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私が、、、この私がっ!?
関東の方で、
キャバ嬢として働いてた時の話。
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常連のお客さんに、
『Nさん』と言う人がいた。
歳は、、、50代くらいかな。
見た目は、小太りのおっさんで、
公務員とか言ってたけど、
地方なのか、国家なのか、、、
まぁ、、地方だろうな。
そうして、
かなり、不潔で、薄い髪は、フケだらけ。
更には、ケチ。
それに加えて、自慢話ばっかり。
いつも、後輩の男の子を、連れて来てた。
ココリコの遠藤みたいな顔。
しかし、
さすがっ!Nさんの後輩!!
上から目線男。 (仮に、Eとしとく。)
だから、
必然的に、店の女の子に、
彼らは、あまり良くは思われて無かった。
つーか、皆、席に着きたくなかった。
そんな客は、星の数ほど居るけれど、
まぁ、しかし、
それが仕事ですし?
私は度々、指名をもらっていてね。
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ある晩、私は、
5人くらいの若いサラリーマンの席に、
着いてた。
場指ももらい、
かなり、盛り上がってたんだけど、
ボーイの声が、背後から聞こえてた。
「Kさん、2番テーブル、ご指名です。」
2番テーブル、見る。
(あーーー!!
Nじゃあ、無いかぁー!!
もちろん、子分もいる、よね、、、。
ふ、ふーん、、、
でも、金になる、し、、)
私は、
席に着くと同時に、
嘘っぱちの、溢れんばかりの笑顔で言った。
「いらっしゃぁーい!!
Nさん、指名してくれたのー?
ありがとー!!」
(あまり、、くっつきたくない、、、)
そうして、
やっと、ビールを1本、勝ち取った所で、
「ねぇ、Nさん、
マキちゃんに、場指、入れても良い?
そっちの方が楽しいじゃん?」
どのテーブルでも、
マキちゃんが、
一緒に着いてくれると、正直ラクだ。
もちろん、逆に、
マキちゃんもそう思ってくれている。
( マキちゃんは、
店で、1番仲の良い子だった。
私よりも、4つほど歳下で、
彼氏はいるが、
シングルマザーで頑張ってる。
店終わりに、
2人で飲みに行ったり、
ラーメン食べに行ったり、、
プライベートな面も、
お互いに、知り尽くしていた。)
しかーし、
やはり、阿呆なNが、クソったれな事を言う。
「うーん、、
どうしようかなー、お金かかるでしょー?」
しかし、私も、引き下がらない。
「だってー、
Nさんも、Eさんも、マキちゃんの事、
お気に入りじゃん!!
4人で、飲もーよ!ね?」
そうして、
( マキちゃん、ごめん、、) と、
自責の念に駆られつつも、場指が入った。
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Nさんは、週3くらいで来るから、
それから、2日後かな、
NさんとEさんの姿が、店内に見えた。
(あの人、他の店にも行ってるし、、
いつ、寝てんの、、?)
今日の指名は、マキちゃんらしい。
そうして、
ちょーど、本指の客が帰ったタイミングで、
場指が入った。
(あ、マキちゃんか、
助けにゆくよー、待っててちょんまげ )
私は、席に向かう。
その時、ドレスの裾が縺れる。
咄嗟に、
( あっ、、、転ける、、)
と、思った。
何故だか、テーブルを見た。
( 、、えっ?)
Nさんが、私の視界に入った。
Nさんの、後頭部から首の辺りにかけて、
黒いモヤみたいのものが、
かかっている様に見えた。
( なに、、?あの黒いモヤ、、、。
しかも、
ドレスが縺れるなんて、初めてですが。
転けなかったから、良かったけど、、)
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その後は、延長をもらって、
結局、彼らはラストまで居た。
( 珍しいなぁ、、、)
そう思っているど、
やはり、
「この後、
行きつけのバーに、飲みに行かない?」
と、言われた。
マキちゃんと、目配せし、
( ラストまで居てくれたから、、)
と、4人で飲みに行こうとしたその時、
Eが、帰ると言い出した。
結局、3人で、、、
しかし、Nさんは、
バーに着いて速攻、寝た。
私は、ほぼほぼ、2人で飲んでるかの様に、
マキちゃんと喋っていたが、
例の、黒いモヤの事を、話してみた。
マキちゃんの母親も、
そう言う類に対して、敏感だったらしいので、
だから、
信じてくれるかな、と思って。
マキちゃんは、すぐに、
「Kさん、
Nさんに伝えた方が、良いですよ?
