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死にたいのか、死ねないのか。

長編9
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死にたいのか、死ねないのか。

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高校を卒業したオレは、

ある工場で、

携帯の液晶の、どこかの部品を、

毎日作り続けている。

何となく作っているその部品が、

どこに、どう使われるのかは知らない。

同じ部品を、毎日、毎日、作る。

同じ日々を、毎日、毎日、過ごす。

それでも、

オレは、真面目に仕事をした。

その工場は、小さなもので、

先輩達が、

偉そうにのさばっている。

オレは、なるべく目立たないように、

過ごしていた。

今までと同じように。

目立つと、逆らうと、酷い目に合う。

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ある日、先輩が仕事でミスった。

オレのせいにされた。

言い返したかったが、我慢した。

暫くして、オレはクビになった。

無職のオレには、アパート代を払えない。

かと言って、実家に居場所は無い。

かと言って、行く所も無い。

(こんな人生、、生きてる意味あるか、、、?)

オレは、

『完全自殺マニュアル』

と言う本を、手に入れた。

( この本は、本当にあり、

知ってる方もいらっしゃるかと。

私も、高校時代に回し読みして、

授業中に読んだ事がある。

中々、面白かった。

* インパクト ★4

* 苦痛 ★2

* 見苦しさ ★5

など、自殺の方法によって、

どのように死ぬかの、

目安が書いてあった覚えがある。

★ の数が多い程、レベルが高くなる。

例えば、

「苦痛 ★5」なら、

最上級の痛みや苦しみです。

「見苦しさ ★5」なら、

死体は、かなりグロい状態で死にます。

みたいな、

そんな、感じだったように思う。

そうして、その自殺に必要な物や、

アドバイスが書かれている。)

オレは、

毎日、どうやって自殺しようか考えていた。

そうして、それが、

いつの間にか、楽しくなってきた。

『いつでも死ねる』

それが、安心であり、嬉しかった。

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ある夜、オレは、

気分転換に、外をブラブラと歩いていた。

「あれーっ?

お前、高校ん時の、、、」

急に声を掛けられて、

ドキッとした。

「やっぱ? Mじゃーん 笑!

何してんのー?こんなとこでぇー笑」

5人程の連中が、笑っている。

オレは、黙っていた。

「ヒマならさぁ、オレらと遊ばない?

ねぇ、エ・ムちゃん?笑」

こいつらは、

高校時代に、オレをイジメていた連中だ。

それは、かなり酷いイジメだった。

勿論、先生も周りも、

皆、見て見ぬふりだった。

「オレ、、これから用事があ、、」

話終える前に、

リーダー格のSが、オレの肩に手を回してきた。

「良いじゃーん?

久しぶりに会ったんだし、ねぇ?

それに、友達は1人でも多い方が、

楽しいでしょー?

なぁ?

みんなも、そう思うよねぇ?」

周りが、ニヤニヤ笑っている。

オレは、

身体が震えていた。

(何で、オレは、外を歩いてたんだ、、)

かなりの後悔だった。

そうして、オレは、連れて行かれた。

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気が付くと、オレは、

ボロいガレージみたいな部屋にいた。

( 、、気を失ってたのか、?

、、、、たし、か、、

変な酒を、飲まされた、気、が、、)

頭が、かなり痛い。

クラクラする。目の前もハッキリしない。

しかし、

1つだけ分かった事は、

オレの身体が、壁に張り付けられてる、

と言う事だった。

上半身は、裸だった。

「あれーっ?

Mちゃん、やっと、起きまちたかぁー?」

オレは、言う。

「これは何だよっ!!早くロープ、外せよっ!

オレは、もう帰るからな!」

みんなが、嘲笑った。

「ほら、忘れたの?

口答えすると、どうなるか、、、」

不意に、思いっきり腹を蹴られた。

( 、、そうだった、、

逆らうと、こうなるんだった、、、)

「す、すいません、、、」

とにかく、オレは謝る。

「良いよ、良いよ、気にしないでー、

久しぶりだしねっ!!

じゃ、あ、、

みんな、始めよっか?」

周りが、俄に、

水を得た魚の如く、生き生きし出す。

オレは、

不安と恐怖に支配されていた。

(これから、何を、されるん、だ、、?)

急に、右胸に痛みを感じた。

( えっ?)

そこには、ダーツの矢のような物が、

刺さっていた。

針に仕掛けがしてあるのが、血が流れている。

「あーーー!!

外れたぁー、もうちょい、右だなぁ、、

おい、次、誰の番だー?」

オレは、

ダーツの的にされ続けた。

どのくらいの時間が経ったのかも、分からない。

しかし、

ダーツゲームの終わりは、呆気なく来た。

Sが、急に、

「飽きた」

と、言ったのだ。

「もう、帰って良いよー、

あ、携番は教えてよ?

