短編1
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好きだった彼(三題怪談)

好きだった彼が死んだ。

交通事故だ。

彼の葬儀で泣いた。

「カリスマ美容師になる」

子供みたいな笑顔で語る笑顔が眩しかった。

眩しすぎた。美容師になる夢を諦めた私には。

彼の遺影の前に、彼が『美味しい』って言ってくれた。私の自慢料理のコンソメスープと、彼が愛用してたハサミ。

(跡を追うよ)

彼のハサミを使って逝こうと思ったが辞めた。

彼のハサミを血で汚したく無い。

彼のハサミは髪を切る為の物。

私を切る為の物では無い。

彼が使ってた携帯電話を胸ポケットに入れて、彼が好きって褒めてくれた、ブラウス、ミニスカート。

縄に首を掛けようとした時。

シャリーン

シャリーン

シャリーン

何かが何度か鳴った。

彼の携帯電話に付いたストラップ。

彼が好きだったガムランボール。

それに気付いた私は、つい、携帯電話を見た。

電源がついてる。消したハズなのに…。

不在着信。

『発信番号通知不可能』

そんな筈は無い。

この携帯は解約済み。

あ、そうか。

私は彼の携帯電話のストラップを外して握りしめた。

まだ、生きなきゃ。

きっと、不思議な着信は彼だ。

ガムランボールが鳴ったから。

私は今、再び美容師を目指している。

彼が好きだったガムランボールのストラップを付けて。

ガムランボール。

そのデザインのモチーフは『アリス』

Concrete
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