短編2
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角じじい

運転している時のことだ。直進していると交差点の角におじいさんが立っていた。

道は二車線でそのおじいさんは左斜め前の角にいた。信号のない交差点である。

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おじいさんは交差点に一歩踏み出しては戻り、一歩踏み出しては戻りという動きをしていた。

車からしたら怖い動きだ。渡るのか渡らないのか分からない動きをするのだから。

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僕は車の速度を落としておじいさんの動きを見ながらゆっくりと通り過ぎた。

おじいさんが飛び出してくることはなく、無事に通り過ぎることができた。

僕は再び速度を上げて走り始めた。

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同じような交差点に差し掛かった時のことだ。

また同じ位置におじいさんが立っていた。

その人も出てくるか出てこないか分からない動きをしている。

同じようにして通り過ぎた。

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その次の角もその次も似たようなおじいさんが立っていた。

僕は変に親近感が湧いて「角じじい」という愛称をつけた。

5回目くらいの角にも出てきたから顔を見たいなと思い、今までよりもゆっくりと見てすれ違う時に見てみることにした。

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顔を真横に向けてしっかりと見れるようにすると、角じじいもこちらを見てきた。

僕は後悔した。角じじいの目が真っ暗だったのだ。

そして角じじいはニヤリと笑い首を左右に振った。

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「見たらダメなやつだ!」

瞬時に僕はそう判断して速度を上げた。

角じじいは道路に出てきて僕の車の後を追ってきていた。

ニコニコと嬉しそうに笑いながら歩いている。

不思議だったのは歩いているようなのに時速60キロで走っている僕の車との距離が離れなかったことだ。

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バックミラーをチラチラと見ながら気持ち悪いなと思いながら直進していた。

すると後ろでドーン!と大きな音が鳴った。

僕は何事かと思い車を左端に止めて後ろを確認した。

後続車が事故をしたようだ。一つ前の左角にだいたい90度の角度でぶつけていた。

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角じじいらしき人が車の周りを囲っていて楽しげに踊っていた。

事故をした車の運転手は出てくることはなかった。

僕は警察に連絡して事故車があることを伝えた。

やがてパトカーと救急車がやって来て、僕は警察に事故の状況を話した。

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角じじいのことを話したが、周りを調べた警察からは「そんなおじいさんは見かけなかった」と言われた。

しかし救急隊員が事故をした運転手を担架に運び出した時のことだ。

「じじいが!じじいが飛び出して来たんだ!」と叫んだ。

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皆さん、角じじいにはご注意を

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