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短編1
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真っ暗な居間で

私は古い和室と分かる、格子状で塗装の剥げ掛かった赤か朱色の木枠と、そこに嵌め込まれた細い硝子の引き戸が有る居間に、母と座っている。

明らかに日は暮れているのだが、そこの空間には何故か照明が灯っておらず、私もぶら下がっているだろう照明器具の紐やスイッチに手を触れないどころか、天井を見上げもしない。

なのに、煌々(こうこう)と光を放つのが有る………その古かろう部屋に置かれているのが、不釣り合いな薄型テレビだった。

内輪受けの話でギャラリーがゲラゲラと笑い転げていて、オレンジや赤を基調とした暖色のスタジオセット、色とりどりのテロップに10年~15年程前から変わらない様なタレントの顔ぶれと、嫌な意味で見慣れた番組風景で不釣り合いである。

そんな中、その赤か朱色の塗装の剥げ掛かった木枠の引き戸を隔てて、「………ギー、………ギー」と明らかに誰かの通る足音が響くのに、誰も居ない瞬間が到来し、何故か私は嬉々として、唖然とする母に向かって、「ほら、何も居ないのに足音がするでしょ!ほら、聞こえるよね!」と狂った様に説明する。

そこで目が覚めた。

あの引き戸は、明らかに動画サイトで心霊スポットの廃屋か事故物件で検証する際に出て来た奴と似ている為、起き上がった私は、「遂に夢に出て来た」と見えない存在が夢には出現した事を何故か喜んだ。

Concrete
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