中編7
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メモ紙

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オレは、

やらなきゃいけない事を、すぐに忘れる。

だから、

リビングのパソコン机の上には、

メモ紙が置いてある。

そうして、ペタペタと貼り付けておく。

それを見て、

「あ、そうだった、

次の仕事の事で、〇〇さんに電話しなきゃ

いけないんだった」

と、思い出す。

全く、、、

オレの記憶力はどうなっているんだ?

と、自分でも呆れる。

( 、、、昔、聞いた事があるな、

次から次に、新しい情報が入ってくると、

古い情報は追い出される、と。

いやいや、全て古い情報では無い。)

毎朝、

仕事に行く支度をし、

机の上に、

何枚も張り付いているメモを見る。

( あー、今日は〇〇会社に電話か、

あとは、、、

午後からの会議の資料を、

会社に持って行く、と。

よし、これで忘れてないな?)

そうして、オレは会社に向かう。

スムーズに行く。

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そんな毎日を過ごしていた、ある朝。

いつもの様にメモを見た。

「部長に、報告書だ、

あ、と、は、、、

、、うん?

何だ?この携帯番号は?

名前が書いてないし、、、。

ヤバいっ、大事な電話番号かも知れない、、)

会社に出勤し、

とりあえず、部長に報告書を出した後、

その番号に電話する。

( どこの取引先だ、、、?)

コールが鳴る。

オレは、ドキドキする。

『コチラは、留守番電話サービスです。

ピーッと言う、、、』

( 、、、留守電、かぁ、、、

とりあえず、名前を入れておくか、)

「あっ、もしもし、

私、××会社の、Aと申します。

ご連絡を頂いたようで、、。

電話に出られずに、申し訳ありません。

また、お電話をさせて頂きます。

失礼致します。」

その日の夕方、

携帯を見ると、留守電が1件入っていた。

聞いてみる。

、、、、、、、、、

無音。

もう1回、聞いてみるが、静かなものだ。

( あっ!)

オレには珍しく、

今朝の、電話番号のメモ紙を思い出す。

その相手かも知れない、と思い、

折り返し電話をしてみるが、出ない。

( 何だ?

まぁ、大事な要件なら、

また掛かってくるだろう、、)

そうして、家路を急ぐ。

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アパートに着き、

サッとシャワーを浴びると、

部屋のソファに、沈み込む様に座り、

そうして、深い溜め息が出た。

( 今日も、" 働き蟻の法則 " の中で、

オレは、2割の存在の蟻、、だったな。

そのうち、認めてもらえれば良いけど、、。)

缶ビールを開ける。

面白くないテレビを、ボーッと観る。

明日は、休みだ。

特に、予定も無い。

( 、、、明日は、

久しぶりに、飲みにでも行こうかなぁー、

誰か、誘ってみるかー )

何気なく携帯を手にして、電話帳を開く。

ピックアップしてみる。

( アキ、、石崎、、イトウ、、、、)

そうして、

" は "

の所まで来た時に、

オレは、うん?と思った。

『ひとみ』

と言う名前が、登録されている。

( 、、、誰だ?)

オレは、

とりあえず、登録したままにしといて、

松田に電話した。

コールが鳴る。

「はい、」

松田の声だ。

「おぅ、久しぶり! 元気か?

あのさ、明日の夜って、ヒマ?

久しぶりに、飲みに行かねぇ?」

「久しぶりだなぁ、

良いよ!明日は、俺も空いてるし。」

とりあえず、

7時に、駅前で落ち合う事になった。

そうして、

オレが、気分良く、

携帯の画面を消そうとした時、

留守電が入っている事に、気付く。

(うん?

もしかしたら、あのメモ紙の相手かも。)

留守番を聞く。

無音。

しかし、

何かが、聞こえた様な気がした。

もう1回、

留守電を聞いてみる。

今度は全く、何も聞こえない。

オレは気味悪くなり、

留守電を、2件とも消去した。

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次の日、予定通りに、

7時に駅前で、松田と会った。

とりあえず、

近くの居酒屋へ入り、

お互いに、近況報告する。

松田は、高校の時に仲良かったヤツ。

一緒に青春を過ごした。

思い出話にも、花が咲く。

そんな雰囲気の中、

いきなり、松田が喋り出した。

「なぁなぁ?

高校ん時にさ 、

" 松浦ひとみ " って、いただろ?」

「、、、え?

、、松浦、、、?

あー!いたわ!!暗くて、地味なヤツだろ?」

「あいつさ、死んだらしいよ?」

「、、、えっ?何で?」

「何かさー、

オレも、詳しくは知らないんだけどな?

付き合ってた彼氏に、暴力とか?金とか?

まぁ、そう言った関係で、

自殺?したとか、しないとか?

