短編2
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妻壺

これは千葉の知人から聞いた話です。

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私には妻が居た。

切っ掛けは妻がオークションサイトで買った怪しい外国の壺だった。

妻によればこの壺は絶対に開けてはならない壺らしい。

しかし開けなければ逆に家に福をもたらすという。

馬鹿馬鹿しいと思って即日壺の口に貼ってあった御札みたいなもんを剥がしてみた。

中には気味の悪いものが入っていた。

気分が悪くなりさっきの御札を探すが古い紙質のせいなのか剥がした時にバラバラになっていた。

御札の代わりにスーパーのチラシを壺の口に貼り付けてやった。

異変が起こったのは次の日。

会社から帰宅した時だった。

妻が笑顔なのだ。

昨日あんなイタズラをされたのに・・・

いや、仮に何か良い事があった日でもこんな満面の笑みを浮かべた事は一度として無い。

その時だった。

「騙されないで!そいつは私じゃない!そいつは私の偽物なんだ!」

妻の声だった。

リビングの方から聞こえて来た。

ガチャン

リビングからモップとヘルメットを装備した妻が飛び出して来た。

満面の笑みを浮かべた妻へ完全武装した妻が襲い掛かる。

グキリ

という嫌な音を立てて満面の笑みを浮かべた妻の腕が完全武装した妻の首に突き刺さる。

完全武装した妻の首から血が滴り腕が抜かれるとダランと嫌な方向へと垂れ下がりそのまま床へと転がった。

満面の笑みを浮かべた妻が囁く。

「これはあの壺から出現した邪悪な怪異で私を殺して乗っ取ろうとしていたのよ。

危ない所だったわ。」

そう淡々と語る。

床へ転がった妻の死体はだんだんと肉が崩れていきやがて毛の無い犬のミイラの様な姿になった。

それは壺の中に入っていたあのミイラそのものだった。

ミイラが呻き声を発した。

「あなた・・・逃げて・・・」

程なくして満面の笑みを浮かべた妻とは離婚した。

その妻はすぐに誰かと再婚したらしいが。

そして、この壺の中にあったミイラを私は妻と呼んで一緒に暮らしている。

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