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中編7
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社員寮

今年もおふくろの会社で新卒採用の面接を行ったみたい

というより東京本社で面接をして1回落ちた人をもう1度おふくろの方で面接をしたようだ

10人が採用になった

屋敷内に新しい寮も建てた

10人はそれぞれの問題を抱えてる人ばかりだ

親の介護、シングルマザー、自分自身がすこし病気もち、田舎から出てきた人など

その方たちをおふくろが直接面接して採用になった

5人ほど新しい寮へ入居した

およそ1か月ほどは何事もなかったのだが・・・

30代のNさんが気になることを言い出した

仕事を終え寮へ帰ってしばらく休んでいると右耳当たりが「キーーン」という金属音みたいな耳鳴りがするようになった

不思議なことに左耳を指で塞ぐと耳鳴りが止んだ

はじめは「え!」という感じだったのだがやはり耳鳴りがし出して左耳をふさぐと音が止む

耳鳴りがするようになってから部屋に誰かがいるような感じがする

窓の外から覗かれてるような視線を感じるとか

リビングにいるとやはり人の気配が玄関当たりから感じるとか

とにかく気がおさまらないと私に言ってきた

おふくろにNさんの状況を話をした

「そう・・・これは一度・・和尚様に見てもらいましょう」とおふくろは心配そうな顔をしていた

私は事の詳細を和尚様に電話をした

翌日のお昼に和尚様が来た

私は会社から帰ってすぐにおふくろの屋敷へ行く準備をした

3人娘たちが付いていくといいはじめた

私と和尚様と3人娘はおふくろの屋敷へ向かった

おふくろの屋敷へ着いておふくろが待っててくれた

S君とF子も一緒だった

Nさんもいた

とにかくS君のスタジオへ行きNさんの話を聞いた

「毎晩ではないのですが時折耳鳴りがするんですよ

それで聞こえていない耳を塞ぐと不思議と耳鳴りが止むんです

仕事中は耳鳴りはないです

寮へ帰って部屋にいると耳鳴りがするんです

総裁の心使いで部屋を貸してもらってるのでなかなかこういうことが言えずに黙っていましたがやはり・・・最近、体調が良くないんです

恐らく睡眠不足だとは思うのですが昼間、すごく睡魔に襲われるんです

それで・・・夢を見るんです・・・それもいい夢じゃないんです

悪い夢を毎回同じのを見るんです

目が覚めると何の夢だったか忘れてしまいます

ただ、悪夢の夢だということは間違いないです

それに人の気配を感じます

隣の部屋は空き部屋ですから隣からの人の気配ではないです

私の部屋は1階です・・たまに上の階から人の歩く足音を聞いたことがあります

もちろん上の階は空き部屋です

私・・・どうしたらいいのでしょう・・・」とNさんは顔を下げたまま無言になった

「あの土地周辺は何も無かったはずよ・・・それで寮を建てることにしたんだけど・・・会社から300メートル、このスタジオから200メートル、ちょうどいい場所なんだけど・・」とおふくろも困った顔をした

