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更にもう一つのヤマノケ 完全版

長編9
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更にもう一つのヤマノケ 完全版

皆さんは伝説の怖話、「ヤマノケ」そして、「もう一つのヤマノケ」をご存知だろうか?

知らない方のために一応コメント欄にでも添付しておきます。

今回お話しすることは、つい先日俺の周りでおこった出来事がこの「ヤマノケシリーズ」に非常に酷似していた事から(嘘)、皆さんにも注意して欲しいという意味で書いてみました。

1

その日俺は後輩の山村龍と、居酒屋で呑み、美人ママがいると噂のラウンジでボッタクられて、お互い無言のまま帰路についていた。(もちろん飲酒運転)

夜も更けていて、道ゆく人や車もまばらだった。国道をそれて俺たちの車は暗い山道をどんどん進んでいった。

給料日までまだ10日もあるのにこんな身包みはがされちまって…これからどうやって生きていこう。後輩に払わせるわけにもいかないし、やっぱカッコつけて全額払ったのはマズかったかな?

カッコ悪いけど、龍に一万借りようかしら…などと考えながら龍をチラ見すると、バカみたいに赤い顔をした龍がタバコに火をつけていた。

「おう、てめえ!何やってんだよ?!この車禁煙だぞコラ!」

「あっ!兄貴さーせん!忘れてました!」

慌てた龍が咥えていた火のついたタバコを、あろう事かシートとシートの隙間に落としやがった。

「おい!てめえこんにゃろ!ブッコロされてーか!!」

「さーせん!さーせん!さーせん!」

龍は必死にその隙間へ手をつっこもうとするが、グローブみたいな分厚い拳が狭い空間に入るはずもなく、次第に車内は焦げくさいにおいで充満し始めた。

「こ、ここ!これしかない!」

すると追い込まれた龍は信じられない行動に出た。なんとホルダーにささっていた缶ビールを俺の新車のシートにブチまけたのだ。

とりあえず車を山中の路肩にとめ、土下座する龍の頭をボコボコにしていたら、森の中から女の悲鳴のようなものが聞こえた。

「な、なんだよ今の?」

「うう…。これはたぶん鹿ッス。鹿が鳴いたらこんな声だって前にも教えたじゃないですか兄貴」

「あんだとてめえ偉そうに!まだ殴られたいか?ああ?」

「ちょっとまってください静かに!なんか聞こえません?」

耳をすますと確かに暗い森の奥から、ガサ、ガサ、と何かが近づいてくるような音がする。しかもまるでぴょんぴょんと飛び跳ねているような音だ。

「鹿か?」

「これはたぶん違います…動きが鹿とも猪とも似ていない…これってもしかして…」

次の瞬間、龍は俺の車を指差して悲鳴をあげた。「うわー!兄貴!なにやってんすか?!か、カラス!前輪でカラス轢いちゃってますやん!」

見ると、確かに黒いカラスが俺の車に踏み潰されている。腹はねじれ、クチバシはもげ、目玉も飛び出していた。

「はやく!はやく逃げないとヤバイすよ兄貴!これはヤマノケッすよ!カラス轢いちゃダメですってバカだなー!何やってんすかアンタ?!!」

俺と龍は急いで車に乗り込んだ。エンジンがかかった事に安堵した瞬間、フロントガラスに何か巨大なモノがぶつかってきた。

どすうううん!!

そいつはボンネットに飛びのるとフロントガラスを叩いてきた。それはいままで見てきた動物とは明らかに違う。毛むくじゃらの太い腕にガサガサの皮膚で、胸のあたりにとんでもなく大きな顔がついていた。

