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中編5
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こっくりさんとテープ

ある小学校で4人の子供が死んだ。

血まみれの文房具が散乱する教室には遺体の他に

ろうそく、灰になった紙、十円玉、

テープレコーダー等があった。

警察では捜査の為、

テープを検証することになった。

これはそのテープの内容である。

「あ、あ~…まわってる?」

「多分大丈夫」

「なんか、ホントに知らない人の声入ってたらどうする」

「やめてよ、気持ち悪い」

「静かにしろよ、

見つかっちゃうだろ」

「そうだね」

「じゃ、はじめよう!」

「○ッちゃん、ろうそく」

「ちょっとまって…はい」

「火事にならないかな?」

「大丈夫だって、カーテン閉めてるし、

先生も帰ったから見つかんないよ」

「いい?はじめるよ」

「うん」

「いいよ」

「×太、力入れんなよ」

「入れてないよ、ほら」

「全員ちゃんと(指)置いて」

「いい?こっくりさん、こっくりさん、お越しくださいませ、

こっくりさん、こっくりさん、お越しくださいませ」

(中略)…以下しばらく、雑談と呼び出しが続く

「全然動かないよ」

「おかしいな、

こっくりさん、こっくりさん、

おいでになりましたらお返事お願いします」

「あ!!」

「動いた!!」

「『はい』!!」

「いやー」

「動いてる動いてる」

「おれ、力入れてないよ」

「来た、こっくりさん」

(中略)…以下しばらく、騒ぐ声と質問が続く

「もお、いい?」

「うん」

「そろそろ帰ろう」

「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください」

「…ッ!」

「『いいえ』」

「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください」

「…また『いいえ』だ」

「ちょっと、まずいよ、帰ってくれないよ」

「○木ちゃんどうしよう」

「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください」

「また!!やだ、やめてよ!!」

「×西!!おまえだろ、やめろよ」

「私じゃないよ!!」

「絶対、(指を)離しちゃ駄目だよ」

「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください」

「…」

「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください」

「…」

「こっくりさん、こっくりさ…」

「もう、やめろよ!!」

「(指を)離しちゃ駄目!!」

「こっくりさん、こっくりさん、

どうすれば、お帰りくださいますか?」

「『あ』『ぶ』『ら』『あ』『げ』」

「そんなの用意してないよぉ!!」

「どうしよう…」

「こっくりさん、こっくりさん、

油揚げはありません」

「動かない…」

「こっくりさん、こっくりさん、

油揚げはありません。

どうすれば、お帰りくださいますか?」

「『お』『み』『き』…なにそれ?」

「わかんない。どうしよう」

「こっくりさん、こっくりさん、

オミキはありません。

どうすれば、お帰りくださいますか?」

「『こ』『ろ』『す』…うそ…」

「もう止めろよ!!

×西!!おまえだろ、やめろよ」

「私じゃない!!」

「もう、やだ」(泣き声)

「×村!静かにして!!」

「こっくりさん、こっくりさん、

許してください。

もう、おかえりください」

「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください」

「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください」

「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください」

「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください」

「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください」

「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください」

「…『ひ』『と』『り』」

「こっくりさん、こっくりさん、

『一人』なんですか?」

「…『ひ』…『と』…『り』…『だ』『け』…『つ』…『れ』『て』…『い』『く』」

「やだ、やだ、やだ!!」

「(泣き声)」

「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください」

「まだ、動いてる!!」

「『ほ』…『か』『は』…」

「…」

「『こ』『ろ』『す』」

「こっくりさん、こっくりさん、許してください」

「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください」

「こっくりさん、こっくりさん、許してください」

「こっくりさん、こっくりさん、許してください」

「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください」

「『いいえ』」

「もう、いや!!」

「(指を)離しちゃ駄目!!」

「もう、知らない!!私帰る!!」

「離しちゃった…」

「こっくりさん、こっくりさん、許してください」

「…動かないよ…」

「どうしよう、ねえ!どうしよう!!」

「私、知らないよ!私、しらない!!」

「やだ、(戸が)開かない!!」

「鍵かけられちゃったんだ!!!」

「どうしよう!ねえ、どうしよう!!」

「こっくりさん、こっくりさん、許してください」

「いつまでやってんだよ!」

「だって、帰ってもらわなきゃ!!」

「窓は!?」

「こっくりさん、こっくりさん、許してください」

シャッ(カーテンレールの音)

「いやあぁぁぁぁ!!!」

「キャァー!!」

「こっくりさん、こっくり…」

テープはここで切れていた。

もう片面にはなにも録音されていない。

遺体の状況から、

各自の手にした血にまみれたカッター、

定規、縦笛、箒、などから、

互いに殺し合ったようにも見えた。

学校では、

各教室に鍵が取り付けられていたが、

数年前から、実際に鍵をかけるのは、

使われていない教室だけになっていた。

事件当夜も、

現場となった教室の鍵は開けられたままだった。

ろうそくは途中で消えており、

もし、ろうそくの明かりが点いていれば、

用務員が見回りをする際に気が付いたはずである。

また、窓には全て鍵がかけられていたが、

窓の外側には、一つだけ、

子供のものと思われる、

血の手形が残されている。

不思議なことに、

教室からは四人の遺体が発見されたが、

遺体のどの指紋もその手形とは一致していない。

声紋鑑定の結果、

テープには五人の声が録音されていた。

教員、生徒に確認をした所、

テープ中の

「○ッちゃん」

と呼ばれる女子生徒を知るものは、

誰も居なかった。

この事件の真相は、

未だ解明されていない。

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