「このシリーズも久しぶりだなあ」
「前に一つ別次元の私達が怪談について語る話があったらしいけれど?」
「別の次元なんてあるわけないよ。今日はどんな話をしてくれるの?次は咲ちゃんの番でしょ?」
「えっと。今回の話のテーマは怪異と人間の共生、かしらね。よく居るでしょう?幽霊と人間が共生できる、とか超自然的なものと仲良くできるって人。そんな人達にはぜひ聞いて欲しい。そんな話よ」
この3人は「オカルト研究会」を自称し、今も他の生徒が帰った後、空き教室で勝手に集まりお喋りをするのが日課になっている。3人共女子高校生である。
いつもぼーっとしていて、少し抜けている楓
少し口が悪く、考え方にどこか時代を感じさせる舞
オカルト知識が豊富だが、その内容が少し偏っている咲。
この物語は、その3人の間で語られた数多の怪談を文字におこしたものである。
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「さあ裕介、ここが今日から俺たちが過ごすことになる場所だ」
「‥田舎は嫌なんだけどなあ」
「そんな事言うなよ。自然が多くて住みやすそうな所じゃあないか。暇な時は裏山にでも行って遊びに行けばいいさ。来週から学校だ。今度は新しい友達できるといいな。お父さんは荷物の整理があるから、裕介はこの村を見てくるといい」
僕は裕介。どこにでもいるであろう中学1年生だ。母さんが小さい頃に死んでしまった僕は、男で一つで父さんに育てられた。別にそのことに関して文句を言うつもりはない。
父親の仕事の都合なのか僕は今日、この村に引っ越してきた。今の季節は夏。暑くてしょうがない。周りには田んぼと畑(違いがわからない)しかない。民家はちらほらあるけど、よくもまあこの辺の人達はこんな場所に住んでいられるものだ。僕が前にいた町は周りになんでもあった。授業終わりにはゲームセンターに一人で行って遊ぶこともできたし、カラオケ、バッティングセンター、映画館‥ここにはなんにもないじゃないか。そもそも自然と触れ合って遊ぶなんていつの時代の台詞だ。土は触ると汚れるし、虫は気持ち悪いし、川の水なんか冷たいしわざわざそんな場所で遊びたいなんて思わないだろう。馬鹿じゃないのか。
一応こんな場所にも学校はあるみたいだな。まあこんな田舎の学校に通う生徒なんざ、動物園から抜け出した猿みたいな奴しかいないんだろうな。正直面倒くさい。かかわりたくない。あー前の家に戻りたい。前の学校には戻りたくないけど、むこうはいくらでも暇が潰せたし、こんなど田舎じゃ‥
こんな僕だが、一つ趣味がある。絵を書く事だ。頭の中に浮かんだイメージを浸すらスケッチブックにぶつける。決まった物を模写する訳じゃない。だから他人が僕の絵を理解してくれない事も多々ある。それはしょうがない。頭の悪い凡人にはわからないさ。だけど、この絵は僕の存在証明だ。馬鹿にする奴は許さない。
本当は山になんか登りたくはなかったが、他に行く場所がなかった僕はそこに行くしかなかった。外は暑すぎる。山の木陰なら少しは涼しいだろう。
あまり手入れされていないであろう山の中は、木々が生い茂りよくわからない野草で一杯だった。一つ道を間違えたら遭難するのではないかという不安があったが、所詮は里山だ。いざとなったら下に降りていけば帰れるだろうと軽い気持ちで進んでいくと、ひらけた場所に出た。ちょうど木が日光をある程度遮ってくれて涼しい。成程。ここが山登りの休憩スペースなのか。そうおもったが、ボロい立て看板が立ててあった。
「この場所への立ち入りを禁ず。間違って入ってしまった者はすぐ立ち去れ」
なんだこれ?危ないからか?野生動物とかが出るならそう記載するはずだし、落石とか土砂崩れとかもなさそうだ。危険そうな物もないし、何故入ったらいけないんだろう。周りを見渡すと、いかにも素人が作ったであろう手作りの木の椅子が3つおいてあるだけ。なんなんだろう。まあ今日の所は帰るか‥
「ただいま」
「おう帰ったか。山はどうだった?」
