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日常怪談「コップ」(続・傘)

短編2
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日常怪談「コップ」(続・傘)

今は亡き友人の彼であるが、振り返ってみるとこれまでにいろんな変わったものを僕に見せてくれた。

その中で特に印象に残っているというか、後味が悪い話といえば、「汗をかくコップ」の話がすぐに思いついた。

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ある日彼の家に遊びに行くと、キンキンに冷えた麦茶のコップを2つ、お盆で差し出された。

「喉渇いただろ」

僕はその通りだったので、そのうちのひとつを手に取って勢いよく飲んだ。

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しかし、次の瞬間にはそのほとんどを吹き出してしまった。

キンキンに冷えていると思っていた麦茶は、まるでやかんで沸かしたように熱かったのだ。

コップを持った時には全然冷たかったのに、中身だけが熱々なのが不思議で僕は首を傾げた。

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そんな俺を見て、彼は腹を押さえて大笑いした。

「そのコップはな、汗をかくコップなのさ」

お前は見事にハズレを引いたわけだ。彼は僕を覗き込むように見て、また笑った。

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お盆に並べた2つのコップを見てみると、僕の選ばなかった方のコップには氷が入っていた。

しかし、僕の選んだ中身だけが熱々のコップには当然氷は入っていなかった。

それなのに、2つともが同じように、コップの表面が結露していた。

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僕はその訳を彼に聞いてみると、だから汗をかくって言ったじゃないか、と返ってきた。

「お前が選んだコップについている水滴は、結露じゃなくて、汗なんだよ。そう考えると、中身が熱々なのも、納得いくだろ?」

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「でも、コップを持った時には全然熱くなかったぞ。それはどうしてなんだ?」

僕は手についた水滴を必死に服で拭いながら、彼にそう聞いた。

彼はとびっきりの笑顔で、こう答えた。

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「俺はさっき、そのコップを落として割りそうになったんだ。そのコップが冷たいのは、きっと冷や汗だからだろう」

たしかに、口に含んだ麦茶は、どことなく苦い味がしていた。

それも彼が、そのコップにストレスをかけたせいなのだろうか。

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そんな彼も、もうこの世からいなくなってしまった。

もしかしたら彼は、すでに何かに転生しているかもしれない。

しかしたとえどんな姿になろうと、文字通り「後味の悪い」そんなエピソードと一緒に、僕は彼のことをいつまでも忘れないだろう。

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