長編8
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私の失敗

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私が、、、この私がっ!?

関東の方で、

キャバ嬢として働いてた時の話。

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常連のお客さんに、

『Nさん』と言う人がいた。

歳は、、、50代くらいかな。

見た目は、小太りのおっさんで、

公務員とか言ってたけど、

地方なのか、国家なのか、、、

まぁ、、地方だろうな。

そうして、

かなり、不潔で、薄い髪は、フケだらけ。

更には、ケチ。

それに加えて、自慢話ばっかり。

いつも、後輩の男の子を、連れて来てた。

ココリコの遠藤みたいな顔。

しかし、

さすがっ!Nさんの後輩!!

上から目線男。 (仮に、Eとしとく。)

だから、

必然的に、店の女の子に、

彼らは、あまり良くは思われて無かった。

つーか、皆、席に着きたくなかった。

そんな客は、星の数ほど居るけれど、

まぁ、しかし、

それが仕事ですし?

私は度々、指名をもらっていてね。

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ある晩、私は、

5人くらいの若いサラリーマンの席に、

着いてた。

場指ももらい、

かなり、盛り上がってたんだけど、

ボーイの声が、背後から聞こえてた。

「Kさん、2番テーブル、ご指名です。」

2番テーブル、見る。

(あーーー!!

Nじゃあ、無いかぁー!!

もちろん、子分もいる、よね、、、。

ふ、ふーん、、、

でも、金になる、し、、)

私は、

席に着くと同時に、

嘘っぱちの、溢れんばかりの笑顔で言った。

「いらっしゃぁーい!!

Nさん、指名してくれたのー?

ありがとー!!」

(あまり、、くっつきたくない、、、)

そうして、

やっと、ビールを1本、勝ち取った所で、

「ねぇ、Nさん、

マキちゃんに、場指、入れても良い?

そっちの方が楽しいじゃん?」

どのテーブルでも、

マキちゃんが、

一緒に着いてくれると、正直ラクだ。

もちろん、逆に、

マキちゃんもそう思ってくれている。

( マキちゃんは、

店で、1番仲の良い子だった。

私よりも、4つほど歳下で、

彼氏はいるが、

シングルマザーで頑張ってる。

店終わりに、

2人で飲みに行ったり、

ラーメン食べに行ったり、、

プライベートな面も、

お互いに、知り尽くしていた。)

しかーし、

やはり、阿呆なNが、クソったれな事を言う。

「うーん、、

どうしようかなー、お金かかるでしょー?」

しかし、私も、引き下がらない。

「だってー、

Nさんも、Eさんも、マキちゃんの事、

お気に入りじゃん!!

4人で、飲もーよ!ね?」

そうして、

( マキちゃん、ごめん、、) と、

自責の念に駆られつつも、場指が入った。

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Nさんは、週3くらいで来るから、

それから、2日後かな、

NさんとEさんの姿が、店内に見えた。

(あの人、他の店にも行ってるし、、

いつ、寝てんの、、?)

今日の指名は、マキちゃんらしい。

そうして、

ちょーど、本指の客が帰ったタイミングで、

場指が入った。

(あ、マキちゃんか、

助けにゆくよー、待っててちょんまげ )

私は、席に向かう。

その時、ドレスの裾が縺れる。

咄嗟に、

( あっ、、、転ける、、)

と、思った。

何故だか、テーブルを見た。

( 、、えっ?)

Nさんが、私の視界に入った。

Nさんの、後頭部から首の辺りにかけて、

黒いモヤみたいのものが、

かかっている様に見えた。

( なに、、?あの黒いモヤ、、、。

しかも、

ドレスが縺れるなんて、初めてですが。

転けなかったから、良かったけど、、)

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その後は、延長をもらって、

結局、彼らはラストまで居た。

( 珍しいなぁ、、、)

そう思っているど、

やはり、

「この後、

行きつけのバーに、飲みに行かない?」

と、言われた。

マキちゃんと、目配せし、

( ラストまで居てくれたから、、)

と、4人で飲みに行こうとしたその時、

Eが、帰ると言い出した。

結局、3人で、、、

しかし、Nさんは、

バーに着いて速攻、寝た。

私は、ほぼほぼ、2人で飲んでるかの様に、

マキちゃんと喋っていたが、

例の、黒いモヤの事を、話してみた。

マキちゃんの母親も、

そう言う類に対して、敏感だったらしいので、

だから、

信じてくれるかな、と思って。

マキちゃんは、すぐに、

「Kさん、

Nさんに伝えた方が、良いですよ?

