中編6
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粘着式ハエ取り

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どのご家庭でも、

特に、夏場などに、

ハエやコバエに悩まされた事は、

無いだろうか。

そうして、

ジェット型式の殺戮ガス。

あと、

巧みな心理作戦で、対象者を誘き寄せ、

粘着テープで拘束、監禁した挙句に、

じわじわと、死ぬのを楽しむ、

サイコパス的な殺害。

この、サイコパス的な監禁所は、

比較的に、

高い所に設置されているパターンが多い。

( 田舎では、大体そうなる。)

要は、部屋の上部などに監獄がある、

と言う事だ。

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ある夏の日、

私は、主任看守から、

監獄の取替えを、依頼される。

部下の看守である私は、

イヤだなと思いつつも、椅子の上に乗り、

鍵を開けるかの如く、天井のフックから、

監獄を外した。

中の囚人達を、見たくはないが、

見てしまう。

( かなり、投獄されたんだなぁ、)

まだ、微妙に動いてるヤツもいて、

私は、主任看守に訊ねる。

「あのー、

まだ生きてる方が、

いらっしゃるのですが、、、」

主任看守は、鬼の形相で言う。

「ガスを、撒きなさい?」

その主任は、

他の監獄でも噂される程の、冷酷人間だった。

私は、至近距離だった為、

ガスマスクを口に当てて、殺戮ガスを放った。

すると、主任がキツい口調で言う。

「そのまま、、、

何事も無かったように袋詰めにして、

捨てなさい?

良いわねっ!?」

「はいっ、分かりました。」

看守の私は、

主任には逆らえず、

そのまま、袋詰めにしていた。

しかし、

あれっ?と、気付く。

( 天井からの監獄に、

なんで、、、

こんなにも、髪の毛がくっついてんだ?)

主任は、髪は短いし、

私も、こんな黒くて長い髪などしていない。

主任の旦那は、、、論外。

まぁ、

1、2本なら、分かってやっても良いが、

その数は、それより多かった。

しかも、

その、大量の髪の毛の中で、

絡まってひしめく様に死んでる囚人が、

かなり多い事にも気付いた。

( 何これ、、、

かなり気持ち悪いんですけど、、、)

私は、主任看守を呼んだ。

「主任っ!これ、何ですか!?」

それを見て、少々驚いた様子だったが、

「捨・て・な・さ・い」

無表情の主任を見て、

私は急いで、彼らを袋詰めの刑に処した。

大半は死んでしまっているのだが。

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それから1週間程、経っただろうか。

私は気付く。

( 天井の監獄から、

何か、ぶらさがっている、、、)

私は、蜘蛛か何かかと思い、椅子に乗って、

中の囚人達の様子を見てみた。

( 、、、っ!?)

囚人達は、またもや髪の毛に絡まれている。

そして、黒い髪の毛にまみれて、

ひしめいている姿は、

そこいら辺の、B級ホラー映画以上だった。

そうして、

監獄から垂れ下がっていたものは、

その、黒くて長い髪の毛だった。

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私は、その日から、

囚人達を、今まで以上に監視する事にした。

髪の毛を持ってくるとすれば、

これから投獄されるヤツらの他に、

誰もいない。

( しかし、あの囚人達に、

そんな事が出来るか?

髪の毛なんて、持てないだろう?

生物学的に考えても。)

そうして、何故に、、、

囚人達は髪の毛の束に集まり、死を迎えるのか。

その頃になると私は、

立派で勤勉な、看守の務めを果たしていた。

夜、「異常無し」と叫び、床に就く。

翌朝、「異常無し」と叫ぶ。

夜、「異常無し」と叫び、床に就く。

翌朝、「異常あり」と叫ぶ。

( 、、、いつだ?)

私は考える。

ありとあらゆるパターンを想像し、

そうして、考える。

、、、答えは出ない。

( 何故、一晩の間に、髪の毛が、、、?

ここん家って、、

呪われとるんじゃねぇの、、、?)

とか、思いつつ、

私は、主任看守に、連絡報告をした。

「主任、報告致します。

髪の毛が、また付いております。

囚人が群がり、死亡しております。」

主任は、暫く沈黙だった。

その後、

「袋詰めにしろっ!」

そう言い、去って行った。

看守の私は、その通りにしたが、、気になる。

( この髪の毛は、、

一体、誰のものなのだろうか、、、?