「汚いし暑いし最悪。あ、でもなんか変な場所があった。立ち入り禁止とか書いてあって。やっぱり田舎は嫌いだ。街に戻りたいよ」
「そんな事言わないでくれよ。慣れたらきっとこの村が好きになるさ」
学校にて。
「さて。今日はみんなに転校生を紹介する。裕介君だ。自己紹介をしてください」
「えー。裕介です。こんな田舎には来たくなかったんですけど、父親の都合で引っ越してきました。普通に生活出来ればいいんで、みんな僕の邪魔をしないでくださいね。田舎に染まった人達とはあんまり関わりたくないんで。以上」
「おいおいなんだよあいつ。俺らの事馬鹿にしてんのか?」
「感じ悪いなあ」
「まあまあそう言わず。みんな仲良くしてくださいね。では授業を‥」
あんな自己紹介をしたのは単純にこんな所に住む人間と関わりたくなかったからだ。深い理由はない。
僕は好きな絵が描ければそれでいいんだ。
学校後、気がつくとあの山に来ていた。自然と足はあの立ち入り禁止の場所に向かう。
外はうだるような暑さなのに、不思議とここは涼しい。そうだ。どうせ誰もこないなら、この場所で絵を書こう。学校からそんなに遠くないし、場所の雰囲気が良い。立ち入り禁止なら地元のやつが来ることもないだろう。
そんな事を考えていると、近くの茂みが揺れた。野生動物か?そう考えてとっさに後ずさりすると、そこにいたのは女の子だった。
「誰だ君は!びっくりするじゃないか!」
「ア‥ア‥」
僕が近づこうとすると、女の子は驚いた様子で逃げて行ってしまった。ちらっとみた服装はボロボロで、擦り切れた服、いやもはや破れかけた布といったほうが正しい。年は中学生くらいか?髪もぼさぼさだった。
「なんだあいつ‥クラスにはいなかったみたいだけど‥まあいいや。明日からここで描く事にしよう」
「ただいま」
「おかえり。学校はどうだった?」
「僕はあんな奴らとつるむ気はないよ。邪魔だけしないように言っといた」
「またお前はそうやって‥まあお前の人生だ。好きにしなさい」
そんな訳で僕に学校での友達はできなかった。いや別に作るつもりもないのだが。もっとも、最初は向こうの方から誘いをかけてくれる事もあった。
「おい裕介!野球しようぜ!人が足らないんだよ」
「嫌だよ野球なんて。服が汚れるし。僕は動きたくないんだ。バッティングセンターなら行くけど」
「バッティングセンターなんてこの辺にはないよ」
「まったく。これだから田舎は‥」
こんなやりとりは一例だ。似たような会話はいくらでもある。こんな事を続けていたら僕に声をかけてくる奴はいなくなった。
また例の場所に来る。スケッチブックにひたすらペンを走らせていると、また遠くの茂みが揺れる。2回目は流石に驚かない。僕は声を少し大きくして言った
「出てこいよ。もう驚かないぜ」
「ア‥」
やっぱり例の女の子だ。相変わらず距離はあるものの、今度は逃げていかない。服装が昨日と同じだ。なんだっけあれ。麻?みたいな布を体にまいている。
「何の用?僕は忙しいんだけど」
「ア‥ア‥ト」
「なんだよ。はっきり言えよ」
僕は近づこうとした。すると、女の子は逃げていってしまった。
「なんだよ全く‥」
次の日の授業後、また例の場所に来る。椅子に座って絵を書いていると、また同じ女の子がやってきた。今度は茂みに隠れておらず、昨日に比べ距離も少し近い。
「この前からなんなのさ。僕に言いたいことがあるなら言いなよ」
「ア‥ア‥アト‥アアト‥」
「なに?アート?この絵の事?」
「う‥」
「僕の絵を見てアートと言ってくれるのかい?うれしいじゃないか。もっと近くで見るかい?」
「ア‥」
女の子が少し近づいてきた。この時、女の子の体や顔がを初めて近くでみた。正直かわいい。顔には中学生相応のあどけなさがある。体はまだ小学生みたいだけど。まとっている服は遠目に見た時と同じだったが、所々破れており下の真っ白な肌が見えてしまっており、目のやり場に困る。
「アト‥ヨ‥ツ‥」
「なに?なんて言っているの?」
僕はスケッチブックを開いて見せようとすると、彼女はいきなり飛び上がり、逃げていってしまった。
