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長編12
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後輩の部屋

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ある日、私は、

大学の美術棟の前にある、芝生で、

穏やかに、ビールを飲んでいた。

(うん、おかしな文章だ)

すると、

仲の良い後輩の、Nが来た。

「Nも、飲む?」

「ううん、、

ねぇ、K姉さ、今日ってヒマ?

家に来て欲しいんだけど、、、」

「あ、良いけど、どした?」

Nは、黙っている。

「じゃあ、今から行くか?」

そうして、

私達は、Nのアパートに向かった。

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アパートに入る。何度も来てる部屋だ。

私は、一瞬、立ち止まる。

そうして、聞いてみた。

「でー、

どした、ん、、、これ、、?」

私は、正直驚いた。

家具の配置が、かなり変だ。

「ねぇ、

なんでさー、部屋の真ん中に、

こんな大きい棚が、あんの?

もう、ベッドに、すれすれですよ?

1Kを、1DK?にしたかったん?

部屋を2つに、したいの?」

Nは首を振る。

そうして、

躊躇いながらも、話し出した。

「実はさ、

何だか、この部屋にね、

誰かが居るみたいな、気がすんの。

足音?とか、、

お風呂場の方で、音がしたり、、

寝てる時に、視線を感じたりとか、、。

だから、

寝てる時に、

横に誰も立てないように、

ベッドに棚を、くっ付けたの。

あと、、、

大家さんに、言わなきゃなんだけど、

お風呂場?水漏れしてんだよね、

酷い時にはさ、

お風呂場の外まで、水が溜まってるし。

あ、こんな話は、

どうでも良いんだけど。

そんな事よりも、

K姉さ、、、

何か、分かる?

頼れるのって、K姉だけだし、、。

K姉ってさ、そう言うの、分かんじゃん?」

、、しかし、

Nには、申し訳無いが、

正直言って、私には何も分からなかった。

だけど、、、

何かが、変だ。

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その後、

私は、トイレから押し入れから、

隅々まで見てみる。

これと言って、何も感じない。

「ねぇ、Nさ、

変な事になったのって、いつから?」

「うーん、、、

1ヶ月ちょい前かな、、」

「ふーん、

じゃあさ、最近どっか行った?」

「えっ? 別にどこにも、、、

あっ!

でも、最近じゃないけど、

前の彼氏と、水族館に行った。」

「どこの?」

「鴨川シーワールド」

2ヶ月程前に、

Nが彼氏と別れたのは、聞いていた。

何故なら、

その彼氏と言うのは、私の男友達で、

たまたま、

私が、2人を会わせたのをきっかけに、

付き合いだしたから。

(「私に感謝しろっ!」と、

焼肉を、奢らせた覚えが、、、)

しかし、

Nの方から、別れを切り出した。

大好きだったらしいが、

私の男友達は、大学の先輩だった。

だから、

その時には既に、社会人になっていた。

週末にしか、会えない。

それが、

大学生であるNとの、

感覚のズレに、なってしまったんだろう。

周りの友達の、

大学生同士のカップルと、

きっと、比較してしまったんだろう。

仕方の無い話だ。

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Nと別れた1週間後、

私は、その男友達に呼び出された。

( 仮に、Hとしとこう。)

近くの居酒屋。

何となく、変だった。

「だってさ、オレが帰る日曜日の夜にさ、

あいつ、泣くんだよ?

オレは明日、仕事だし、、困るだろ?」

などと、愚痴り始め、

オレから振ったみたいな、言い方。

( あんた、

振られたから、腹いせに、

" こっちも、嫌気がさしてたんだよねー "

ぶってんじゃあ、ないの?)

私は、適当に相槌を打つ。

「ふーん、、、それはイヤだね。

あ、ホッケ頼んで良い?」

「だろー?、、、」

その後、愚痴の嵐。

まぁ、

その居酒屋が、彼の奢りでなかったら、

私は、30分で帰っていただろう。

( 奢りって、嬉しい、よね、、)

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それからは、Hと会っていない。

私はやけに、

Hの事が、引っかかった。

( 良い奴じゃないと、

友達には、会わせないんだけどなぁ、、)

そんな事を、

思い出しながら、考えた。

( Hと、会ってみるかー )

そうして、Nに、

「ま、今日は、

泊めてもらおっかなー?

久しぶりに、色々話そーよ?

あんたが、Hと付き合いだしてから、

ゆっくり話す事も無かったし、、

Nは、どう?」

「うん!うん!

K姉っ!酒、買って来よ!」

「Nが、酒って言うなー!!

