中編7
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『お願いします』

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この話は、

私の、大学時代からの男友達が、

会社の同僚から、聞いた話だそう。

その同僚の知り合いが、

実際に、体験した事らしいが。

私には、その人のこと自体、

遠い関係過ぎて、知らんけど。

しかし、投稿してみる。

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彼 ( 仮にMとしよう ) は、

毎日、汗水垂らして働く営業マン。

成績は伸びず、しかし、真面目な彼を見て、

契約してくれる人もいた。

ある日も、

アイロンで綺麗に畳んだハンケチで、

汗を拭いつつ、営業回りをしていた。

暑い夏だった。

突然、目の前で、

バーーーンッ!!

と、まるで爆発する様な音が聞こえた。

Mは、一瞬、爆弾か?と思ったらしいが、

次の瞬間に、全てを悟った。

、、、飛び降り、自殺?、、だ、、、。

そこには、

女が落ちていた。

周りも、その事に気付き、

「誰かっ!

救急車っ、救急車ぁー!!」

と、騒然としていた。

しかし、

何故かMさんは、冷静に見れた。

目の前の女性を。

20代くらいか、若い、

少し茶色い長い髪、紺色のスーツ、

シャツは白、

少し高いヒールの黒い靴、

マニキュアの色はベージュ、、、

しかし、

もっと冷静に見れたのは、

その女性の、

その、状態だった。

顔が、半分潰れてる、、

飛び出て、はね散らかしてるものは、

脳みそだろうか、

右の目玉が飛び出てる、、

右手と右足、

あんな向きには曲がらないな、、

左足の靴、飛んでってるな、、

、、、

何かを、左手に持ってるな、、、

Mさんは、

ふと、女性が左手に握りしめていた物を、

手に取った。

無理やりに、女性の左手をこじ開けて、

手に取った。

それは、一枚の紙切れだった。

握りすぎて、ぐちゃぐちゃだ。

広げてみる。

『お願いします』

と、だけ書かれている。

( 何を、お願いするんだ?)

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その後、救急車、警察が来た。

Mさんは第一発見者と言うか、

目撃者として、警察に話を聞かれる事と

なった。

何故か、その紙切れの事は秘密し、

持ち帰ったそうだ。

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その後、家に帰ったそうだが、

紙切れの事が、頭から離れない、

『お願いします』

『お願いします』

『お願いします』

Mさんは、次第に、

その紙切れが、気持ち悪くなってきた。

だからと言って、

家のゴミ箱に捨てるのもイヤだ。

そうして、次の日、

通勤途中のゴミ箱に捨てた。

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数日後、Mさんはタクシーに乗っていた。

珍しく会社から、タクシーのOKが出た。

(えぇっと、次に行く会社は、、、)

Mさんが、資料に目を通してた時に、

タクシーが、

ドーーンッと、何かにぶち当たったかの様な、

衝撃と、揺れがあった。

(えっ、、、?何?)

タクシーの運転手は、頭を抱えて震えている。

「あのっ、何なんですか!?」

タクシーの運転手は答えない。

仕方なく、Mさんはタクシーを降りてみた。

タクシーの先には、、、

男性が倒れている。

(おぃおぃ、人、轢いたのか?)

Mさんは、男性をじっと見る。

冷静だ。

大学生っぽい若者、

髪は黒くて流行りの髪型、白いパーカー、

細身のジーンズ、

ハイカットの水色っぽいスニーカー、、、

そして、

彼の状態、、、

首が、おかしな方向に曲がっているな、、

口と鼻からは、

これでもかと言うくらいの血が出てる、、

右足の膝は完全に、

反対の方角へ "く" の字に、

曲がっているし、、

目って、どこ見てんの、、

、、、

Mさんは、ふと、

彼の左手に、

何かを握りしめている事に気付く。

左手をこじ開けてみる。

一枚の紙切れだった。

広げてみる。

『お願いします』

また、同じ紙切れだ。

( 気持ち悪ぃ、、、)

Mさんは、

すぐに捨てようとしたが、

ふと気付く。

(前の紙切れとは、違う人の字だなぁ)

しかし、とにかく、

すぐに捨てる。

また、警察に、現場の状況を聞かれる。

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会社を早退し、家に帰ると、

「やってらんねぇー」と、ビールを口にした。

「何なんだよ、『お願いします』って。

オレにお願いされても、困るっつーのっ!!」

どうせ、明日は休みだし、と、

Mさんは腹いせに、

ヤケ酒では無いにしろ、酒を呷った。

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月曜日、Mさんは、

いつものように、会社から帰る為に、

駅のホームで、電車を待っていた。

(今日は、早く帰れそうだな、)

すると、

Mさんの隣に、

着物をきちんと着こなし、

身なりの良いお婆さんが、立っていた。

(上品な婆さんだなぁ)

その時、

駅のアナウンスが聞こえた。

「まもなく

1番線を電車が通過します 危険ですから

安全策の内側で お待ちください」

その直後、

「これ、、、」

と言う、声が聞こえたので、声の先を見る。

そのお婆さんだった。

お婆さんは、震える手でMの左手を掴み、

掌に何かを握らせた。

「えっ、、、」

もう、ホームからも電車の頭が見える。

お婆さんは、無表情だ。

そして、

電車が通り過ぎて行こうとすると共に、

婆さんは、ホームから落ちた。

、、、、、、

、、、、、、

、、、

えっ? 婆さんは?