「一度、Nさんの部屋へ行きましょう」と私は提案をした

「それがいいですわい、わしゃも部屋を見たいです」

「はい・・」

私とオヤジと和尚様はNさんの案内で部屋へ向かった

もう外は完全に夜になっていた

時計を見たらもう午後10時を過ぎていた

本当に静かだ

S君やF子が「静かすぎて怖い」というのを実感できた

自分の家は午前0時を過ぎると一気に静かになる

だけどこの静けさはまた全然違う

歩く足音がよく響く

寮に近づいた

まだ明かりがついてる部屋があった

そぉーと静かにNさんの部屋へ入った

「どうぞ・・・」と言いながらリビングの明かりをつけた

部屋の中はきちんと整頓されていて綺麗だった

「Nさん・・・耳鳴りは今していますか?」と私は尋ねた

「いえ・・今のところはしていません」と静かな声で答えてきた

「人の気配はどうですか?」と聞いた

「いえ、気配は感じていません」と答えてくれた

和尚様は部屋を見ながら「わしゃも何も感じませんわい・・・」

とりあえずはリビングで様子を見ることにした

1時間が過ぎても何も変化はない

Nさんが申し訳ないような顔をして「あのぉ・・・すいません・・・わたし、眠くなってきました・・・」と言ってきた

「はい・・・わかりました、私たちはリビングにいますから何かありましたら声をかけてください」と私はNさんに言った

「はい・・・お先に寝ますね」といいながら隣の寝室へ入っていった

「オヤジ・・・寝ずの番で様子を見よう」とオヤジに話しかけた

「そうだな・・・交代で仮眠しながら様子を見るか」

定期的にS君へ近況報告のメールを出していた

スタジオの様子もメールしてくれるように頼んだ

スタジオは雑談してるということだ

午前1時過ぎになったころ

私はウトウトとしていた

ザクッザクッ

と外から足音が聞こえてきた

その足音で私は一気に目が覚めた

外から話声がする

どうやら巡回中の警備員たちだ

オヤジがずっと玄関のほうを凝視していた

「オヤジ・・どうした?」

「あぁ・・今さっきから外のほうで気配を感じるんだよ」

「え・・気配って・・・巡回中の警備員たちのことか?」

「いや・・・違う・・・何かがいる・・・俺には感じる」

私もしばらく玄関のほうを見ていたが別段何もないように見えた

「クソ坊主、おまえも何かしら感じてるだろ?」

「はい・・・たしかに玄関のあたりから感じますわい・・・」

ギィィ・・・ガチャ

「え・・・今の音、何?・・・隣からしたけど・・・」

「せがれ・・静かにしろ・・・奴ら・・隣の部屋へ入ったんだよ

静かにしててくれ」

「わかったよ」

隣から複数の声がしてきた

「奴ら・・・隣に住み着いているかもしれんな・・Nさんの耳鳴りはこいつらかもしれん

、人の気配もな・・・大体の原因はわかったぜ・・・こいつらを退治する方法を考えないとな」

「さようですわい・・・成仏させないといけないですわい・・」

突然、Nさんが寝室から出てきた

「え・・・Nさん・・・どうしました?」と私は聞いた

そのままスゥーーと玄関を開けて外へ出て行ってしまった

私たちも慌ててNさんを追いかけた

完全に夢遊病になってる

裸足のままスゥーーと歩いている

警備員も気づいて私たちの後からついてきた

「どこへ行くんだろ」

「わからんですわい」

散歩道から竹藪の中へ入っていった

「え・・・竹藪・・・誰かに導かれてる感じだな・・・」

「ですわい・・・」

およそ50メートル歩いてすこし空き地のところでNさんはキョロキョロと辺りを見回していた

するとパタンと倒れてしまった

Nさんが倒れたそばに小さな祠があった

「こ・・・これ・・・この祠、見覚えがある・・・あ・・F子とかくれんぼしていた時だ・・・たしか祠があったんだが・・・おふくろに聞いたら祠など知らないと言っていた

・・けど・・どういうこと?」

「おい・・・この前は確かに無かったはずだぞ・・・」

「それよりもNさんを起こさないと」

オヤジがNさんの肩に手をかけて背骨を反らすとNさんは目が開いた

「え・・・えええ・・・・わたし・・・ここどこ?」と周囲をきょろきょろと見まわしていた

私が今までの行動をNさんに話すとびっくりした顔になった

「わたし・・・毎晩・・・ここのところへきてたんですかね・・・」とつぶやいた

「とりあえずは寮へ帰ろう」

「ですわな・・・」

私はふと気になり後ろを振り返った・・・祠が見当たらない

「オヤジ・・・後ろ向いてみろよ」

「どうした・・・・えええ?・・・祠がないぞ」

みんなが一斉に振り返った・・・祠がない

「馬鹿な・・・祠、ありましたよね・・・」とNさんもびっくり

「寮へ帰るよりスタジオへ行こう」

「そうだな・・・」

スタジオの方向へ歩き出した

スタジオの窓から明かりが見えてきた

時間も午前3時を過ぎていた

とりあえずはNさんは寝てもらうことにした

ここなら落ち着いて寝れるだろう

今さっきの現象をおふくろたちに話をした

「え・・祠・・・あったんでしょ、アニキ・・・私たち幼少のときにかくれんぼであの祠を何度も見たから・・・ママは祠など知らないと言ってたけど・・・絶対にあるんだよ」と珍しく興奮気味に話すF子

「でもね・・・私は一度も見たことないのよね・・・たしかにあの辺は滅多に行ってないからアレだけど・・・父や母からも一度も祠について話してくれなかったのよ」

「でも・・・どうして・・・Nさんはあの場所へ導かれてたんだろ・・・」

「もしかして・・・あのあたりに「祠を立てなさい」という神様のお告げかもしれませんわい・・・」

「たしかに・・・おふくろ・・・祠を立てたらどう?」

「和尚様の言う通りなら祠を立てなきゃね・・・来週にも業者を呼んで立てましょう」

それから1週間後に祠を立てる準備が整い工事が始まった

およそ2日ほどで完成した

小さな祠

あの夜に見た祠によく似てる

いろいろな行事を行いみんなで祠の前で手を合わせた

それからというのもNさんの耳鳴りはなくなり体調も良くなったと喜んでいた

おふくろの会社も少しづつだが業績が良くなってきた

そして・・驚くなかれ・・・あのS君の写真がコンテストで大賞に選ばれた

あちこちから取材が来て大変だったと言っていた

ところが・・・私とオヤジは何も変化がない・・・何でた?

きちんと祠で手を合わせたのに・・・

家でオヤジとそれについて愚痴をこぼしてたあくる日にオヤジとわたしは風邪を引いた

罰があたったのかな・・・

寮のほうは怪異現象は起きていないとのこと

一応、落着したのかな・・・

Concrete
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