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中編6
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タバコの煙

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大学時代の話。

私は、コンパニオンのバイトをしていた。

普通のパーティでの、

料理の取り分けや、

客に頼まれた飲み物のお世話、

そんな仕事もあるが、

しかし、大半が、

宴席での、いわゆる『コンパニオン』だ。

浴衣姿の客に、お酌し、話す。

(まぁ、色んな話を聞けて、

面白かったし、

しかも、タダ酒も飲めるし 笑。)

そうして、

何よりも、

時給が高かったので。

延長されれば、かなり稼げる。

貧乏学生の私には、

かなり、有難いバイトだった。

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そのコンパニオン会社には、

30代後半の『ミネさん』(源氏名)

と言う人がいた。

気さくで、私の事も可愛がってくれた。

(しかし、、、

宴席の客の中に、

会社なら、事務の人とか?

2、3人程、おばちゃんがいると、

『Kちゃん、

おばさん受け良いから、ヨロシクね〜、』

と言う、

冷酷さも、持ち合わせている。

懐かしき日々、、、。

あー、そう言えば、

若い女の子と、2人で呼ばれた宴席が、

そちらの方の、、方々の新年会で、

「ぉねぇえーちゃあんん!!

飲めるぅのかぁあ〜?

じゃぅあぁ〜、飲もぉうなあぁ〜!!

ハッハッハ、、、」

1番上座の人に言われて、

昼間っから、

日本酒攻めだった、、、なぁ。

もう1人の子は、飲めないので。

帰りの車で、

『赤いスイートピー』を、

熱唱していた覚えが、、、ある 笑。)

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ある夜、

仕事帰りの車の中で、

ミネさんが、タバコを吸いながら、

私の隣に座っていた。

ミネさんさんは昔から、赤マルだ。

私もミネさんも、酒飲み役で、

『あ〜、この子は、お酒飲めないのー。

運転手だから。

私達、帰れなくなっちゃうし、

だから、

代わりに、私が飲むから、ね?』

と言った、

下戸な女の子の、代打的な役割。

本当は、送迎車がいるのだが。

ミネさんは酒が強いので、

酔っ払った所を、私は見た事が無かった。

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タバコの火を消しながら、

ポツリと、ミネさんが話し出した。

「ねぇ、Kちゃんさ、、、

一昨日、、かな?

変な事があったんだよね、、、信じる?」

「あ、はい。

私も変な事、いっぱいありますし。」

「いやぁさー、、、

いつもの様にね、

夜、旦那と寝てたんさね。」

(ちなみに、ミネさんは、

20代の若い旦那さんがいる。)

「そしたらさ、

隣に寝てた旦那がね、

急に『ウゥーッ』って、

苦しそうに、呻き始めたの。」

「えっ!?

旦那さん、大丈夫だったんですか!?」

私は、驚いて聞いた。

一気に、酔いも冷めた。

ミネさんは、少し黙って話を続けた。

「旦那は、必死に、

藻掻き足掻いてるんだけどさ、

私、どうして良いか分かんないでしょ?

早く救急車、呼ばなきゃって。

そんな時に限ってさ、

何時もの場所に、携帯が無いのよ。

で、携帯を探しつつ、

旦那を見てたんだけどね、

でもさ、気付いたの。

旦那のね、首だけ動かないんさ、1ミリも。

あんなに藻掻いてるのに、変でしょ?

そしたら、

苦しそうな声で、

『ぐ、、っ、ぐび、、、』

って、私の目を、すごい形相で見るの。

私さ、" ぐび " って何!?って、

パニックになってね、

でも、旦那の目線が、

下の方を向いてるのに、気付いて、、、

うん?って、

旦那の首を見たのよね。

最初は、キスマークみたいなさ、

変な丸い赤いのが、内出血みたいな?

それがさ、1つあったんだけど、

じっと見てる内に、

その模様が、

横の方に、1つずつ増えてきて、、、

最後に、5つになったの。

でも、それ以上は、増えないんさ。

そして、気付いたら、反対側にも、、5つ。

、、、えっ、、?

誰かに、首、絞められ、てん、の、、、?

