東京に来て間もない頃。
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友達との待ち合わせのため、オシャレなカフェに向かいました。
田舎にはそんなカフェは無く、振る舞い方も判らず座っているだけで照れました。
「1人じゃ恥ずかしいな…。あいつ早く来ないかな」なんて思いながらメニューを見てた時、気が付きました。
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一番奥に座っているショートカットのおばさんが、じ…っと僕を見ていたのです。
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黒いセルフレームの眼鏡の奥の眼が、しっかり僕を見ていました。
清潔感のある白くピッタリとしたシャツ。黒いパンツ。
赤いリップが目立ちます。
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わ…。田舎っ子だとバレてんのかな…。恥ずかしい…。
メニューを立てて視線を遮ります。「なに?なんだろ…」鼻血でも出てるのかな、と鼻を拭いますが、何もありません。
そっと見てみると、まだ見てました。少し笑いながら。
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えー…。なに?知り合い?
…いるわけないよな。出てきたばかりの街で。
じゃあなんだろ…。えーっと…。
「ご注文はお決まりですか?」「わっ!」
おねえさんが注文を取りにきました。思考の深くに入っていたのでびっくりしました。
「え…?あ。はい。えっと。アイスラテお願いします。」
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手持ち無沙汰でラテを待ちます。
ガラケー時代だったので、youtubeもtwitterもありません。
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時計を見るフリ、窓から外を見るフリ、キッチンを見るフリ、携帯を見るフリをする度、チラッと見ると、やっぱりずっと見てます。
友達もラテも来ないので、逃げる様にトイレに行きます。
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顔に何か付いてるのか、鏡で確認しても何もありません。
ひどい寝癖も付いてない様です。
パッと見、全体を見てもおかしな所はありません。
「なんだろ。いやだなぁ…」
別に便意があった訳ではないので、やる事もありません。
「…戻ろ」
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席に戻ると、ラテが来ていました。あ!美味しそう!
ミルクとコーヒーが綺麗に2層になってます。
そして奥を恐る恐る見ると、おばさんもいませんでした。
おー。良かった。
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ラテの写真を撮ろうと携帯を取ります。するとショートメールが来てました。もうすぐ着く。ごめん。と、友達でした。
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ラテをいろんな角度から撮っている内に友達が来ました。
「よっ。ごめん。ラテなんて撮って、OLさんかよ」
「うるせえ。時間通りに来いよ」なんて軽口を叩きながら、楽しい一日が始まりました。おばさんのことなんて、すっかり忘れて…。
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夜遅くまで遊び、満足して帰ったのは、もう23時にもなっていました。
「早くお風呂入って寝なきゃ」
今日買ったものを袋から出して並べ、写真を撮りました。
「へへ。今日の収穫。良い買い物したなぁ」
確認しようと、アルバムを開きます。
「あ、そういえばラテの写真、上手く撮れてるかな」と画像を遡りました。
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「え…?」
「えっ!」
「うわぁ!!」
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信じられない画像がありました。
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あのおばさんの真正面のドアップ写真でした。
勝手に僕のガラケーで写真を撮っていたのです。
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真っ赤なリップで歯を見せ大口を開けて思いっ切り笑うその顔は、笑っていない深い黒い眼が逆に恐怖を感じさせました。
恐怖のあまり、瞬間、削除しました。
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トイレに行った時に僕の席まで来て撮影し、そのまま帰ったんだと思います。
しかしなぜ?何の為に…?
人の携帯に自分の画像が残る事を、何とも思わないのかな。
目的も意味も判らず、恐ろしい体験でした。
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すぐに立ち上げ時のパスワード設定をする僕でした。
作者KOJI