もしかして、病気とか、、
悪い知らせかも知れないですし、、」
さすがは、
そんなお母さんの娘だ。
「、、うん、分かった、
タイミングみて、言ってみるわ。」
そうして、
朝の5時頃に、無理矢理、
Nさんをタクシーに乗せて、私達も帰った。
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その頃、うちの店には、
『霊視が出来る』と言う、客が来ていた。
月に2、3回ほど。
席に着いた他の女の子達は、
彼の霊視が、本当に当たると言う。
そうして、
何故だか、私と目が合う度に、
向こうは会釈してくれる。
しかし、
私が席に着いた事は、1度も無い。
不思議に思って、ボーイに聞いてみる。
「『Kさんを、付けないでくれ』なんて、
言われた事は、無いですけど、、?』
たまたま、だと。
(ふーん、、、
私は、、是非ともっ!
彼に、霊視をして欲しいんだけどなぁ。
この私に、何を言うのか、
知りたいなー。
あら、やだ、、軽くバカにしてる?
いやいや。
まぁ、どーでも良いけど。)
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そうして、
Nさんは、それからも店に通い続けていた。
朝まで飲み、朝から仕事、、、。
( 私は、いつも思う。
他の客もそうなんだけど、
次の日、仕事なのに、
よく朝まで、飲んでられるよね、
感心するわ。)
ただ、
黒いモヤの事は、言いそびれていた。
その後も、
2回ほど、黒いモヤを見たのだけれど。
その時は、
何故だか決まって、ドレスの裾が縺れる。
マキちゃんに、急かされた。
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そんなある晩、
Nさんに、言った。
Eは、マキちゃんと喋っている。
私は切り出す。
「Nさんさ、最近、体調はどう?」
「Kちゃん、急にどうしたのー?
僕は、至って健康だけど?」
「そっかぁー、
あの、、、頭とか、、?痛くない?」
「えーっ?
いきなり、何を言い出すのー?
僕の身体を、心配してくれてんの?
嬉しいなぁー!
じゃあ、
今日は特別に、好きなお酒頼んで良いよ?」
、、、私は、
それ以上は言えない。
言えなかった。
非現実的な雰囲気を楽しむ為に、
店に来てくれてるのに、
身体の事など、しつこく言えない。
「ごめんね、Nさん、、
変な事、言って。
でも、心配だったんだよ、、、。
じゃあ、Nさん!!今日は楽しもっ?
あーっ!!そうだ、
さっき、
好きなお酒、頼んで良いって言ったよねー?
じゃあー、
ドンペリブラックか、ルイ13世っ!!
ウソウソ、
ビール飲ませてくれれば、良いよー!」
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その2週間後だっただろうか。
Nさんが、パタリと店に顔を出さなくなった。
まぁ、客が急に来なくなる、
そう言う事は、日常茶飯事だが、
他でも無い、Nさんの事だったから、
私とマキちゃんは、心配してた。
電話も繋がらない。
そうして、
暫くしたある晩に、Eが1人で店に来た。
どうも、私に話があるようだ。
指名をもらい、席に着く。
「いらっしゃ、、、」
「Nさんさ、倒れた。」
「えっ、、、?」
「くも膜下出血だって。
Kちゃん、何か聞いてた?」
「いや、何も、、、」
「そっか、
丁度、新潟の実家に帰ってた時に、
倒れたらしくてさ、
家の人が、早く気付いたらしいけど。」
「大丈夫なの?」
「、、分かんない、、、
オレには、、
そこまでしか情報が来てないから。」
私は、黙ってしまった。
( 何で、あの時に、
もっと強く言わなかったんだろう、
病院に行って、って、、、)
「、、まぁ、
そう言う事だから、それを言いに来た。」
そうして、
Eは、1タイムで帰った。
( マキちゃんと、話したい、、)
そう思った矢先、
「Kさーん、
5番テーブル、ご指名でーす。」
( はっ?5番?)
