入浴施設から出た私は、駐車場に止めた車輛に向かい歩いていた。
此処数日の温暖な日中とは打って変わって、夜は少しばかり肌寒く、上着を羽織り夜風に吹かれている。
直後、低い声が聞こえる。
「□※〇⇒∩………」
明らかにおじさんの声で、聞き取れはするのだが何を言っているかが分からない。
「………?」
通常ならゾっとして、車輛に急ぐ為小走りになるのだろうけど、有ろう事か私はゾクゾクと来ながら、不気味な笑みを浮かべてしまった。
恐らくその時、不愉快な思いをしたのは他ならぬ声を出しただろう、おじさんの声を出した得体の知れない存在だったかも知れない。
何せ、闇夜に不気味な笑みを浮かべた、マスクを着けた小太りの中年男が、振り向いていたのであるから。
怖い思いをしてネタにしたかったのに、全くと言って良い程、そう言った体験すら出来ずに悶々としていたのであるから、こちらからすれば「やった!待てば闇夜の声も有り!」なんて「待てば海路の日和有り」のもじりを思い浮かべてしまったのであるからして………
で、車輛を出した直後に、夜道を横切ったのが黒猫ならぬ白猫だった。
ゆっくりブレーキを踏んだから良かったが、おじさんの声を出したのが猫だったりしてな。ンな訳無いでしょうけど。
作者芝阪雁茂
御無沙汰致しております(礼)。
実際の不思議体験。
やはり怖さが有るかは疑問でありますが………
怖い体験をして、ネタに出来たらと思っている時点で、この世のものでは無い存在に嫌われていたりするんかなと、ふと感じたりしております。