オレ、何してんだ??

、、、

、、、

何かが、顔に着いていた。

手で触ってみる。

赤い、、、。

へばりついている物を、

顔から摘んでみた。

それを見てみる。

あたかも、

ぐちゃぐちゃになった、刺身のようだった。

スーツにも、

プラットフォームにも、、。

Mさんは、気を失ったらしい。

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気付くとベッドに寝ていた。

周りを見渡すと、どうも病院らしい。

(うん?何で、オレはここに、、?)

とりあえず、ナースコールを押す。

医者と看護婦が来た。

「どうですか?具合は?」

「あっ、別に、、普通です、、、」

「Mさん、

丸2日、眠ったまんまだったんですよ?

良かった。」

医者が安堵の表情で、そう言った。

「えっ?2日も!?」

正直、オレは驚愕したが、黙った。

すると、徐に、、、

「Mさん、あの時の事、、覚えてますか?」

医者が聞いてきた。

「あの、、、時、、?」

「Mさんが、駅にいた時の事です。」

「あっ、いや、、、」

それ以上、

医者は何も言って来なかった。

すると、暫くして、

別の人が来た。

40代半ばくらいの、スーツの男性。

「こんにちは、

私、高橋、と言います。あなたのお名前は?」

「あ、M、、です。」

やけに、紳士的だ。

高橋から、

色々と、優しく聞かれる。

そして、柔らかに真実を告げられた。

「それで、、、

Mさんが、

手に持ってた、紙切れなんですけど、

何か心当たりありますか?」

オレは正直、迷った。

信じてもらえるはずが無い。

でも、どうしようもなくなり、

訳の分からない事を、言ったように思う。

「あの、左手に掴まされたものは、

紙だったと思います。

でも、中を読んでいません。

、、、だけど、

きっと、書かれてた言葉は分かります。

『お願いします』、、、だと、、」

スーツの男は、黙って息を吐いた。

「何で、そう思うのですか?」

その一言で、

オレは今までの事を、全部、ぶちまけた。

「頭がおかしいと思うんなら、

それでもいいよっ!!

ただ、、、

オレは、狂ってなんか、ない、から、、」

「うん、そうです。

誰1人として、Mさんを狂ってるなんて、

思っちゃあいないですよ?」

「だって、精神病院に入れるんだろっ!!」

高橋は黙って、首を振った。

「Mさんには、一応、

1週間ほど入院してもらう事になりますが、

大丈夫ですか?

会社の方には、きちんと、

こちらから連絡は入れておきますし。」

「その後は、退院出来るんですか?」

「もちろん。

私は、嘘はつかないですよ?

ただ、PTSDと言った、

心的外傷後ストレス障害もあるから、

経過は見させてもらいますが。」

「分かりました、、、。

あっ!でもっ!!

あの紙切れ、オレが握ってた、

あの紙切れっ!!

今、どこにあるんですかっ!!

あの紙切れ、が、、、」

「うん?

Mさん、紙切れなんか握ってましたか?」

「、、、えっ?

だって、さっき高橋さんも、

言ってたじゃあないですかぁー!?」

「疲れてるんですね、

ゆっくり休んだ方が良い、、」

オレは、

何が何だか分かんなかったけど、

これ以上、変な事を言うと精神病院に入れられるのでは、と、

その後の入院生活は、静かに過ごした。

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その後、Mさんは退院し、

自宅で2、3日の療養をしながら、

次の月曜日から、また仕事に復帰する事と

なったらしい。

(よく分からん出来事、ばっかだったなぁ。

まぁ、今のオレには関係の無い事だ。)

そう思いながら、久しぶりにテレビをつける。

ニュースが流れ出した。

どうも、連続殺人が起きているらしい。

(物騒な世の中だな、

オレも、気を付けないと、、)

ふと、テレビのアナウンサーの声が、

耳に入ってくる。

「、、の、1週間で、

3人もの被害者が出ております。

えー、警察の調べによりますと、

いずれも、殺された被害者は、

左手に紙切れを、

左手に紙切れを、握りしめていたそうです。

犯人逮捕の手掛かりになるのでは、と、

この事は、警察が発表したものであります。

未だ、犯人は捕まっていない状況です。

もし、

これをご覧になっていらっしゃる方の中で、

少しでも、何らかの情報をお持ちの方、

情報提供をお願い致します。

えー、電話番号は、、、

くれぐれもお掛け間違いの無いよう、、」

プツン。

Mさんは、テレビを消した。

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