久しぶりに投稿させて頂きます。
私はある大型量販店の店長をしています。
これから私の実体験した不思議な経験を
投稿させて頂きます。
稚拙な文章などあるかと思いますがご容赦頂きお付き合い下されば幸いです。
なお、多少の誇張もなく記憶にある事実のみ記します。
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この話はつい最近の話なのですが、印象に残った内容なので忘れないうちに投稿をさせて頂きます。
これは現在進行形神奈川県にあるお店での話です。
2021年年末。コロナ禍も収まり例年通りの賑わいのある年末商戦が訪れていました。
そんなある日の事です。オープン後の定時巡回時に40代くらいの男性に声をかけられました。
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「いらっしゃいませ。何かお探しでしょうか?」
お決まりの定型文を口にし一礼をします。
「あの...相談にのってほしい事がありまして....」
そう話すお客様の顔はマスクをしていても明らかにやつれているような印象でした。
「かしこまりました。どのような事でしょうか?」
そう言った私にお客様は少しホッとしたような顔を見せました。と言っても、目元しかわからないのですが。
「実は私、ペットを飼えるマンションに住んでいるんですが..近頃私が仕事に行ってる昼間に、ペットの犬が大きな声で吠えているようなんです...隣人に言われ、気にしてはいたんですが....」
お客様のお話の内容を一通り傾聴し、内容を確認すると隣人の方は怒ってはいないが、面と言ってくるあたり、気になってはいるだろうし、静かにさせろという要求なのだろうと。
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「私も実家に犬を飼っておりますが、ワンちゃんは寂しくなるとそういう行動をしてしまうものですが、隣人の手前困りましたね。
いくつか思いつく解決方法はございますが、お客様はどのようにしていきたいとお考えでしょうか?」
「うちの犬は小型犬なんですが、躾はお金を払ってプロの方にお願いしました。今までもこんな事はなかったんです。」
頷く自分にお客様はカバンの中のiPadを取り出しました。
「これを見て頂きたいんです。うちの犬の吠えてる瞬間を撮影しようと室内カメラを設置した時の映像なんですが....」
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映像は昼過ぎ、しっかりと片付けられたリビングに一頭のワンちゃんがソファーの上で寝転んでいる。それだけ見れば何気ない映像です。部屋はちょっと薄暗い感じでしたがカーテンが閉まっているからでしょうか?
犬種は白のポメラニアン、確かに犬種としては甲高く比較的煩めな吠え声の犬種ではありますが...
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そして映像を早送りしながら2人で映像を覗き込みます。
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問題の箇所がきました.......
ソファーの上に寝転がっていたワンちゃんがパッと顔を上げるとカーテンがされた窓に向かって急に吠え出しました。かなりの吠え声で。
しばらく吠えていると吠えていた原因がうっすらとカーテンに浮かび上がります。
shake
明らかな人影でした。その人影は窓を開けようとしているのかしばらくその場をうろうろとしていました。
その間もワンちゃんは吠え続けていました。
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ゾクっと背筋にくるものがありました。
ワンちゃんが吠えていたのはベランダの人影だったのです。
お客様はiPadをしまうと、ため息をつきます。
「今の所ですが屋内に侵入されたりしてはいないんですが。これ結構な頻度なんです....」
いやいやいや、既に警察案件ですね。と心に思いつつも
「失礼ですが、ご家族だったりでは?」
「独身なんです。思い当たる節もありません。ストーカーなんていたら寧ろ、喜んじゃいます。」
そう言って自嘲気味に笑ったお客様の顔は、第一印象のやつれた顔に戻っていきました。
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差し当たり、防音をどうするかの隣人問題を解決して。不審な侵入者の問題を解決していく旨をお客様と相談して話を進めていきます。壁面防音のウレタン素材の簡易防音壁を緊急対策として....後はと言っても弊社で解決できるとすれば、ベランダの防犯カメラぐらいですが。
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室内のカメラの移設はできないようで、新たにベランダにカメラを設置したい旨の相談でしたので、防犯カメラコーナーで一通り商品の説明をします。
現在ではワイヤレス式の簡易防犯カメラなども多く、施工も不要でお手軽です。今回の件はその頻度から考えすぐに犯人が割れるだろうと簡易カメラをお薦めしました。
「できれば、不安なのでプロの方に現地で相談しながら施工もお願いしたいのですが....かなりかかりますか?」
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「お選び頂く商品によりけりです、配線式ならば電気工事含めてお見積りになります」
「いえ、費用ではなく施工日です。費用は基本的に問題ありません。」
お客様は私の言葉を遮るように言いました。
「失礼致しました。施工日のご相談であれば、専門をお呼び致しますのでご都合のよろしい日をご相談下さい。
ただ後々の問題を踏まえ、弊社ではお見積りで一度お伺いしてからの料金と施工日決定となりますのでご承知おき下さい。」
お客様は「はい、大丈夫です。」と言って頷きました。
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私はインカムで専門人員をカウンターに呼び、先ほどまでのお客様の事情説明とカメラ設置工事の件を引き継ぎます。お客様に一礼し、後の相談は専門人員のYに任せ売場の巡回を続けます。
去り際にお客様からも深々と頭を下げて「ありがとうございます。」と言って頂きました。
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早く解決するといいな。さすがに気持ち悪いだろうな。
と考えながら売場の巡回を続けます。