そいつはドロドロになったガラスを撫でるようにしながら車の中を覗きこんできて、大きく口を開けバラバラな歯を見せた。

「おい龍!大丈夫か?!」

後輩の身を案じ隣りを見ると、龍も大きな口を開けて、ぼろぼろと涙を流していた。

俺はしばらく気を失っていたようだ。

数分かもしれないし、もっとかもしれない。一瞬、夢かと期待したが、フロントガラスはドロドロで、ヒビも入っていた。新車なのに。

幸い、近くにあのバケモノの姿はない。

隣りの龍はまだ寝ているようで、夢でも見ているのか何やらぶつぶつ言っている。

耳を近づけると、「ハイレタ、ハイレタ、ハイレタ、ハイレタ」などと、意味不明な言葉を繰り返すばかりだ。

「ちょっと待て!『ハイレタ…』って、何かどっかで聞いた事があるぞ?」次の瞬間俺はハッ!とした。

急いで最近はアクセスしていなかった、日本一のホラー小説サイト「怖話」を立ち上げ、「特選の話」から「ヤマノケ」という話を探しだした。

ヤマノケを読み終わり、ついでに「もう一つのヤマノケ」も読み終わった瞬間、俺はアクセルを目一杯にふみ込んだ。

「寺!寺!寺はどこだ?!龍がやられた!!警察も病院もダメだ!寺!寺に連れてかねーと!!」

5分ほど走ると幹線道路にでたので少し安心した。俺は車を止めて、スマホのホームボタンを長押しした。

「へい、Siri!一番近くのお寺を探して!」

Siri「すみません、聴き取れませんでした」

俺は3度目の呼びかけでなんとかヒットしてくれた◯◯寺へ向けて、車を飛ばしていた。

瞬きをするたび、あの白い毛むくじゃらの化け物が目の奥に映り込む。隣りでは龍が起きているのか寝ているのか、口元に泡を作りながらまだぶつぶつと独り言を繰り返している。

独り言はいつのまにか、「ハイレタ、ハイレタ」から「てん…そう…めつ…てん…そう…めつ…」に変わっていて、いよいよあのヤマノケの話と同じようになってきた。ただ、一つの違和感だけを除いてだが。

「龍しっかりしろ!!すまん俺のせいだ、待ってろ、すぐに助けてやるからな!」

俺は更にアクセルをふみ込んだ。

幹線道路を外れて少し走ると、寝静まった人家が立ち並び、その先に目当ての寺はあった。

こんな時間だが寺の横にある建物に薄い灯りがついていたので、俺は龍を引きずりながらそのドアを叩いた。

すると、つるっ禿げ(失礼)のいかにもな顔をした住職が上下スウェット姿で出てきた。最初めちゃくちゃ眠たそうな顔をしていたが、龍を見た途端、鬼のような顔になり、「おまえら!いったい何をした?!!」と、なぜか思いっきり平手打ちされた。

俺は平手打ちが痛かったのと、助けてもらえるかもしれないという安堵感から、膝から崩れ落ち、号泣した。

「泣いとらんで、はよそいつを運べ!!」

通された広間でありのままを話すと、住職はため息をついて、気休めにしかならんと思うが…と、硬い棒のようなもので、龍の股間をバンバンと叩きはじめた。龍は悶えながら「ぎゃふん!」とか「うそん!」とか言いながら、苦しみはじめた。

「こやつは当分ここで預かる事になる。ヤマノケが剥がれるのが先か、こやつが死ぬのが先かは分からんが」

住職の口から「ヤマノケ」という言葉がでた。やはり「ヤマノケ」という化け物は本当に存在するようだ。

住職は3人の男に羽交い締めにされている龍の股間を更にビシバシと痛めつけながら、悲しい顔で話しはじめた。

「ヤマノケは間違って男に憑いてしもうたようじゃ…普通なら女にしか憑かんのじゃが、ほれ見てみい、この男は女みたいに髪が長いじゃろ?」

住職の言ったこと。俺がヤマノケを読んでからずっと感じていた違和感がまさにそれだった。確かに龍は去年から始めたビジュアル系ヘヴィメタバンドのせいで、髪を腰まで伸ばしている。

「そ、そうですよね?ヤマノケは快楽度の高い女性に取り憑いて、その肉体が死ぬまで自慰行為を繰り返すと読みました!だから、なぜ男の龍に取り憑いたのかが疑問だったのです住職!」

「うるさい、黙れ小僧!!!」

住職はあからさまに嫌な顔をしながら、また硬い棒のようなもので、龍の股間を思い切りシバいた。

「あふん!!!」

「こやつがここで自慰行為なんかを始めよったら、即刻、ワシが成仏させてやるわい!不快な!!とにかく明日、こやつの家族をここへ呼んでくれ。ワシが話してやる。49日が勝負じゃ。49日でヤマノケが出ていかんかったら、こやつは…」

「ど、どうなるんですか?」

住職「知らん!」

叩かれすぎて気を失ってしまったはずの龍の口元がヘラヘラと笑っている。そしてピクリと右手が動き、ゆっくりとその手を自分の股間の上に乗せた。

「マチガエタ、マチガエタ、マチガエタ、マチガエタ、マチガエタ、マチガエタ、マチガエタ、マチガエタ、ツイテル、ツイテル、ツイテル、ツイテル、ナンカツイテル」

龍は閉じた目から涙をこぼしながらそう繰り返していた。

6

「俺のせいだ!あんな所に車を止めた俺のせいだ!カラスを轢いちまった俺のせいで、龍が死にかけている!助けなきゃ!絶対に助けなきゃ!」

俺は目一杯アクセルを踏んだ。

明け方近くに龍の家についた。眠たそうに出てきた龍の母親に事情を話したら、今日は熱っぽいから無理と断られた。龍の父親には今日はパチンコの新装開店だから無理と断られた。