お酒って、言いなさい?」

その夜は、

久しぶりに楽しい夜で、

いつの間にやら、私達は寝ていた。

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「、、チャプっ」

( 、、、う、ん、、?)

私は目が覚めた。

まだ、外は暗い。

どうも、風呂場に誰かいるみたいだ。

( 、、あっ、N、か、、、?)

しかし、

Nは、隣で爆睡している。

、、私は、

眠いけど、眠いけど!?

風呂場に向かった。

明かりは、、消えている。

が、誰かが、浴槽に浸かっている気配がする。

「チャプンっ」

と、音がした。

「あのー、すみません、

私もお風呂、入りたいんでー、

早く出てもらえます?」

その瞬間に、

何もかもが消え去った。

ドアを開ける。

浴槽にお湯など、溜まっちゃあいない。

床にも、

水滴1つ、落ちては無かった。

その時、唐突に、

トイレを流す音が聞こえた。

ダッシュ。

、、、トイレから出てきたのは、Nだった。

「紛らわしい事、すんな!」

「、、、へ?」

私はその後、眠れなくなった。

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それから2日後、だったように思う。

Nから、電話が来た。

今すぐ来て欲しい、と。

私が、Nのアパートへ向かう、、

その時に、

Hから、電話が掛かって来た。

( 何で、このタイミング、、、)

とりあえず、走りながら電話に出た。

「はいよー」

「なぁ、Nって今、大丈夫か?」

「何が?

え、あなた、、今日、仕事は?」

「いや、年休とった。」

「なんで?」

「気になる事があって。」

「Nの事?」

「、、、うん。」

Hの声のトーンは、低い。

「今さ、、私、Nから連絡来て、

Nん家に向かってるとこ。

気になるんなら、来たら?

2人きりじゃあ、無いんだし。」

「うん、分かった、」

と言って、

Hとの電話は切れた。

その時、丁度、Nのアパートに着いた。

チャイムを押す、、、前に、

ドアが開いた。

Nは、軽く錯乱状態だ。

「どしたー?」

私は、軽く聞く。

「、、あ、のっ、あ、おふ、ろ、、

だ、れかが、、わた、しみて、て、、

、、みて、る、、

あ、あそ、、に、い、る、、、」

Nが震えながら指を差した。

私は、指先へと目線をズラす。

、、、、、、

、、、

( 、、?何だ、、、?)

そこは、壁だった。

Nが、大きな棚を置いて、

仕切った隣の空間。その真正面の壁。

「Nー?

とりあえず、、、落ち着こう?

ね? 私が来たから、大丈夫だよ、」

急に、Nが、

泣きながら私に抱きついてきた。

よほど、怖かったんだ。

その時、

「ピンポーン」

ドアのチャイムが鳴った。

Nが、怯える。

「大丈夫、Hだから、」

「えっ!!

何で、あの人が、ここに来んの!?

私、会いたくないよっ!

ねぇ!K姉っ!!」

「うん、分かるよ。

気持ちは、よく分かる。

だけどね、

Hは、あんたの事を心配して、

仕事も年休とって、会いに来たんだよ?

それに、、

私も、Hに聞きたかった事があるから、

丁度良い、タイミングだったし。

Nも、、早く、

ゆっくり過ごせる部屋にしたいでしょ?」

私は、

玄関のドアを開け、Hを部屋に入れた。

当たり前だが、

微妙な雰囲気が流れる。

私は、唐突に話し出した。

「で、Hさ、

最近、何か変わった事、無かった?」

「、、、いや、何も、、」

「そっか、

2人が行った、鴨川シーワールドでは、

変わった事は無かった?」

「はっ? 鴨川シーワールド??

何?急に、、、

つーか、何で、お前が知ってんの?」

「いちいち、うるさいなぁ、、早く!!」

「、、特には、

変わった事なんて、無かったかなー、、」

「ふーん、

どんな些細な事でも、良いんだけどさ、

記憶に残ってる出来事って、ある?」

私は、Hに聞く。

「、、えーっと、、、

Nと、、アメフラシをつついた。

あと、ソフトクリーム食べた、かな。

沢山、写真撮って、、、

楽しかった。

シャチのショーも見た。アシカとかも、、」

「それで、他には?」

私は、問い詰めた。

「えっ?他に?

、、、えっ、、、、、」

Hは、暫く考えていた。

が、急に、

思い出したかのように、言った。

「あっ!!

