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中編6
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蘇り

「ねえ黒?もう大学行く時間じゃないの?」

「やば寝すぎた。愛は?今日講義あんの?」

「私はないよ〜」

「それじゃ留守番よろしく。昼には帰るから」

「は〜い。いってら〜」

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俺は黒。大学3年生。こいつは愛。俺の彼女で、小学生からの幼馴染みで

、同じ大学まで進んじまった。高校生の時に付き合い始めたから、もう大分長くになる。どこにでもいるカップルだろう。そのはずだったのだが‥

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ピンポーン

「どなたですか?」

「黒さんにお届け物です。ハンコかサインをお願いします」

「はーい」

ガチャ

「どうも。愛さんですね」

「え?なんで私の名前を」

「答える義理はありません。さっさと死んでもらいますよ。ほら‥」

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「愛?戻ったぞ〜」

「お待ちしておりました」

「誰だお前!?人の家に勝手に!警察呼ぶぞ!」

「自分としては呼んでも構いませんが‥とりあえずこれを見てもらえませんかね」

「な、なんだよこれ‥?愛!?どうしたんだよ!!腹から血が出てるじゃないか!全く動かないし‥愛に何をした!?」

「殺しました。見てわかりませんか?あぁ方法はナイフで一突きです。しばらく動いてましたが、多分もう動きません」

「お前‥自分が何を言っているのかわかっているのか?!」

「くどいですね。私が殺したと言っているでしょうが。まあそんなことはさておき。黒さんに一つ、提案がありまして」

「は‥?」

「黒さんがお望みであれば、愛さん蘇らせますよ。完璧じゃありませんけど。ゾンビとして」

「何いってんだお前‥?」

「愛さんのこと、好きなんでしょう?なら当然生き返ってほしいですよね?私にはそれが出来る、と申し上げてるのです」

「自分で殺しておいて何いってんだお前‥!?本当に生き返らせる事が出来るのかよ」

「はい。完璧じゃありませんけど。まあ本当に好きな人ならゾンビでもいいですよね。あ、一応申し上げておきますと多分黒さんが想像しているような、意識も自我もなく人に噛み付いて感染させる様なヤバい奴じゃないですからね。自我もちゃんとありますから安心してください」

「んじゃやってみろよ!」

「では‥」

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「あれ?私‥あ!あなたはさっきの‥」

「よかったですね。黒さんはあなたにまだ生きていてほしいそうです。幸せな恋人生活を続けてくださいね‥では私はこれで」

「警察を‥!」

「無駄ですよ。どうぞお幸せに」

「消えた‥?!何だったんだあいつ‥」

「すっごく怖かったけど、黒がいたから私は生き返った‥って事なのかな?」

「お前腹見せてみろ!」

「あれ?傷が塞がってる‥?あ、血がめっちゃついてるからさっきのは夢じゃないのかな‥別に痛くはないけど」

「とりあえず風呂に入ろう。色々落とさないと」

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次の日

「昨日のあれは何だったんだろう。愛、なんともないのか?」

「痛くはないけど、なんか体が動かしにくい‥お風呂長めに入るよ‥」

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事件から2日後

ガシャン!

「どうした‥?うわ、皿落としたんか!粉々じゃないか!片付けるから‥」

「違うの‥お皿を持っただけ‥ちょっと掴んだら、なんか割れた‥」

「は?冗談よせよ。片付けるぞ」

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「とりあえず俺は講義に行ってくるから、気をつけてな。あんなことがあったんだし、しばらくは大人しくしてろよ」

「うん‥」

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「え〜この事例の様に、人間の脳というのは無意識に体にリミッターをかけておりまして、例えば脳に損傷をおうことなどにより、リミッターを外す事が出来たら人間の体は凄まじい力を出すことが出来るのですが‥」

「講義ねみい‥」

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事件から4日後

「うわ!」

「どうした!?」

「見てこれ‥お風呂で体を洗ってただけなのに‥なんかこすった部分が剥がれてくるんだけど‥」

「いいからすぐやめろ!とりあえず服を着て‥」

「何だったんだ今の‥」

「私あれから色々とおかしいんだ‥無性に〇〇したい!ってのが我慢できなくなって‥昨日は黒がいない間に肉買ってきて凄い量食べちゃったし‥あとね。トイレも全くしたくならないし‥でもさっきのでわかった。多分、私の体は死んだままなんだよ」