もしかして、病気とか、、

悪い知らせかも知れないですし、、」

さすがは、

そんなお母さんの娘だ。

「、、うん、分かった、

タイミングみて、言ってみるわ。」

そうして、

朝の5時頃に、無理矢理、

Nさんをタクシーに乗せて、私達も帰った。

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その頃、うちの店には、

『霊視が出来る』と言う、客が来ていた。

月に2、3回ほど。

席に着いた他の女の子達は、

彼の霊視が、本当に当たると言う。

そうして、

何故だか、私と目が合う度に、

向こうは会釈してくれる。

しかし、

私が席に着いた事は、1度も無い。

不思議に思って、ボーイに聞いてみる。

「『Kさんを、付けないでくれ』なんて、

言われた事は、無いですけど、、?』

たまたま、だと。

(ふーん、、、

私は、、是非ともっ!

彼に、霊視をして欲しいんだけどなぁ。

この私に、何を言うのか、

知りたいなー。

あら、やだ、、軽くバカにしてる?

いやいや。

まぁ、どーでも良いけど。)

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そうして、

Nさんは、それからも店に通い続けていた。

朝まで飲み、朝から仕事、、、。

( 私は、いつも思う。

他の客もそうなんだけど、

次の日、仕事なのに、

よく朝まで、飲んでられるよね、

感心するわ。)

ただ、

黒いモヤの事は、言いそびれていた。

その後も、

2回ほど、黒いモヤを見たのだけれど。

その時は、

何故だか決まって、ドレスの裾が縺れる。

マキちゃんに、急かされた。

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そんなある晩、

Nさんに、言った。

Eは、マキちゃんと喋っている。

私は切り出す。

「Nさんさ、最近、体調はどう?」

「Kちゃん、急にどうしたのー?

僕は、至って健康だけど?」

「そっかぁー、

あの、、、頭とか、、?痛くない?」

「えーっ?

いきなり、何を言い出すのー?

僕の身体を、心配してくれてんの?

嬉しいなぁー!

じゃあ、

今日は特別に、好きなお酒頼んで良いよ?」

、、、私は、

それ以上は言えない。

言えなかった。

非現実的な雰囲気を楽しむ為に、

店に来てくれてるのに、

身体の事など、しつこく言えない。

「ごめんね、Nさん、、

変な事、言って。

でも、心配だったんだよ、、、。

じゃあ、Nさん!!今日は楽しもっ?

あーっ!!そうだ、

さっき、

好きなお酒、頼んで良いって言ったよねー?

じゃあー、

ドンペリブラックか、ルイ13世っ!!

ウソウソ、

ビール飲ませてくれれば、良いよー!」

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その2週間後だっただろうか。

Nさんが、パタリと店に顔を出さなくなった。

まぁ、客が急に来なくなる、

そう言う事は、日常茶飯事だが、

他でも無い、Nさんの事だったから、

私とマキちゃんは、心配してた。

電話も繋がらない。

そうして、

暫くしたある晩に、Eが1人で店に来た。

どうも、私に話があるようだ。

指名をもらい、席に着く。

「いらっしゃ、、、」

「Nさんさ、倒れた。」

「えっ、、、?」

「くも膜下出血だって。

Kちゃん、何か聞いてた?」

「いや、何も、、、」

「そっか、

丁度、新潟の実家に帰ってた時に、

倒れたらしくてさ、

家の人が、早く気付いたらしいけど。」

「大丈夫なの?」

「、、分かんない、、、

オレには、、

そこまでしか情報が来てないから。」

私は、黙ってしまった。

( 何で、あの時に、

もっと強く言わなかったんだろう、

病院に行って、って、、、)

「、、まぁ、

そう言う事だから、それを言いに来た。」

そうして、

Eは、1タイムで帰った。

( マキちゃんと、話したい、、)

そう思った矢先、

「Kさーん、

5番テーブル、ご指名でーす。」

( はっ?5番?)