そう言えば、

ずぶ濡れになった、女の子がいたわ。

シャチのショーの後だったから、

水飛沫、浴びちゃったんかなぁって。

俯いてて、

だけど、周りに、

家族らしき人も見当たらなかったし、

だから、オレ、迷子かと思って。

『ねぇ、大丈夫?

お家の人は、近くにいる?』

って、声を掛けたんだよ。

その時、

Nは、トイレ行ってたんだけど。

女の子は、

黙ったまま俯いてたし、

オレも、どうして良いか分からなくて、

警備員を、探しに行こうと思ってさ、

その女の子に、

『ちょっと、ここで、待っててね、

すぐに戻るからね、』

って、言って。

で、その後、

警備員と一緒に、駆け付けたんだけどさ、

そこには、もう、

その女の子は居なかったんだよね、

オレは、

あ、家族と会えたんかなぁ、って。

、、、うーん、、

何かあったと言えば、

あとは、そんな事ぐらいかなぁ、、、

えっ?

何でそんな事、聞くんだよ?」

「いや、別に、」

私は、直感した。

( それだな、間違い無い、、、。

鴨川シーワールドの近くには、

確か、海水浴場があったはず。

ずぶ濡れの女の子。

しかも、もし、迷子だったら、

親の名前を呼んだりして、

もっと、騒ぐはず、、、。)

「ねぇ、

その子さ、どんな服着てた?」

私が、聞くと、

「えっ? 服ぅ!?

そんなのさー、覚えてねぇよ。」

私が、機械的に言う。

「はい、思い出して下さい。」

そうして、

Hは、暫く黙り込んでいたが、

「あんまり覚えてないけど、、、

水着?みたいな、、

ピタっとした服だった、かな?

でも、あんな場所でさ、

水着の子供、結構居たからねー。

色は、、、

紺か、ピンクだった気がする、、、」

( 紺かピンク、て、、、

普通さ、

どう頑張っても、紺か水色、とかだろーよ!?

阿呆か、コイツ。

本当に、養護学校の先生なの、か、、?)

私は、敢えて、

その事には触れず、

( 何故なら私は、大人ですので )

「ふーん、、、

じゃあさー、ちょっと2人で団欒してて?」

私は、そう言うと、

風呂場に向かった。

この前よりも、念入りに調べる。

( 、、、うん?)

風呂場の隅に、砂みたいな物がある。

私は、大声で叫んだ。

「ねー!Nさー!

最近、海に行ったー?

それか、土遊びしたぁー?」

「えー?してないよ、そんなのー!」

海に行っていないのは、私も知っている。

(そっか、

じゃあ、簡単じゃん?)

私の考えでは、

Hが声を掛けた女の子が、Hに着いてきて、

結局は、Nの部屋に住み着いた、、、?

たぶん、、

近くの海水浴場で溺死した、、か、

その辺りだろうな。

そうして、

ここからが、私の駄目な所なのだのだが。

全て、自己流。

この後、

更に、状態が悪くなるかも、、、

なんて考えは、1ミリも、頭には無い。

( あー、そうだったー、

お清めの塩は、駄目だ。

あの子は、海で死んだんだから、

逆に、力を増長させてしまう気がする。

だから、、

とにかく、子供の嫌がる物、だな、、、)

私は考える。

子供の嫌いな物、、、。

( うーん、、

タバコ? 酒? 逆に、お化け?

あとは、、怒鳴り声?とか、かな、、)

私はまず、

浴槽に、酒を入れ始めた。

大人でも嫌がるかも知れない、ちゃんぽんで。

Nの家にあった酒を、とにかく全部入れた。

日本酒、ビール、焼酎。

しかも、

料理酒や、みりんまで入れた。

( 考えただけでも、吐き気がするのに、

風呂場は、恐ろしい匂いで充満した。)

そうして、

部屋に戻り、2人に言った。

「これから、

お互いに、未だに言えなかったムカつく所、

言い合いして下さい。」

2人は、キョトンとした顔をしていたが、

私の真剣な顔つきを見て、

「分かった」

と、言った。

それから、暫くして、

言い争いの声が、聞こえて来た。

(よし、よし、)

そうして、私は、

風呂場の浴槽の縁に腰掛けて、

タバコを吸った。

換気扇は回さずに。

風呂場は、タバコの煙に満たされてゆく。

遠くから、

2人の、罵倒し合う声が聞こえる。

( うん、完璧です。)

私は、独り言の様に話す。

「ここって、

居心地、悪いわぁー、

私、これ以上、居たくないわ。クッセェし。

もう、帰ろっと。」

すると、浴槽に溜まっていた酒が、

波打つ様に、動いた。

その時、チラっと、ピンク色が見えた。

( あ、、、居たか、、)

私は、軽く言う。

「あんたは、ここにいちゃダメなの。

楽しくないでしょーよ?」

それは、

遠くからなのか、いや、近くからなのか、

よくは分からないけれど、

聴こえて来た。

『、、、ま、、まって、てね、、て、、

、、だ、から、、、ま、って、る、、、』

( あーーーっ!!