「まあ少し話せたんだ。その内また会うだろう。まさか僕の絵を理解してくれるとはね‥少し頭が悪いみたいだったけど」
「ただいま」
「おかえり。最近山に行ってるみたいだけど、何をしてるんだい?」
「僕の絵を理解してくれた子がいるんだよ」
「そうなんだ。そりゃあよかったな」
次の日、また例の場所に来る。今度は女の子は3つある椅子の一番端の椅子に座っていた。ちなみに僕は反対側の端にある椅子を使っている。
「また会ったね。今日は僕が前に書いたスケッチブックを持ってきたよ」
「ア‥」
「僕が近寄ると逃げちゃうからね。ここにおいておくよ。見たければ見るがいいさ」
女の子は僕が離れるとスケッチブックを開いて見始めた。
「ス‥き‥」
「なんだって?」
「これ‥す‥き‥」
「うれしいじゃないか。やっぱり作品を褒められるのは作者として気分が良いからね。その絵は配色にちゃんと意味があってさ‥」
僕はその女の子に僕の絵について色々と話した。女の子は時々椅子から立ち上がりこちらに来ようとしていたみたいだったが、何故かこちらには来れないようだった。
「あのさ、せっかくなんだからもう一つの椅子に座ればいいじゃないか。なんで距離をとるのさ」
「‥まだ‥まだ‥」
「変わった子だなあ。名前はなんていうのさ」
「な‥まえ‥?‥」
「なんだ。やっぱりどっか頭がおかしいのかな。まあいいさ。とにかくそこで僕の絵を見てるといいよ。今日もしばらくここで絵を書いてるから」
その子は僕をじっと見ていた。このやりとりから既に2時間経っているはずなのだが、その子はどこかに行く様子もなく、ひたすら僕を見続けていた。
「さて。もうすぐ暗くなるから、僕は帰るよ。君も帰りな」
「あしたも‥くる‥?」
「え。まあ雨が降らない限りは来る予定だけど」
「よか‥った‥もう‥すぐ」
そう言ったかと思うとその子は山を登っていった。あっちの方に家があるんだろうか。しかし人と会話をしたのは久しぶりだ。案外悪いものじゃない。僕の絵を褒めてくれたし、なんかあげようか。そういやあの格好、やっぱり見てられないよな。僕も中学生だし、あの子の体が見えてしまうのは色々と困る。万が一誰か来た時に犯罪と思われても怖いし。確かもう着なくなった服が‥
次の日、例の場所に行く途中でクラスの連中を見かけた。話たくもなかったから、歩くスピードを速めた。むこうは僕に気がついた様子だったが、関わりたくないから無視する事にした。
例の場所につくと、今日もあの子が先に椅子に座っていた。僕の定位置のすぐ隣だ。昨日より距離が近い。
「こん‥にちは‥」
「挨拶が出来るようになったのかい?すごいなあ。最初からは考えられないよ。今日は君にプレゼントがあってね。その格好は不味いから着替えるといい。シャツとジャージ。今の格好よりはマシだろ」
「きれば‥いいの‥?」
その場で服を脱ぎはじめて、僕はあわてて逃げようとした。その時、彼女が叫んだ
「まって!!にげないデ!!」
これまでの様子からは考えられないほどしっかりとした声だった。僕は驚いてその場から動けなくなった。そのまま彼女は僕の目の前で着替え終わり(下着もつけていなかった)元の椅子に座った。
「え‥かいて‥ここにいて‥」
「それはいいけど、君は一体誰なんだ‥?流石にこのままって訳にもいかないだろ」
「わたしも‥よくわからない‥ずっとここにいる‥このやまからでられない‥でももうすぐ‥」
「もうすぐなんだい?」
「あ‥なんでもない‥あなたがだいじ」
「え?」
「あなた、だいじ、だいじだから‥」
「な、なんだいきなり」
「わたしあなたすき、だからあしたもきて!」
いつの間にか、彼女は僕のすぐ目の前で笑っていた
僕が起き上がろうとすると、少しだけ後ずさる。
「ねえ前から思ってたんだけどさ、どうして僕が近づこうとすると離れるの?」
「いまはこれだけしかちかよれない。でもあしたになればもっと」
それからは各々いつも通りの過ごし方をし、僕は家に帰る。
「おいあれ裕介じゃね?」
