今は良い時代になりましたよね。
遠く離れていてもメッセージアプリを使えば、気軽に連絡を取れる。
しかも、無料です。
前回の噺を仕上げた報告を佐々木さんにしたら、以前体験した噺を聞かせてくれました。
今回は、ある廃村へ肝試しに行こうとした時のお噺です。
separator
佐々木さんにはね。弟が居るんです。
その弟さんね。人付き合いが苦手で、友達も居ない。
佐々木さん心配してました。
『佐々木さんの語り2』で登場した白石君。
お互いに職場を辞めた後でも、佐々木さんと交流はありました。
彼は人付き合いが得意で、弟さんと引き合わせたんです。
どうせなら肝試しに行こうって事になりまして、近県の山奥にある廃村に行こうって事になりました。
その場所ね、奇数人数で行くと、呪われるやら、帰り道で事故を起こすって噂がありまして、白石君の友人である三崎君も同行する事となりました。
出発の前日、白石君が妙な事を言い出しました。
白石「佐々木さん。弟君に俺を紹介する時、霊媒師って事にして下さい」
佐々木さん驚いた。
白石君は何時も自分は『視えるだけ』と言ってますからね。
佐々木「良いけど、どうした?」
白石「もしかしたら、必要だからです。あと、佐々木さんも俺からやり方習ったって事にしておいて下さい」
佐々木さんね。ある事を約束して欲しいとも言われた。
当日になり、佐々木さんが車を出しました。
佐々木さんね。新しい物が好きで、当時発売したばかりのカーナビを車に積んでました。
通り慣れた道を進む。
するとね。この道は近道だって事でカーナビのお勧めを無視して、裏道を使おうとしたんですよ。
でも、その道、事故による通行止めになってた。
この時点から迂回するには、大きなタイムロスになりはするのですが、仕方なく迂回するのです。
暫く何も無く車を走らせていますが、カーナビが突然誤作動を始めます。
一本道なのに
『この先○○㍍右折です』やら、
先程、コンビニに寄り、休憩したのに
『もうすぐ2時間経ちます。休憩しませんか?』
などと言い出します。
出たばかりのカーナビって性能は今ほどでは無く、ルート検索の精度も高くは無かったみたいです。
その為、佐々木さんは良く『バカナビ』なんて言ってたんですね。
その時もそんな事を言って皆を笑わせてました。
廃村のある県に入り、走った時。
三崎君がトイレに行きたいと言ったので、駐車場がある大きな公園に駐車しました。
車のドアが開き、三崎君が無言で入って来たので、出発します。
暫く走ると、白石君の携帯電話が鳴ります。
白石君ね。電話出る前に画面を確認してから電話に出る癖があります。ほとんどの方がそうでしょうけどね。
白石君驚く。
だってね。その着信、三崎君からなんですよ。
普段なら、助手席は弟君が座るんですが、この時は白石君が座ってました。
白石君振り返ってみると、先程入って来た三崎君が居ません。
電話に出ると
三崎「トイレから出たら、車無いんだけど、何処?」
白石「悪い。ちと喉渇いてさ、コンビニ探してた。直ぐ戻るから待ってて」
電話を切ると車内が妙な空気になる。
そりゃ戻ったはずの三崎君が何時の間にか居なくなってるわけですからね。
そうすると、弟君、急に狂った様に笑い出した。
白石君は右手の人差し指、中指を立てて刀印を結ぶと、大きな声で
『喝』
と叫びました。
すると、弟君。笑いは止まったものの、ぶるぶると震えてる。
白石「佐々木さん、車を止めて、弟君、外へ出しましょう」
佐々木さん、弟君を車の外に出して、白石君にどうするか聞くと、以前教えた様に印を結んで、不動明王真言唱える様に言います。
佐々木さんね、真言は覚えていましたが、印までは覚えて無い。
でも、それっぽい様にして、真言を唱える。
弟君の背後には、白石君が居て、同じく、不動明王真言を唱えて、弟君の背中を3回叩きます。
すると、弟君。震えが直ったんです。
白石「佐々木さん。約束しましたよね?もし、3回以上妨害があれば、今回は中止すると。多分、これ、3回目です」
そう。
まずは、通ろうとした道が事故による通行止め。
カーナビの誤作動。
そして、戻っていない三崎君が戻ったと思わされた事。
佐々木さんも、今回は中止して帰る事に同意しました。
その後、三崎君と合流して、今回は中止と告げました。
三崎君ね、せっかくここまで来たのにとかブツブツ文句言ったんですが、白石君が、
白石「理由は後で説明する。それで納得しないなら、車降りて一人で行け!俺達は行かない」
佐々木さんこれにも驚いた。
白石君ね。普段こんなに強く言う事無いんですよ。
そこまで言われてしまうと、三崎君も流石に黙った。
本当なら、弟君は佐々木さんと一緒に住んでるわけですから、皆を車で送った後帰宅で良いわけですが、この時は最初に弟君を帰宅させた。
これは白石君の提案なんですね。
その後、三崎君の近所にある、ファミレスに立ち寄り、トイレの際何が起きたかを説明しました。
続いて白石君が
白石「実は、みんなと合流する前、ネカフェで、例の廃村について調べてみました」
そして、そのページに掲載された写真をプリントアウトして持って来ていたのです。
佐々木さんや、三崎君には、何も見えませんが、白石君には複数の霊が写っているのが視えると言います。
そして、このサイトも、無料サーバーなのに、長年更新されていないのにもかかわらず、サイトが残っていると言う不思議な事になっている。
白石君が言うには、この廃村にひとを呼ぶ為、何かしらの力が働いているのではないかとの事。
白石「あそこに行くとしたら、俺の様な偽物霊媒師では無く、本物連れて行かないと危ないと思います」
でもね、佐々木さんに言わせると、先程、弟が取り憑かれて、白石君が祓った様に見えた。
それを言うと、白石君笑いながら、
白石「弟君が取り憑かれてたら、あんなもんじゃ済まないですよ。そもそも、三崎が帰って来た様に錯覚見せたのは、俺達をあの廃村に行かない様に警告してくれた霊だと思います」
白石君曰く、弟君は、無意識に霊に取り憑かれてしまうと思ったから、おかしくなった。
そして、白石君が、自身が霊媒師で、佐々木さんにも教えて、同じ事が出来ると言ったのは、弟君にこの2人が居れば平気と思わせて、弟君自身でブロック出来る様に仕向けたと。
あれで何とかならなきゃ、どうしようかと思ったなんて言う。
でも、白石君が言うには、人の強い意志で、大抵の霊は防げる。
彼の持論なんですね。
佐々木さんはね。そんなハッタリかます、彼は割と大物なんじゃないかなって思った。
俺が聞いたのはね。こんな噺でした。
皆さんもね、肝試し行く際、妨害みたいなのあったら彼等の様に引き返した方が良いかも知れませんよ。
作者蘭ユウジ
佐々木さんが昔の体験談を話してくれました。