もう、Hの阿呆がっ!!)

と、思いながらも、

「じゃあ、どうして欲しいんだろーなー、

私は、どうしたいかなー、」

と、言う。

相手に聞くって、感じじゃあ無くて、

独り言みたいな感じで。

敢えて、回答は求めない。

何だか、求めては駄目な気がした。

、、、声はしない。

その時、私は、

ふと、足首に何かを感じて、足元を見た。

いつの間にか、風呂場中に、

水が、1センチほど溜まっている。

しかも、明らかに、

水位が上がって行ってるのが、分かった。

風呂場のドアから、

溢れ出して行く程の、勢いだ。

私は、その水を舐めてみた。

塩っぱい。

( 相手が、子供だしなー、

変にこじれると、

大人よりも、タチが悪くなるからなぁ、、、

、、うーん、、、

ま、気にしてても仕方無いんだけど、、)

そうして、

私は、また独り言の様に喋る。

「お父さんと、お母さんって、、、

子供が、ずっーと家出してたら、

心配するねぇー、

よく、知らんけどねー。

私には子供いないし、別に関係ないし。」

( うーん、

こんな話してんのも、

何だか、イライラして来たわ。

さっさと、ここいら辺で、話し掛けよ、、)

「こんなクソアパートに、

いつまでも居ないで、

あんた、早く、家に帰んなさいっ!!

私は、親に心配を掛ける子供は、嫌いです。

あと、知らない人にも、

付いて行っては、いけません。

『飴玉あげるから』と、言われても、

誘拐の、おそれがあります。

分かったか!?

お前は、まだ、未成年なんだぞっ!!」

私は、

補導された少女に言う様な話し方で、

それに加えて

3年B組の担任の様な熱血ぶりで、

たぶん、独り言を言った。

酒は、波を立てない。

その代わりに、、、

床の水は引いて行った。

まるで、海に打ち寄せる波が、引くように。

(まぁ、風呂場の外は、

ドアまで達した水が、溢れ出していて、

大変な事になっていたが。

結局は、

私の足首くらいまで、

海水が、風呂場を満たしていた、と言う事だ。)

そうして、

私は、風呂場を出た。

何故だか、タバコは、、、

火を消すと同時に、浴槽に捨てた。

separator

次の日、Nから連絡が来た。

「どした?」

「K姉っ!!ありがとー!!

私の部屋、元に戻った!!」

「良かったじゃん?

まぁ、、今回、

私は、大した事してないけどね。」

「うぅん、それだけじゃあないんだ。

あん時にさ、K姉が、

『お互い言えなかった、

ムカつく事を、言い合いして』

って言ったじゃん?

だから、お互い、言い合って、、、

それでね?

あの、、、

また、Hとね、付き合う事になったの。

K姉さ、ほんと、ありがとー!!」

( はぁーーーっ!?

あれは、あの女の子を、

怖がらせる細工だったんです、が、、、)

と、思いつつも、

「良かったじゃん?

これからは、仲良くしなよ?

うん、じゃあ、

今度は、しゃぶしゃぶで良いよー?

Hにも、言っといてー!」

separator

色々あった2人だったが、

それから何年か経ち、結婚した。

今では、3人の子供の親になっている。

しかし、、、

毎年、毎年、律儀に来る年賀状がウザい。

『〇〇は、

今年、5つになりましたー!』

( しかも、フォト年賀状?)

だから、何だっつん。

知らねーし。

あんたらの子供が、

いくつになろうが、

私には、一切、関係無いんですが?

そうして、

キラッキラしてる、2人の親バカ顔や、

『仲良し家族でぇーす!』アピールの、

家族写真などを、

この? この私がっ!?

何故に? わざわざ?

見なきゃいけないのでしょーかっ!?

( しかも、

年賀状にプリントされている、

砂浜らしき所で撮った、家族写真、、、。

1番下の女の子の水着、

ピンクなんですけど、、、こわっ。)

、、、、、、

とは、言ってみたものの、

、、うーむ、、、

やはり、

色々あった2人だから、

そんな2人の子供達が、

元気に育っていると言う報告は、

こんな私でも、安心する、かな、、、。

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