「なに‥?」

「だからあの人ゾンビって言ったのかぁ。そっか。そうだよね。でも死ぬよりマシだよね。死んじゃったら黒と会えないし。黒は私と一緒にいてくれるよね?これまでずっとそうだったし。信じていいよね?」

「お、おう!勿論だ!」

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事件から一週間

「ねえ黒〜大学なんか行くのやめて私と一緒にいてよ〜なんか体の一部が壊れてきて、固定しないといけないの〜」

「講義サボるわけにはいかないからさ。待っててくれよ。終わったらすぐ帰ってくるからさ」

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冗談じゃない。この一週間、何があったかあいつは理解しているのか!?まずは力の加減ができなくなって、皿とか家具とか壊しまくられた。本人はもう気にしなくなっているが、たまったもんじゃない。

さらに最近は体が腐り始めている。そりゃ死体だから当たり前かもしれないが、風呂で俺があらってやっているが、そろそろごまかしは効かなくなっている。ばらばらになるのも時間の問題だし、匂いも大変だろう

何より大変なのは、理性、いや理性はあるのだが、我慢というのが出来なくなっている事だ。詳しいことはわからんが、脳のどっかにそういう部分があるんだろう。俺を好いているのは解るが、限度ってものがあるだろう‥したいことをなんでもされては人間の生活は出来ない‥くそ‥

「こんにちは」

「うわ!あ、お前はあの時の‥」

「その後の生活はどうですか?楽しくやれてますか?」

「ふざけんな!お前のせいで!」

「これはおかしい。彼女生き返らせましたよね。まあゾンビとしてですが」

「完全に元に戻せよ!なんかあれもこれもしたいって言ってばっかだしよ!あれはなんなんだよ!」

「脳が死んでますからね。本能‥というかやりたいことに忠実になるのは当たり前な事です。因みに完全に戻すなんて無理です。死んでますし。でも黒さんは彼女が好きなんでしょう?なら多少の事は」

「ふざけんなよ‥なんでこんな‥」

「まぁ。実を言うとですね。そろそろ私から一つ提案をしようと思っていたのですよ」

「なんだ」

「黒さんがお望みでしたら彼女、もう一度殺せます。二度と蘇らないように、ね」

「はぁ?!お前どこまで俺達を馬鹿にしたら気が済むんだよ!」

「私の経験上、これまで皆さん時期の差こそあれど同じ道を辿りましたからね。そろそろかなあと」

「ふざけんな!絶対そんなことさせるか!」

「これ渡しておきます」

「なんだこれ」

「最近の人はドリームキャッチャーって知らないんですかね。これを持って彼女を殺してくれと願ったら、その瞬間に私は現れます。それでは」

「‥」

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事件から10日後

「おーい黒、来週のテスト勉強してる?」

「今それどころじゃなくてな‥次の講義なんだっけ‥」

「黒〜!」

「おいなんだよあれ。髪ボサボサってか何か皮膚おかしくね?てかなんか臭いが‥なんだこれ嗅いだことないような」

「愛!なんでここに?家にいろって言わなかったか!?」

「だって〜黒に会いたかったんだもん!」

「お前こいつと知り合いなのか?」「何だよあれ。絶対やばいってw」

「ちょっと次の講義サボるわ!愛、帰るぞ!!」

「待ってよ〜」

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「ねえ〜最近冷たいよ〜家でもあんまり相手してくれないし」

「夜くらい寝させてくれよ‥」

「私は眠くないの!もっと相手してほしい!」

「勘弁してくれよ‥」

「なんで!?せっかく生き返ったのに!ずっとずっと一緒にいるんだから!」

「いてぇ!そんな力で俺の腕握るなよ!!ふざけんな‥なんで生き返っちまったんだ‥もういっそ‥」

殺してくれと?

「ああ」

「そう願いましたね。では」

「!?」

「え‥あれ‥?力が‥入らない‥なにこれ」ドサリ

「まあこんなものでしょう。あれだけ豪語した割には思ったより早かったですね」

「は‥?いや‥俺は‥」

「あ‥れ?く、黒‥なんで?」

「違うんだ。違うんだよ‥」

「そっか‥迷惑だったんだ‥私‥ごめ」

「違うんだ!違うんだ!」

「言っておきますが、もう二度と動きませんからね。よかったですね黒さん。じゃあ私はこれで」

「‥」

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「聞きましたか奥さん」

「聞きましたよ。大学3年生が彼女を殺して捕まったなんて。怖い事件よねえ。頭がおかしいのよきっと」

「これで10人目かあ。さて次はなにをしようかなあ」

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