ちゃんと電話には出てね、Mちゃん」

その後、

家まで、どうやって帰ったのか、、、

まず、今居る場所すらも分からなかった。

しかし、

血だらけの服を着て、フラフラ歩いている所を、

警察に保護されたみたいだ。

警察には、色々聞かれたが、

オレは、何も話さなかった。

と言うか、話せなかった。

報復が怖かった。

その後、

Sからの電話は、決まって週末に来る。

その度にオレは、ボロいガレージに出掛ける。

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そんな生活が、

2ヶ月程、過ぎた頃だろうか。

オレは、もう耐えられなくなった。

『完全自殺マニュアル』

を、何度も読み、自殺の方法を慎重に選んだ。

(へぇー、

飛び込み自殺は、すぐには死ねないんだ?

何か、意外だな、、

即死なイメージだけど。

首吊りは、見苦しさが ★4かぁ、

焼身は、インパクト ★5なんだけどなぁ、、

インパクトがあっても、

中々、死ねないのは、ちょっとイヤかもな。

まぁ、、良いや、

手っ取り早く、首吊りで。)

オレは、部屋にある電気コードを持って、

家の納屋へ向かった。

コードが外れないように、

しっかりと括り付ける。

そこら辺にあった、木の台に乗る。

( 、、、

、、何も考え無い方が、良い、、)

そうして、

Sの顔を思い浮かべながら、木の台を蹴飛ばした。

「痛いっ、痛いっ、痛い、、、!」

オレは、

すぐに電気コードを引っ張った。

(何だよ、死ねないじゃん!?)

調べてみたら、

電気コードは細過ぎるし、

首を締める位置もあるそうだ。

チェッ、

じゃあ、次は、、、薬物にするかー。

薬局に行き、鎮痛解熱薬を買う。

2つ買うと、理由を聞かれるので、

いくつかの薬局を回る。

とりあえず、手に入ったのは、5箱。

100錠くらいだろうか。

飲んでみた。

100錠を飲み切るのは、非常に大変だ。

だんだん、気持ち悪くなってきた。

その時、

運の悪い事に、くそババアが、

オレの部屋をノックした。

「あんた、夕飯、食べんのー!?」

返事など、出来ない。

結局、部屋に入って、

オレを見たくそババアが、救急車を呼んで、

2日後に戻って来た。

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(なんだよ!

何で、死ねないんだっ!!)

オレは、風呂場にカミソリを持ち込み、

手首を切ってみた。

(手首、意外と硬いんですけど、、、

くそっ、、)

思いっきりやった。

血は大量に流れ出て、

浴槽に貯めてあった水に、手首を浸した。

死ねなかった。

オレは思った。

オレに、死ぬ気なんか無いんだと。

ただ、現実から、

あいつらから、逃げたいだけなんだ、と。

じゃあ、

オレが苦痛を味わう必要なんて、無いだろ?

自分が、気の毒過ぎる。

オレは、

『自分で自分に同情する』

と言う、下らない思いに駆られていた。

その間も、

Sからの呼び出しは、相変わらず続いていたし、

しかも、オレの自殺未遂の傷跡を見て、

笑っていたのだから。

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次の日から、

『完全自殺マニュアル』は、

『完全他殺マニュアル』へと、変わった。

オレが殺す、が、自殺に見せかける。

こんなに面白い事は無い。

自殺の方法を考えていた頃より、

数百倍、楽しかった。

そうして、

オレが、選んでやった彼の自殺方法が、

『飛び込み』

だった。

* 見苦しさ ★5

身体が、

バラバラになっても、すぐに死ねないと言う、

* 苦痛 ★5

こんなにも、素晴らしい自殺は無いっ!

オレは、嬉しくて、

そうして、愉快で、楽しくて、

鼻歌なんか歌いながら、

自殺の、、、

間違えた、他殺の計画を立てた。

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それから、次の週末。

当たり前の様に、Sから電話が来る。

「Mちゃーん?

元気にしてたぁ?

今から出て来いよー、場所は、、、」

「あ、ごめん。

オレさ、今、駅に居て、

そこまでは、

歩いて15分くらい、掛かるんだけど、、、」

「はぁー?

駅!? 何で、そんなとこにいんだよ?」

「大した事じゃあ、無いんだ。」

「はぁー?」

「とにかくさ、

もう、S君と会えなくなると思うと、

寂しいけどな。

あっ、あと、、

S君達との楽しい思い出は、

一応、手紙に書いといたから。じゃあ、、

「おいっ!ちょっと待てよっ!

