短編2
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スーパー銭湯にて

「宇宙遊泳…

それと…

阿波踊り…

今日から3日間、この二つには充分気を付けなされ。

さもなくば人生最悪の出来事が降りかかるであろう」

興味本意で訪れた占いの館で、こう告げられたのが今から3日前。

宗教的でありながら、どれとも違うような、怪しげな衣装を身に纏った、いかにも「怪僧」という表現がピッタリの占い師だった。

滑舌の悪さも、怪しさを一層際立たせていた。

男は3日間を無事にやり過ごすことだけを考えて生活していたが、それも今夜さえ乗りきれば終わる。

「意識しすぎるのもかえって危ない。

とにかくいつも通りに…」

この日は毎月1回のお楽しみの日。

お気に入りのスーパー銭湯のサービスデーだ。

宇宙遊泳と阿波踊りとは全く無縁のこの場所で、時が過ぎるのを待つつもりだった。

ただ、この日はいつもと違った。

浴室に入った瞬間、刺青を纏った一団が洗い場を占拠しているのがわかった。

さらに、やんちゃそうな子ども二人組が男の横をすり抜けて浴室に入ってきた。

幼さゆえの無知なのか、悪ふざけを始めた。

刺青の一団の表情が一斉に曇る。

不穏なムードを悟った男は、体を洗い終えると、たまたまひとけがなかった露天風呂へ、逃げ隠れるように直行した。

大きなガラス窓の内側では、子ども二人組が浴槽を泳いだり、床を泡だらけにして体をくねらせて遊んでいるのが見えた。

「今日はもう大人しく上がろう」

露天風呂を出て、内湯を通って、脱衣所に向かおうとした時だった。

立ちはだかる若い衆風情の男が一人。

顎でサウナの方を指した。

下手な抵抗をせず素直にサウナに入ると、全身刺青のいかにも「ボス」がいた。

「子どもはしっかり躾るのが親の役割ちゃいますか」

ボスは男の肩をポンと叩くと、

そのままサウナをあとにした。

「ちっ違います!!僕の子じゃあ…」

あとを追いかけようとしたが、入り口の向こう側で複数の若い衆が、小窓から男を睨み付けている。

誤解は明白だった。

だが、時すでに遅し。

腹いせに、サウナでの事故死に見せかけて殺そうとしているに違いなかった。

熱中症で意識が朦朧とする中、この時ようやく占い師の言葉の意味を理解した。

「内湯…遊泳、、、泡…踊り」

子ども二人組の悪ふざけと、占い師の滑舌の悪さを恨みながら、男は意識を失った。

Concrete
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