短編1
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「扇風機」

暑い…。エアコンのない夏は地獄だ。

急にエアコンが壊れて、修理に1週間かかるといわれてからもう3日が経つ。

その間は扇風機だけで凌いでいたが、流石にもう限界に近い。

俺は頼る業者を間違えたことを後悔しながら、アイスを取りに台所へいった。

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そしてアイスを片手に戻ってきた俺は、部屋の中央に置いた扇風機を見て驚いた。

向きを固定していたはずの扇風機の頭の部分は、まるで首を回す運動のように上下左右にぐるぐるとやっているのだ。

しばらく俺はそばに立っていたが、俺が見ているのに気づくと、はっとした感じですぐに元の動かない扇風機に戻った。

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そうか、お前もこの3日間働きっぱなしだったもんな。肩も凝ったろうに。

俺はホームセンターで材料を揃えて、扇風機の頭を乗せる台を作ってやった。

それ以降、扇風機が動くところを見ることはなかった。しかし心なしか、送られてくる風が以前よりも優しく感じた。

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俺は扇風機と心通った気がした。

そう思っていた俺だったが、風があまりにも生温いので、3日後に熱中症で倒れた。

床に伏した俺が薄れゆく意識の中見たのは、まるで喜んでいるように首を振る、扇風機の姿だった。

Concrete
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