「へーあんなヤツでも山に登ることなんかあるんや。あれそういやこの辺って立ち入り禁止の場所なかったっけ?」
「あんなところ行かねえだろ。遊べる物何もないし危ないらしいし。まあ別に俺らからしたら大した事ないんだけど」
「誰かそれあいつに話したか?」
「別に言わなくてよくね?余所者だし付き合い悪いし」
僕は家に帰って色々と調べた。いや困った。多分話し方やこれまでの態度からみて、あの子は人間じゃないな。色々と調べたが、山にはその神様みたいな存在がいるらしい。しかも女性が多いとか。という事はあの子は神様のパチもんみたいなものか。だから服も変だったのか。というかそんな存在が僕に好意を抱いてるというこの状況、地味にヤバくないか?まあでも人間じゃないけど好意を向けられるというのは悪いものじゃないし、僕に危害を加える様子も無いし、しばらくこのままで過ごしてみようか。あの子かわいいし。
次の日、例の場所に行こうとして山の入口で上を見上げると、あの子が山を降りてきてこっちに来ようとしていた。例の場所以外であの子を見るのは初めてだったから、呼ぼうとすると別の声が聞こえた。あのクラスメイト達だ。
「こいつ!山から出ようとしてやがる!おいお前ら石をぶつけるんだ!あいつをこっちに来させるな!」
「おっけー!いつもみたいに追い払えばいいんだよなw今日は何発あてられるか競争しようぜ」
そう言いながら落ちている石をその子にむかって投げて始めた。石は何発か彼女にあたり、痛そうにしている。僕はいつもの様に無視をしようとしたが、自然に体が動いていた。
「お前ら何やってんだ!」
「お、裕介じゃないか。お前もやれよ。この村のルールみたいなもんだ。あいつは人間じゃねえからな。こうやって追い払わないと‥」
「うるさい!確かにあの子は人間じゃないけど僕の理解者だ!手を出すんじゃない!」
「うわなんだこいつ‥あ、あいつもどっかいった。けっ。余所者同士仲良くしてろよな」
クラスメイトは帰っていった。僕はたまらず例の場所へ急ぐ。
彼女は例の場所にいた。僕の定位置の椅子に座って泣いていた。石が当たったのか、所々傷が出来て血が出ている。その血は青い色をしていた。やっぱり人間じゃないんだな。
「いたいよぅ‥」
「ほら。これ絆創膏ってやつ。傷口に貼りな。ひどい奴らだなあ君に石を投げるなんて」
「いつも‥いつもそう‥かなしい‥」
「大丈夫さ。これからは僕がいる。今までは一人だったかもしれないけど、これからは僕がそばにいるさ。僕に何ができるかわからないけど、一人よりはマシだろ」
「ほんと‥?あしたもきてくれる‥?」
「あぁ。当たり前じゃないか。雨がふったって来てやるよ。あ、そうだ。明日新しいスケッチブックと色鉛筆をもってきてやるよ。これからは一緒に絵を書くんだ。君と一緒にね」
「じゃあ‥またあした‥!」
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「良い話だなぁ。泣けてくるぜ」
「まあ。怪異とひねくれた人間のハートフルストーリーね。これを怪談と言っていいのか解らないけれど」
「ハッピーエンドっていいよね。お話はこうでなくっちゃ」
「もう少しだけ続くから、せっかくなら最後まで聞いて欲しいのだけれど」
「話のオチはもうこれだろ。まあ聞くだけ聞いてやるよ」
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次の日、僕はまた例の場所に行く。彼女が待っていてくれた。
「ありがとう。だいぶよくなった。ありがとう」
「そりゃ何よりだ。さて、今日は君の分のスケッチブックと色鉛筆をもってきたよ。最初は簡単な物から書いてみるといい。それから‥」
彼女は笑っている。その笑顔の口の中から、尖った刃の様な物が見えた。
この時間の少し前、村の役所で裕介の父親が話を聞いている。
「お呼び立てして申し訳ございません」
「いえ、裕介に何かあったんですか?」
「あの、昨日息子が気になる事を言っていましてね。裕介君が女の子と一緒にいたと」