見た。
彼だった。
霊視が出来ると言う。
( クソっ、
何で、このタイミングなんだよっ! )
そうして、5番テーブルに向かう。
ドレスの裾が縺れる。
「初めまして、Kです。
ご指名、ありがとうございます。」
彼は、
ソファに座っている自分の隣を、
ポンポンっと叩いて、
「座って?」
と、言った。
( 何だろうか?この、不愉快さ加減は、、)
と思いつつ、座る。
「Kちゃん、だよね? 何か飲む?」
「じゃあ、、、
ズブロッカをストレートで。」
「Kちゃん、良い趣味してるねー、
じゃあ、僕も同じ物を。」
その後、
ウィスキーが来て、暫くは、
他愛の無い話しをしていたんだけど、
急に、彼が言った。
「見逃した?」
ハッと、彼の顔を見る。
「助けられなかった?」
彼は、笑顔で冷静に言う。
私も、笑顔で冷静に言う。
「えーっと、、、何の事でしょう?」
「倒れたおっさん。」
、、、、、、、
「さぁ、、、」
私は、今までに、
自分以外の、この様な類の人と、
出会った事が無かったので、対応に困った。
「オレさ、、、
Kちゃんの事、知ってるよ、
オレと同じ仲間だって。
だから、、、
敢えて、オレのテーブルに、
着かないようにしてたんだよね。」
「、、、Nさん、助かりますか、、、?」
私は初めて、他人に意見を求めた。
( 私には、分からなかったから、、)
すると、
彼から、かなりの罵声が飛んできた。
「何で、あの人に言わなかったのっ!?
オレだって見えてたよ?黒いモヤ。
Kちゃんが、
もっと強く言っとけば、
あのおっさんだって、
倒れなかったでしょっ!?」
責められた気持ちになる。
「、、すみません、、。」
、、、、、、、、
、、、、、、
「あのおっさんは、死なないよ。」
急に、彼が言う。
「Kちゃんさ、
自分の立場も大事だけど、
言いにくい事も、
言わなきゃいけない時が、あるんだよ?
オレや、Kちゃんみたいな人間はね。
それが人の生き死にに関わる事なら、絶対に。
オレらみたいな人間は、
大抵の場合、
事が起こった後始末が多いけど、
時には、
先回りして、教えなきゃいけない時もある。
それを分かってないとダメだよ。
、、、、、
でさ、Kちゃん、
オレの席に着く時に、、、
ドレスの裾が、縺れたよね?
何か見えたんでしょ?
なら、教えて欲しい。
自分の事ってさ、
自分で分かんないんだよね、、、」
、、、、、、
、、、、
実は、見えていた。
彼の足元から、湧き上がる様にして、
モヤが漂っていた。
それは、足元の方が黒くて、
膝に上がるにつれて、
黒から灰色のグラデーションみたいに見えた。
私は、それを、
伝えるべきか、どうか迷う。
でも、、、
( Nさんの様には、なって欲しくない。)
私は、ありのままを話した。
彼は、暫く黙り込んだ後、
「ありがとう」
と、だけ言った。
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その後、1年ほど経った頃だろうか。
携帯が鳴った。
Nさんだ。
「Nさんっ!!久しぶりー!!元気??」
Nさんは、右足に麻痺が残り、
杖での生活を、余儀なくされたそうだが、
元気そうだ。
「Kちゃん、
僕は、、お店の階段、上れるかな?」
「私が、お姫様抱っこしますよ!」
そうして、
Nさんは、お店の常連に戻った。
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ちなみに、、、
例の、霊視の出来るお客さんは、
その後、
すぐに事故に遭い、
あやうく、両足を潰す所だったらしい。
しかし、事故の直前、
私の言葉が浮かんで来て、
1、2秒早く、
ブレーキを踏む事が、出来たらしい。
それで、両足を失わずに済んだみたい。
とりあえず、、、
1人、助けられて良かった。
彼みたいな人が、理解不能なヤツらと、
対峙すべきなんだろうな。
私なんて、
紛い物か、まだまだ、ひよっこだ。
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