見た。

彼だった。

霊視が出来ると言う。

( クソっ、

何で、このタイミングなんだよっ! )

そうして、5番テーブルに向かう。

ドレスの裾が縺れる。

「初めまして、Kです。

ご指名、ありがとうございます。」

彼は、

ソファに座っている自分の隣を、

ポンポンっと叩いて、

「座って?」

と、言った。

( 何だろうか?この、不愉快さ加減は、、)

と思いつつ、座る。

「Kちゃん、だよね? 何か飲む?」

「じゃあ、、、

ズブロッカをストレートで。」

「Kちゃん、良い趣味してるねー、

じゃあ、僕も同じ物を。」

その後、

ウィスキーが来て、暫くは、

他愛の無い話しをしていたんだけど、

急に、彼が言った。

「見逃した?」

ハッと、彼の顔を見る。

「助けられなかった?」

彼は、笑顔で冷静に言う。

私も、笑顔で冷静に言う。

「えーっと、、、何の事でしょう?」

「倒れたおっさん。」

、、、、、、、

「さぁ、、、」

私は、今までに、

自分以外の、この様な類の人と、

出会った事が無かったので、対応に困った。

「オレさ、、、

Kちゃんの事、知ってるよ、

オレと同じ仲間だって。

だから、、、

敢えて、オレのテーブルに、

着かないようにしてたんだよね。」

「、、、Nさん、助かりますか、、、?」

私は初めて、他人に意見を求めた。

( 私には、分からなかったから、、)

すると、

彼から、かなりの罵声が飛んできた。

「何で、あの人に言わなかったのっ!?

オレだって見えてたよ?黒いモヤ。

Kちゃんが、

もっと強く言っとけば、

あのおっさんだって、

倒れなかったでしょっ!?」

責められた気持ちになる。

「、、すみません、、。」

、、、、、、、、

、、、、、、

「あのおっさんは、死なないよ。」

急に、彼が言う。

「Kちゃんさ、

自分の立場も大事だけど、

言いにくい事も、

言わなきゃいけない時が、あるんだよ?

オレや、Kちゃんみたいな人間はね。

それが人の生き死にに関わる事なら、絶対に。

オレらみたいな人間は、

大抵の場合、

事が起こった後始末が多いけど、

時には、

先回りして、教えなきゃいけない時もある。

それを分かってないとダメだよ。

、、、、、

でさ、Kちゃん、

オレの席に着く時に、、、

ドレスの裾が、縺れたよね?

何か見えたんでしょ?

なら、教えて欲しい。

自分の事ってさ、

自分で分かんないんだよね、、、」

、、、、、、

、、、、

実は、見えていた。

彼の足元から、湧き上がる様にして、

モヤが漂っていた。

それは、足元の方が黒くて、

膝に上がるにつれて、

黒から灰色のグラデーションみたいに見えた。

私は、それを、

伝えるべきか、どうか迷う。

でも、、、

( Nさんの様には、なって欲しくない。)

私は、ありのままを話した。

彼は、暫く黙り込んだ後、

「ありがとう」

と、だけ言った。

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その後、1年ほど経った頃だろうか。

携帯が鳴った。

Nさんだ。

「Nさんっ!!久しぶりー!!元気??」

Nさんは、右足に麻痺が残り、

杖での生活を、余儀なくされたそうだが、

元気そうだ。

「Kちゃん、

僕は、、お店の階段、上れるかな?」

「私が、お姫様抱っこしますよ!」

そうして、

Nさんは、お店の常連に戻った。

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ちなみに、、、

例の、霊視の出来るお客さんは、

その後、

すぐに事故に遭い、

あやうく、両足を潰す所だったらしい。

しかし、事故の直前、

私の言葉が浮かんで来て、

1、2秒早く、

ブレーキを踏む事が、出来たらしい。

それで、両足を失わずに済んだみたい。

とりあえず、、、

1人、助けられて良かった。

彼みたいな人が、理解不能なヤツらと、

対峙すべきなんだろうな。

私なんて、

紛い物か、まだまだ、ひよっこだ。

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