ある小学校で4人の子供が死んだ。
血まみれの文房具が散乱する教室には遺体の他に
ろうそく、灰になった紙、十円玉、
テープレコーダー等があった。
警察では捜査の為、
テープを検証することになった。
これはそのテープの内容である。
「あ、あ~…まわってる?」
「多分大丈夫」
「なんか、ホントに知らない人の声入ってたらどうする」
「やめてよ、気持ち悪い」
「静かにしろよ、
見つかっちゃうだろ」
「そうだね」
「じゃ、はじめよう!」
「○ッちゃん、ろうそく」
「ちょっとまって…はい」
「火事にならないかな?」
「大丈夫だって、カーテン閉めてるし、
先生も帰ったから見つかんないよ」
「いい?はじめるよ」
「うん」
「いいよ」
「×太、力入れんなよ」
「入れてないよ、ほら」
「全員ちゃんと(指)置いて」
「いい?こっくりさん、こっくりさん、お越しくださいませ、
こっくりさん、こっくりさん、お越しくださいませ」
(中略)…以下しばらく、雑談と呼び出しが続く
「全然動かないよ」
「おかしいな、
こっくりさん、こっくりさん、
おいでになりましたらお返事お願いします」
「あ!!」
「動いた!!」
「『はい』!!」
「いやー」
「動いてる動いてる」
「おれ、力入れてないよ」
「来た、こっくりさん」
(中略)…以下しばらく、騒ぐ声と質問が続く
「もお、いい?」
「うん」
「そろそろ帰ろう」
「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください」
「…ッ!」
「『いいえ』」
「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください」
「…また『いいえ』だ」
「ちょっと、まずいよ、帰ってくれないよ」
「○木ちゃんどうしよう」
「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください」
「また!!やだ、やめてよ!!」
「×西!!おまえだろ、やめろよ」
「私じゃないよ!!」
「絶対、(指を)離しちゃ駄目だよ」
「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください」
「…」
「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください」
「…」
「こっくりさん、こっくりさ…」
「もう、やめろよ!!」
「(指を)離しちゃ駄目!!」
「こっくりさん、こっくりさん、
どうすれば、お帰りくださいますか?」
「『あ』『ぶ』『ら』『あ』『げ』」
「そんなの用意してないよぉ!!」
「どうしよう…」
「こっくりさん、こっくりさん、
油揚げはありません」
「動かない…」
「こっくりさん、こっくりさん、
油揚げはありません。
どうすれば、お帰りくださいますか?」
「『お』『み』『き』…なにそれ?」
「わかんない。どうしよう」
「こっくりさん、こっくりさん、
オミキはありません。
どうすれば、お帰りくださいますか?」
「『こ』『ろ』『す』…うそ…」
「もう止めろよ!!
×西!!おまえだろ、やめろよ」
「私じゃない!!」
「もう、やだ」(泣き声)
「×村!静かにして!!」
「こっくりさん、こっくりさん、
許してください。
もう、おかえりください」
「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください」
「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください」
「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください」
「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください」
「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください」
「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください」
「…『ひ』『と』『り』」
「こっくりさん、こっくりさん、
『一人』なんですか?」
「…『ひ』…『と』…『り』…『だ』『け』…『つ』…『れ』『て』…『い』『く』」
「やだ、やだ、やだ!!」
「(泣き声)」
「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください」
「まだ、動いてる!!」
「『ほ』…『か』『は』…」
「…」
「『こ』『ろ』『す』」
「こっくりさん、こっくりさん、許してください」
「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください」
「こっくりさん、こっくりさん、許してください」
「こっくりさん、こっくりさん、許してください」
「こっくりさん、こっくりさん、お帰りください」
「『いいえ』」
「もう、いや!!」
「(指を)離しちゃ駄目!!」
「もう、知らない!!私帰る!!」
「離しちゃった…」
「こっくりさん、こっくりさん、許してください」
「…動かないよ…」
「どうしよう、ねえ!どうしよう!!」
「私、知らないよ!私、しらない!!」
「やだ、(戸が)開かない!!」
「鍵かけられちゃったんだ!!!」
「どうしよう!ねえ、どうしよう!!」
「こっくりさん、こっくりさん、許してください」
「いつまでやってんだよ!」
「だって、帰ってもらわなきゃ!!」
「窓は!?」
「こっくりさん、こっくりさん、許してください」
シャッ(カーテンレールの音)
「いやあぁぁぁぁ!!!」
「キャァー!!」
「こっくりさん、こっくり…」
テープはここで切れていた。
もう片面にはなにも録音されていない。
遺体の状況から、
各自の手にした血にまみれたカッター、
定規、縦笛、箒、などから、
互いに殺し合ったようにも見えた。
学校では、
各教室に鍵が取り付けられていたが、
数年前から、実際に鍵をかけるのは、
使われていない教室だけになっていた。
事件当夜も、
現場となった教室の鍵は開けられたままだった。
ろうそくは途中で消えており、
もし、ろうそくの明かりが点いていれば、
用務員が見回りをする際に気が付いたはずである。
また、窓には全て鍵がかけられていたが、
窓の外側には、一つだけ、
子供のものと思われる、
血の手形が残されている。
不思議なことに、
教室からは四人の遺体が発見されたが、
遺体のどの指紋もその手形とは一致していない。
声紋鑑定の結果、
テープには五人の声が録音されていた。
教員、生徒に確認をした所、
テープ中の
「○ッちゃん」
と呼ばれる女子生徒を知るものは、
誰も居なかった。
この事件の真相は、
未だ解明されていない。
作者退会会員
巷より蒐集せしもの。