「あー言ってましたね。なんでも絵の事で気が合うらしくて。嬉しい限りです。遅かれ早かれ解るとは思うので言ってしまうと、裕介は前の学校で問題を起こしましてね。なんでも相手に絵を馬鹿にされたらしく、暴力沙汰に‥新しい場所で心機一転ということでこの場所に引っ越して来たんですが、本人には私の仕事の都合という事にしてあります。だから友達が出来て本当に‥」
「あの山に立ち入り禁止区域があるのはご存知ですか?」
「いえ。そうなんですか?」
「やっぱりご存知なかった。実はですね。あの山にはよくない物が出るんですよ。野生動物とかそういう類ではなく、強いて言うなら妖怪?というか‥」
「いきなり現実離れした話をしますね」
「いやあ。田舎というものはね。超自然的なものとの境が曖昧になるんですよ。まあ普通は心配いりません。そいつは山の中から出られませんし、最初に出没する場所には立ち入り禁止の注意がしてあります」
「最初‥?というと?」
「あいつは人間の生命力を吸収して成長するんですよ。まあ事情を知っている人間はまずあんな場所に近づきませんし、まともな人間であれば立ち入り禁止の看板を見たら引き返します。人間の持つ生命力はあいつを寄せ付けません。近寄る事すらできないはずです。しかし、それでも関係を続けてしまうと‥まあそんな人はよっぽどいないとは思いますけど、段々と近寄る事が出来るようになり、最後には喰われてしまうんです。だから地元の子供達には、山に入った時にそいつを見つけたら逃げるか追い払えと言ってあるんです。てっきりあなたの息子さんもその話は息子達から聞いているものかと‥」
父親は走り出していた。
例の場所に駆けつけた父親は、首から大量の血を流して倒れる息子と、血にそまったスケッチブック、息子の死体を抱えて立ち去ろうとする少女、いや、「それ」は父親の方を見てにやりと笑い、その姿は少女から巨大なトカゲに変わり、さらに蛇へと変わり、ナメクジの姿になり、最後は霧の様に消えていく元少女の姿を見ることしか出来なかった。
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「話は終わりよ」
「ええ‥」
「なんつー話だよ。いやまあ展開的には珍しくねえかもだけど」
「因みにこの妖怪、台詞を追ってくと解るけれど最初っから人間を獲物としか見てないわよ」
「どういう事なの?途中いい雰囲気になってなかったっけ?」
「それは主人公がそう考えている、というかそう受け取ってるだけのことよ。例えば妖怪のこれ好き!という台詞だって、獲物として人間が好きという意味かもしれないじゃない。私達だって、ステーキが好き、猫が好き、とか同じ好きという単語をよく使うけれど、ステーキを可愛がるわけじゃないし、猫を食べるわけでもないでしょう?まあ本当に猫を食べる人もいるかもしれないけれど、その真意は誰にもわからないのよ」
「その発想が出てくるお前がこえーよ」
「とにかく、超自然的なものは私達とは文字通り次元が違うの。間違ってもわかりあえる、なんて考えない事ね。それは一人の人間の思い込みでしかないし、傲慢以外の何物でもないわ。なにより私達はそういった存在の前では無力でしかないのだから」
「なんか悲しいね。わかりあえてもいいのに」
「中には本当にそういう事が出来る人もいるかもしれないけど、普通は無理よ。あちらの存在が私達に接触を試みる時は、何か狙いのある事がほとんどね。幽霊や妖怪なんて関わらない事が一番よ本当に」
「おい、ていうか最初の話のテーマと思いっきりちがくねえか?なにが共生だよ。詐欺もいい所じゃねえか。聞いてる人怒るぞ」
「そもそも私がそんな平和な話をする訳がないじゃないの。付き合い長いんだからいい加減察しなさいよ」
作者嘘猫
心霊的な怖い話を書いていなかったので書いてみました。こんな話はどうでしょう。どうですか。みなさんも身近に幽霊とわかりあっている、超自然的存在と通じ合う事ができる、そう主張する人間はいませんか?私の知り合いにはおりますが‥