店長は定期巡回で店舗の全通路をくまなく巡回するのですが、これが2時間以上かかる必須のルーティン業務となります。それも朝夕の2回計4時間です。
売場の安全確認や欠品、値落ちなど。売場の問題点を改善する重要業務なのですが歩く距離は12kmを超える、なんとも健康的な業務です。iPhoneのヘルスケアの確認もルーティン業務ですw
話が少しそれてしまいました。申し訳ありません。
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巡回を終え事務所の机上で書類業務をしていると、工事部門の責任者のYから内線が来ました。
「はいMです。」
「店長すいません、今お時間よければ先ほどの工事の件でご相談に伺ってもよろしいでしょうか?」
「大丈夫です。じゃ待ってます。」
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事務所にきたYは少し浮かない顔つきです。
「どうしたんですか?」
Yは私より大分年上の職人さんです。面白く無さそうな顔をして、手には先程受けたであろう伝票を持っています。
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「店長、この見積もり受付ですが...できればお断りしたいんです。いや、先程お客様に私が直接言えばよかったんですが...申し訳ありません。」
そう言ってYは少しイライラしたような素振りを見せます。
「あれ?らしくないですね。どうしてですか?」
そう言った私にYは頭を掻き毟る素振りをしながら伝票を渡してきました。
見積もり受付表に一通り目を通していると
「店長はあの画像見たんですよね?どこまで聞きました?」Yはそう言って私に迫るように両手を机にバンと乗せてきました。
「いや、引き継ぎしたので全部だよ。」
「見積もり受付表の住所見てもらえますか?」
住所住所と見ても...
〇〇市〇〇町〇〇〇〇マンション名6〇〇号
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「すいません、なんかダメですか?この住所」
さっぱりわからない顔をしている私にYは施工管理用のタブレットでGoogle mapを開き物件の住所画像を見せて来ました。
「あれ.....もしかして、その筋の方ですか?」
「全然違います。店長わかりませんか?」
うーん、住所を見ても画像を見てもさっぱりわかりません。怪訝そうな顔をした私にYは困ったような顔をしてため息をつきました。
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「依頼主の住所、マンション6階です。」
shake
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「そもそも6階のベランダに侵入するのは横の住人じゃないと考えられません。ストリートビューで見るとわかりやすいですがこのマンションは横から侵入するにしても上下から侵入するにしても、避難壁か梯子を抜けるか、ミッションインポッシブル並みのアクロバットをしなきゃ難しい。」
また背筋にゾクっとしたものが走ります。
「つまり...」
「普通に考えて、金銭目的ではなく、依頼主本人がなんらか狙われているか?」
「いるか?」
「店長が好きなやつか...です。」
なるほど.....
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私は頷くと同時に冷や汗が出ました。行きたくないと言ったYの気持ちがわかります。確かにどちらでも気持ち悪いことに変わりはない。
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「あれは(オ〇〇マテ〇)調べたんですか?」
「はい...号数は分かりませんでしたが....ヒットです。」
(※注意※普通しません)
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2人で頭を抱えました。万が一なんらかと遭遇してしまえば危険性は充分です。
それでも契約は契約、一方的な破棄はできません。
「見積もりに行く日は決まっていますか?」
「いえ、年明けになりますので先方からの連絡待ちです。」
「わかりました。伺う時は複数人で伺いましょう。さすがに私は店を空けられませんが正社員3人でどうでしょうか?申し訳ないけどこの話は他2名には伏せておいて下さい。」
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年が明けてすぐに先方から連絡がありました。
予定通り3人で伺い、1人はマンションの廊下で見張りです。ベランダも映像通りやはり横からも上下からも侵入は難しい。
Yは見積もり確認中ずっと、考えていたようです。この依頼主はあの人影をどう考えているのだろうか?と
足元では件のワンちゃんがYの足に吠えながらじゃれついています。
「このアパート結構セキュリティ良さそうですけど、侵入被害なんて結構あるんですか?」Yが切り出しました。
「どうなんでしょうか?私にわかるのはあの映像ぐらいです。」そう言った依頼主が笑っている様に見えてYは少し不気味な感じを覚えたそうです。
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と見積もりが終わり。ここまでが現在です。
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見積もり金額が折り合わなかったのか?
今の所施工契約には来店されておりません。
Yから報告があったのですが、見積もりの時にベランダには不審な感じはなかったそうです。侵入したような形跡も見られない。
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ただし、奇妙な事が二つ
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一つはベランダが異常に綺麗だった事。
掃除をしたのかもしれませんが、通常では考えられないほど綺麗だったそうです。
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二つめは.....カーテン。
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shake
1級遮光だったそうです。
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作者Shootingstar