噂だけどな。

殺されたとかって、話もあるし 笑。」

「そうなんだ?」

「でも、松浦って、

お前の事、好きだったじゃん?」

「えっ!!ウソだろっ!?」

「知らないのは、本人だけ〜 。

ま、こんな話、止めようぜ?」

「そうだな、、」

オレは、何となく、後味が悪かったが、

「すいませーん!生中1つー!!」

松田の、その一言で、

彼女の事は、消え去った。

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それからは、

何軒ハシゴしたか、覚えてない。

気付いたら朝で、

自分の部屋のベッドで、寝ていた。

頭が痛い、気持ち悪い、、

( オレ、ちゃんと家に帰ってたんだ、、

つーか、昨日、

どんだけ飲んだんだよ、、、)

思い出せない。

そして、頭痛薬 & 胃薬も効かない。

しかし、

オレは、自分の体調に耐えられず、

仕方無しに、迎え酒をした。

少し、落ち着く。

( あ、松田、大丈夫かな、、)

携帯を探し、松田に電話をしようとした時、

留守電が入っている事に気付く。

( 松田かも、)

留守電を聞く。

( 、、、はっ?)

オレは、携帯を投げ捨てた。

留守電には、、

昨晩の、オレと松田の会話が入っていた。

同じ所を、巻き戻し、巻き戻し、、。

『、、あいつ、死んだらしいよ?

(キュルキュルキュル、、)

、、あいつ、死んだらしいよ?

(キュルキュルキュル、、)

、、あいつ、、、、』

まるで、

昔ながらのカセットテープを、

巻き戻したり再生したり、、

そんな感じだった。

オレは、すぐに松田に電話する。

「コチラは、留守番電話サービスです。

ピーッとい、、」

オレは、電話を切る。

落ち着け、オレ。

その瞬間、

携帯の画面に、留守電のマークが表示された。

聞いてみる。

無音。

もう1度、聞いてみる。

『、、た、れ、、く、て、、、

てえ、、ぼ、、、、、おと、、こ、、

、のし、、た、わ、、、

キーッ!キキッ!キヒ、、ククッ、、、

(キュルキュルキュル、、)

、、た、れ、、く、て、、、

てえ、、ぼ、、、、、おと、、こ、、

、のし、、』

オレは、

速攻、携帯の電源を切り、

暫く考えた。

( 、、、、、。

、、もう1回、聞いてみる、、か、、

何か喋ってるような気が、したし、、、)

イヤだけど、

もう1回、留守電を聞いた。

更に、もう1回聞く。

( やっぱり、何かを喋ってる、、、

同じ言葉、繰り返してるし、

でも、何を言ってんだ?)

オレは、自分自身の事でさえも、

気持ち悪くなり、留守電を聞くのを止めた。

そうして、

自暴自棄と言うのか?

この際だし、気になっていた、

『ひとみ』

に、電話を掛けた。

「、、、はぁ、ぃ、、?」

ダルそうな声の、男が出る。

「あ、あのー、、、」

「、、お前さぁー、朝っぱらから何、、?」

声の主は、松田だった。

「あっ、松田か?

ごめん、掛け間違えた、」

電話は、プツッと切れた。

( 、、、何だ?

何が、どうなってんだ!?)

オレは、

テーブルに貼ってあるメモ紙を、

もう1度、見に行く。

よく見てみる。

何回も、見てみる。

( 、、、あっ、、)

末尾の数字だけが、

『ひとみ』の番号と、違う。

オレは、

メモ紙に書かれている電話番号に、

電話した。

「こちらはるすばんでんわさーびすですぴーという、、」

オレは留守電を入れた。

「この留守電を聞いたら、連絡下さい」

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暫く経ち、携帯を見る。

もちろん、電話も掛かってきて無いし、

留守電も入っていない。

ひとまず、ホッとした、

次の瞬間、留守電マークがついた、

「、、、え!?

オレ、留守電になってないし、、、」

携帯を壊そうと思った。

しかし、大事な連絡先が入っている。

もはや迎え酒などは、関係無い。

ビールを、もう1缶、飲み干した。

自分で自分に、勢い付ける。

留守電を聞く。

『、、こ、レか、ラわ、、タしは、

、シ、ぬケれ、ドミ、、ちヅレ、にシ、、タい、

ひ、トガイ、、る、、、

、、そ、レはこ、、ノルす、でンヲ、、、

、キ、いテい、ル、、おマ、えだ、、、

(キュルキュルキュル、、)

、、こ、レか、ラわ、、タしは、

、シ、ぬケれ、』

「うわぁーーっっ!!」

オレは、

携帯を、思いっきり投げた。

携帯は、壁にぶつかり、転がった。

見ると、

液晶にヒビが入っている。

オレは、思いっきり、携帯を踏み付けた。

そうして、

その日の内に、新しい携帯を買いに行った。

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それから、

半年程、経った頃だろうか。

会社の食堂で、

昼飯を食いながら、何気無く携帯を見る。

( うん?

、、何だ?このマーク、、、)

押してみる。

留守電のマークだった。

オレは、それを聞かずに消去する。

何故なら、

新しい携帯を買いに行った時、

オレは、

留守番電話サービスを、付けなかったからだ。

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