好きだった彼が死んだ。
交通事故だ。
彼の葬儀で泣いた。
「カリスマ美容師になる」
子供みたいな笑顔で語る笑顔が眩しかった。
眩しすぎた。美容師になる夢を諦めた私には。
彼の遺影の前に、彼が『美味しい』って言ってくれた。私の自慢料理のコンソメスープと、彼が愛用してたハサミ。
(跡を追うよ)
彼のハサミを使って逝こうと思ったが辞めた。
彼のハサミを血で汚したく無い。
彼のハサミは髪を切る為の物。
私を切る為の物では無い。
彼が使ってた携帯電話を胸ポケットに入れて、彼が好きって褒めてくれた、ブラウス、ミニスカート。
縄に首を掛けようとした時。
シャリーン
シャリーン
シャリーン
何かが何度か鳴った。
彼の携帯電話に付いたストラップ。
彼が好きだったガムランボール。
それに気付いた私は、つい、携帯電話を見た。
電源がついてる。消したハズなのに…。
不在着信。
『発信番号通知不可能』
そんな筈は無い。
この携帯は解約済み。
あ、そうか。
私は彼の携帯電話のストラップを外して握りしめた。
まだ、生きなきゃ。
きっと、不思議な着信は彼だ。
ガムランボールが鳴ったから。
私は今、再び美容師を目指している。
彼が好きだったガムランボールのストラップを付けて。
ガムランボール。
そのデザインのモチーフは『アリス』
作者蘭ユウジ
初めて『三題怪談』に挑戦してみます。