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短編2
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山小屋の日誌

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10月15日

私は消防士の石田という者です。

登山仲間の桑山、大沢、萩野と一緒に2泊3日の予定でこのH山に登りに来ました。

中継地点の山小屋へたどり着いた頃には辺りはすっかり暗くなってしまった。

天候が少し怪しいが山の天気が変わりやすいのはいつもの事だ、仲間たちと久しぶりの山を楽しみたい。

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10月16日

登頂中に突然の暴風雨に見舞われた。

あれほど急に変わるのは始めたのことだ…

あれは事故だったんだ、足を滑らした私を助けようとした大沢が滑落した…

助けられる状況ではなかったので山小屋へ戻ろうとしたが、暴風雨を前に方向がわからなくなった。

なんとか雨を凌げるほら穴を見つけたので3人で逃げ込んだ。

夕方には雨から雪へと変わっていた。

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10月17日

桑山が寒い寒いとうわ言のように呟いている。

暴風雨の中で桑山だけ比較的軽装だったのもあり身体が冷え切っているのだろう…

逃げ込んだのはただのほら穴だ、僅かな食糧はあるが暖をとるものがない。

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10月18日

朝になったら桑山が冷たくなっていた。

萩野の様子もおかしい…なんとか生きて帰ろうと声をかけるが反応をしない…どうなってしまうのだ。

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10月19日

雪はまるで止む気配がない。

萩野は錯乱したのか夜中に突然外へ走り出したっきり戻ってこない…ついに1人になった。

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10月20日

予定の2泊はとうに過ぎている

早く救助が来てくれないと私も死ぬ

今朝、ついに最後の缶詰を食べてしまった

夜になると外から誰かが俺を呼ぶ声が聞こえる

こんな猛吹雪なのに外からだ 怖い怖い暗い暗い

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10月21日

吹雪の音が人の泣いている声に聞こえる

大沢、桑山、萩野…俺を連れていきたいのか

嫌だ嫌だ嫌だ怖い怖い怖いこわいこわいこわい

たすけてたすけてたすけてたすけてたすけて

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10月22日

吹雪が治まった!遠くから誰かの声が聞こえる!救助隊が来たのだ。

ああ、私は助かる、これが最後の日誌だ

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H山中腹の山小屋で見つかった日誌の内容だ。

四人組の登山グループが予定を過ぎても帰らないので、家族が救助を願い出たのが10月19日の朝だ。

我々救助チームはH山へ向かうも、悪天候により入山出来たのは10月23日の昼だった。

ほら穴の中に1名、近くの林の中で1名、崖下で1名の遺体を収容した。

そして、山小屋で見つけたこの日誌を見て震えている。

10月22日は吹雪が最高潮になった日で、一般の登山者はおろか救助隊でさえ入山不可能なほどだったのだ。

最後まで生きていた彼は何を見て何の声を聞いたのだろうか?

そして、猛吹雪で山小屋へ戻れなかった男が書いた日誌が何故この山小屋に置かれていたのか、今でもわかっていない。

最後の1名は懸命の捜索の甲斐もなく見つけることは出来なかった為、救助隊の活動記録にはこう記されている。

死者3名、行方不明者1名

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