それに気付いた瞬間さ、

何だか分かんないけど、

私は、台所から塩を持って来て、

旦那に投げつけたんさね。

でも、ダメで、、

その時に、また旦那が喋ったの。

『、、、だ、だば、こ、ぉ、、、』

それを聞いて、

えっ?タバコ、、、?

って、何だか思ってさ、

急いでタバコを吸おうとしたら、

『、ま、、ど、ま、ど、』

また、旦那が言うんさ。

まどまど、、、?

あっ、窓開けろって事か?

私は、窓を開けようとしたんだよね。

その瞬間にさ、

いきなり腕を、ギュッと掴まれて、

私、びっくりして振り返ったの。

そしたら、

旦那がさ、上半身だけ起こして、

すっごい強い力で、私の腕を掴んでるんさ。

、、、何っ!?

私、自分の旦那なのに怖かった。

充血した目で、私を睨むように見てて、、

『ねぇっ!

どうしたん!?大丈夫!?』

私が、旦那に言うと、

旦那がさ、

すっごく、穏やかな声で言うの。

『タバコを、

吸う時は、

窓は、

5センチだけ、

開けてね。』

、、、、、、、、、

そうして、またバタッと倒れて。

私、訳分かんなくて、

とりあえず、窓を5センチ程開けて、

タバコを吸って、、、。

でも、ダメなんさね、

旦那は、まだ、藻掻いてんの。

私は、手にタバコを持ったまんまだったけど、

旦那の顔に近づいて、

『ねぇっ!!しっかりしてよっ!!』

って、泣きながら言った。

そしたらさ、

また、旦那の目線が下に行くの。

、、私は、バカだけどさ、、

、考えた。

、、、、、、、

、、、、、、

、、もしかして、、、。

私は、タバコの煙を、

旦那の首に吹きかけてみたんさね。

そしたら、

細くなったタバコの煙が、外に出てった。

5センチの窓の隙間から。

それから、

1分も経たない内に、

旦那は、正気を取り戻してね、

私、かなり泣いたわよー!!

その日は、

何も話さずに寝たんだけど、

次の日に、

旦那から、昨夜の話をして来たんさね。

旦那は、

" 首を絞められてる "

って、言うよりも、

" 息を吸って吐けない "

って、感じだったって。

で、首元に何か当たった途端に、

息が出来るようになったって。

あんまり覚えて無いらしくてさ、

だから、次の日に、

赤紫の、首を絞められたかの様な、

手の跡を見て、かなりびっくりしてた、、、」

私は、思いっきり、正直に叫んでしまった。

「マジっすかっ!?

え、ヤバく無いですかっ!?」

そして後悔し、言い直した。

「、、、、、、

あ、あの、、それで、、、

その後、旦那さんは?」

とにかく、聞いてみた。

「旦那?

ふつー 笑。

ま、私が喫煙者で、良かったねーって。」

「ミネさんも、旦那さんも、

無事で良かったですよー!!」

「ありがとー!Kちゃん!!

誰にも話してなかったから、

スッキリしたー!」

そう言うと、ミネさんは、

タバコを1本吸って、目を瞑り休んだ。

、、、、、、

私は、いつもの癖で、

1人、考える。

一体、この話は何だったのだろう。

ミネさんの作り話?

いやいや、

そんな風には、からかう人じゃあ無い。

じゃあ、旦那さんの首の跡は、、、?

そうして、

私は、いつもの癖で、

(うん、分からん。) で、締めくくる。

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そんな事を考えている内に、

いつの間にやら、

送迎車が、コンパニオン会社に着いた。

みんな、私服に着替え、

「お疲れ様〜」

と、帰って行く。

私も「お疲れ様でした〜」と帰る。

背中越しに、社長の声が聞こえる。

「Kちゃ〜ん、

明日、6時半からの宴席、ヨロシクね〜!

去年のお客さん!

同じコンパニオンを寄越してくれって!

良かったね〜!」

「はぁーい」

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帰り道、

( よぉーしっ!!

明日は、2時間延長は確定だな。

Aちゃんも居るからー、

3、4時間くらい引っ張れるな、

コンパニオンは、延長なんぼですから。)

などと、悪巧みをしつつ 笑 、

そうして、

ミネさんの話など、すっかり忘れて、

ボロアパートに向かう私であった。

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