それじゃあ仕方ないなと諦めて、なんか疲れたから俺も帰ろうかなと考えていたら二階の窓が勢いよく開き、龍のお婆が顔をだした。

「待て待て待て待てい!おい小僧!私の可愛い孫はどこにおるんじゃ!私をそこに連れていけえい!!」

普段は優しい龍のお婆とは思えなかった。お婆は阿修羅のような顔で俺を恫喝した。

しかたなく助手席にお婆を乗せて、またあの寺を目指した。正直、もうあんな怖い龍を二度と見たくなかったが、お婆の迫力がそうはさせてくれなかった。

お婆は助手席でしきりに「私が龍の身代わりになる。私はあやつの弱点を知っておる。私は若い頃一度ヤマノケに取り憑かれた事があるが、引き剥がしに成功したのじゃ」などと、嘘ばっかり言っている。

途中、腹が減ったのでお婆とドライブスルーによった。

お婆はなんと朝マックを三セットも頼み、あっという間に平らげてしまった。

それを見て、お婆が昔ヤマノケに勝ったのはあながち嘘ではないのかもなと思った。

7

寺に戻ると、龍の股間は通常の三倍ほどに腫れあがっていた。お婆は住職に一礼すると、つかつかと龍のそばに行き、腫れ上がった股間に手をかざした。

住職はお婆の背中を見ながら「ま、まさか。いや、そんなはずはない!い、いや、でも似ている!」と、意味深な言葉を口にした。

お婆は龍の股間に向かって言った。

「こんな痛みに耐えてまで龍の体にしがみついていてどうする?んっ?どのみちもうこれは使い物にはならん。早くでてこい。なんなら、昔と同じように私に取り憑いてみるか?ヤマノケよ…」

お婆がそう言った瞬間、龍は白目を剥いたまま苦しみだした。

お婆はスッと立ち上がり、着ていた着物をするりと投げ捨てた。お婆は下着を身につけておらず、両方の萎びた乳房を鷲掴みにしながら、それをグルグルと回転させた。

「さあヤマノケよ!私の中に入ってくるがいい!生い先短い我が命。孫を守るためならお前と一緒に快楽の末に心中してやるわいな!!」

龍の口が人間の限界を遥かに超えるぐらいに開き、そこから毛むくじゃらの腕が出てきた。

お婆の乳房がぐるぐると高速回転を早める。

お婆はよだれを垂らしながら「ほっほ!ほっほ!」と、踊りながら声を上げている。

正直、もうどっちが妖怪かわからなくなってきた。

「テン…ソウ…メツ…テン…ソウ…メツ…」

だが、ヤマノケの体が龍の口から半分くらい出てきたところで、その動きが止まった。

「ハイリタクナイ…ハイリタクナイ…」

ヤマノケはお婆の申し出を断りたいようだ。素人の俺が見てもわかる。

そこへすかさず、怯むヤマノケに向かって住職が硬い棒のようなモノを振り下ろした。

「うんぎゃらぼっち!」

8

龍の体からヤマノケを追い出す事に成功したお婆と住職は、熱いお茶と和菓子をツマミながら、昔話に花を咲かせていた。

龍は体力の消耗からか、死んだように眠っている。

いや、本当に死んでいるのかもしれない。

どうやら、お婆と住職は昔からの知り合いのようで、色々な武勇伝を俺に聞こえるようなでかい声で話しているが、全く興味がないので全然頭に入ってこない。

俺はさっさと帰って寝たいのだが、この話し好きの年寄り二人のせいで、まだ当分は帰れそうにない。

俺は藁をも掴む思いで、スマホのホームボタンを長押しした。

「へい、Siri!ここから今すぐ抜け出す方法は?」

Siri「すみません。聴き取れませんでした」

Concrete
コメント怖い
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むうお兄様、あんみつお姉様、昆布様、アリーシャ様、僕の渾身の代表作に怖いとコメントを残してくださりスペシャルサンクスです…ひひ…
ただいま、皆さまの期待に応えるべく「帰ってきたヤマノケ」なるものを構想中にございますので、今しばらくお寛ぎの上、お待ちくださいませ…ひ…

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笑ってしまいました。
ヤマノケ、男バージョンもやはり怖いです。

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