

「あっ、はい!」

separator

その後、私は、

先程の話を思い出して、

かなり気持ち悪い話だと、改めて思った。

監禁事件とかになんないの?とか。

でも、Aさんの話だと、

Rさん自らが、

『外に出ると、体調が悪くなる。』

って、言ってたらしいし。

そりゃそうだよな、

家の中と外じゃ、

平衡感覚とか、全ての事がズレてんだから。

でも、

Yさん自身も、何かしら、

おかしくはならなかったのだろうか?

あっ、でも、Yさんが、

「視力が落ちて、今はメガネかけてるんだ」

って。

さっきAさんが、そう言ってたなぁ。

、、良く分からん、、、。

でも、

未だにAさんが、

あの写メを持ち続けているって事は、

何かあった時の、証拠にするのかなぁ。

、、、YさんとRさんは、

未だにあの家で、、

暮らしているんだろうか、、、。

、、、

、、、

、、、、、、、、、。

ま、所詮、

私には関係無いことだし、

知ーらない。

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