しかも、なんで、

誰も手の届かない、天井の監獄に、

こびり付いているのだろうか、、、?)

、、、袋詰めにしつつも、

やはり、髪の毛の方に目が行く。

長いからかも知れないが、

かなりの本数のように感じた。

( うん?)

私は、気付いてはいけないものに、

気付いてしまった。

それは、

汚い髪の毛と、囚人達、

もとい、蝿の死骸の中にあった、

変な色の塊だった。

そこから髪の毛も生えている、ようだった。

( これって、、、

皮、膚、、、?

つーか、頭皮、、か、、、?)

私は、その事を主任には報告せず、

袋詰めにした。

そうして、

恐る恐る、主任に訴え出た。

「、、、、、、。

、、、天井の監獄は、、

閉鎖に、、しませんか、、、?」

「、、、。

、、良いだろう、、、。

天井からの監獄は、閉鎖しよう。

しかし『ジェット型式、殺戮ガス』は使う。

良いなっ!!」

「はい、、、

私は、天井からの監獄が無くなれば、

それで、、、」

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私は、最近、頭が痒かった。

お風呂に入っても、市販の薬を塗っても。

次の日に、頭皮に瘡蓋が出来てる程だ。

私の髪色は、

黒では無いし、あんなにも長くは無いが、

知らぬ間に、頭皮ごと髪の毛を、

むしり取られているのでは無いか、、、?

夜中に、

沢山の蝿が、私の髪の毛の中に、

集っているのでは無いか、、、

と、根拠の無い妄想で、精神的に参った。

( しかし、結局、

私の頭の痒さの原因は、

その年、仕事などで、夏のキツい直射日光を、

外で浴びることが多かった為、

それ故の、頭皮の炎症だったらしい。

病院に行ったら、すぐに治った。)

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人間と言うものは、

ちょっとした、何気無い事でも、

想像を膨らませ過ぎたり、

何でも、自分に引当ててしまうのだなぁ、

と、感じた。

ただ、以前に投稿させて頂いた話で、

自分の部屋に、まつわる話があるのだが、

( お読みで無い方へ。

ざっくり言うと、私が住んでいる場所は、

昔から、飲み屋街で、遊郭など、

色々とありまして、

そんな中で、

当時、そのような店で働いていた、

女性の方に関係する?私が体験した話です。)

しかも、

丁度、私の部屋は、

その監獄の真上にあった。

昔の女性は、髪が命だと聞いた。

しかし女性が、そこから逃げようとして、

捕まり、

だからと言って、商売道具である、

顔や身体に傷は付けられない。

なので、門番や店の連中は、

女の髪の毛を掴んで、引きずり回したそうだ。

幾本も、幾千本も、、、

それは、数え切れぬ程の髪が、

抜けた事だろう。

勿論、頭皮ごと、もがれたかも知れない。

いや、頭皮ごと、もがれたのだろう。

しかしながら、

客にとっては、お相手の女性の、

髪の毛が少し少なかろうが、関係は無い。

肌が、絹の様にキレイであれば、

それで良い。

髪は、女の命なのに。

私は、、、

彼女達を、気の毒には思うが、

あの監獄に絡まっていた髪の毛とは、

関連性が0に等しく思われる。

我が家の、粘着式ハエ取りとは、

何ら関係は無い、と。

変な関係性を持たれても困る。

あの監獄に絡まっていた、髪の毛の理由が、

本当に、未だ分からないし、

天井からの監獄が、私の一言で、

閉鎖に追い込まれてしまったので、

今となっては、その理由を知る由も無い。

今更、また、

監獄を吊るす気にもなれないし。

ただ、私は、

それ以上の事に、深入りしたくなかった。

ただ、君の悪さと恐怖心だけが、

心の何処かに、

何処か片隅に、残っているだけ。

separator

理由や訳など、分からない時がある。

こんな所に、在るはずは無い、

こんな所に、居るはずは無い、

そんな、世間一般の常識と言うのは、

時として稀に、覆される。

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