お前、今、どこの駅にいるんだ!?」

「、、えっ?

オレ、分かんないんだけど、、」

「良いから、教えろよっ!!」

「教えたらさ、S君、来てくれるの?

S君だけ?

こんな、オレの為に? わざわざ?」

「行くから、早くっ!!」

「、、、えーっと、えーっと、

あっ、〇〇駅、、?」

オレは、焦らせる為に言った。

「あと10分で、電車が来るんだよ。

オレ、それに乗るからさ、じゃあね。」

「ちょっと、お前、待っとけよ?

分かったなっ!!」

電話は、慌ただしく切れた。

オレは、

プラットフォームで、鼻歌を歌っていた。

空のキャリーバッグを、持ちながら。

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オレは、計算していた。

いつも、Sから電話が来るのは、20時頃。

やはり、20時3分に電話が来た。

Sがこの駅まで来るのに、10分くらい。

たぶん、バイクか何かで来るから。

多く見て、落ち合う時点で、更に5分。

電車は、20時38分に駅を、、通過する。

今、オレの時計は、

20時12分を指している。

やはり、

20時23分には、Sはオレの前に居た。

(よっぽど、急いだんだな、、)

オレは内心、ほくそ笑んだ。

「お前っ!何するつもりだ!!」

「えっ? 電車に乗るつもりだけど、、」

「その、、手紙って、 何なんだよっ!?」

「あー、手紙、、?

S君達との、

楽しい思い出の手紙だけど、何?」

「どこにあんだよっ、その手紙っ!!」

「えっ?

S君、、、

何か、困る事でもあんの?」

「、、、手紙にっ!!

何が、書いてあんだよ、?」

「別に。」

「良いから、教えろっ!!」

「じゃあ、

教えてやるからさ、

オレが今から言う言葉、この紙に書けよ。」

「はっ?」

「じゃあ、良いや。」

「分かった、書くから、、、

書いたら、手紙を渡せよ?」

「あぁ、良いよ。」

『か』

『も』

『た』

『う』

『れ』

『つ』

書いたか?」

「書いたけど、、、何だよ、これ。」

時計を見る。

20時32分。

駅のアナウンスが流れる。

『まもなく、

2番線を電車が通過します、、、』

オレは、

急に、Sに向かって、大声で叫んだ。

「やめろっ!落ち着けよっ!」

プラットフォームにいる人々が、

一斉に、こちらを向いた。

「やめろって!

Sっ!この紙は、何だよっ!?

落ち着けよ?

今からさ、

オレが、少しづつ近づくから、、な?

そのままで、いろよ?

大丈夫だから、、、」

Sは、ポカーンとした顔をしている。

そうして、

オレはそっと、Sの肩に右手を添えた。

電車が見えた瞬間に、

左手で、Sを押した。

それは、、、

あまりにも、一瞬だった。

周りからは悲鳴が、

勿論、オレも泣き叫び、

Sの名を、

大声で、何度も、何度も呼んだ。

オレの左頬には、変な肉片みたいな物が、

くっついていた。

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それから、

オレは、警察に連れて行かれ、

事情聴取を受けた。

オレは、泣いて、何も話せなかったが、

しかし、

オレが引っ越すと言う事で、

Sが見送りに来てくれた、

しかし、急にSに、

「紙とペンがあるか?」

と聞かれて、

丁度、メモ帳とボールペンがあったので、

渡した、

そしたら、こんな紙をくれた、

その直後に、あんな事になるなんて、、と、

涙ながらに、嗚咽を交えつつ話した。

そうして、

警察に紙切れを渡した。

「うん?

か、も、た、う、れ、つ、?

何だ?これは、、、」

警察は、困惑していた。

すると、横に居た、若い警官が、

「その文字って、

並び変えるんじゃあ、ないです、か、ね、、?

自分、勉強した事あります。」

そうして、

5分も経たない内に、

そこには、

『も』『う』『つ』『か』『れ』『た』

と言う、

Sの、遺書が書かれていた。

オレは、少しだけ溜め息を吐いた。

「Mさん、

辛い出来事でしたね、

目の前で、ご友人がお亡くなりになり、

しかも、自殺だなんて、、、

心中、お察し致します。

Mさん、

もう、お帰り頂いて構いませんから。」

オレは、警察署を後にする。

しかし、鼻歌は出ない。

何故なら、

どうしても、

気になって、気になって、

知りたくて、知りたくて、

仕方の無い事が、1つあるからだ。

電車に轢かれても、

すぐには、死ねないのか?

苦しみを、暫く味わうのか?

それが、知りたいのだ。

もっとも、今となっては、

経験者であるSに、聞く事は出来ないが 笑。

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