中編3
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見られる…

東京に来て間もない頃。

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友達との待ち合わせのため、オシャレなカフェに向かいました。

田舎にはそんなカフェは無く、振る舞い方も判らず座っているだけで照れました。

「1人じゃ恥ずかしいな…。あいつ早く来ないかな」なんて思いながらメニューを見てた時、気が付きました。

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一番奥に座っているショートカットのおばさんが、じ…っと僕を見ていたのです。

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黒いセルフレームの眼鏡の奥の眼が、しっかり僕を見ていました。

清潔感のある白くピッタリとしたシャツ。黒いパンツ。

赤いリップが目立ちます。

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わ…。田舎っ子だとバレてんのかな…。恥ずかしい…。

メニューを立てて視線を遮ります。「なに?なんだろ…」鼻血でも出てるのかな、と鼻を拭いますが、何もありません。

そっと見てみると、まだ見てました。少し笑いながら。

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えー…。なに?知り合い?

…いるわけないよな。出てきたばかりの街で。

じゃあなんだろ…。えーっと…。

「ご注文はお決まりですか?」「わっ!」

おねえさんが注文を取りにきました。思考の深くに入っていたのでびっくりしました。

「え…?あ。はい。えっと。アイスラテお願いします。」

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手持ち無沙汰でラテを待ちます。

ガラケー時代だったので、youtubeもtwitterもありません。

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時計を見るフリ、窓から外を見るフリ、キッチンを見るフリ、携帯を見るフリをする度、チラッと見ると、やっぱりずっと見てます。

友達もラテも来ないので、逃げる様にトイレに行きます。

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顔に何か付いてるのか、鏡で確認しても何もありません。

ひどい寝癖も付いてない様です。

パッと見、全体を見てもおかしな所はありません。

「なんだろ。いやだなぁ…」

別に便意があった訳ではないので、やる事もありません。

「…戻ろ」

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席に戻ると、ラテが来ていました。あ!美味しそう!

ミルクとコーヒーが綺麗に2層になってます。

そして奥を恐る恐る見ると、おばさんもいませんでした。

おー。良かった。

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ラテの写真を撮ろうと携帯を取ります。するとショートメールが来てました。もうすぐ着く。ごめん。と、友達でした。

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ラテをいろんな角度から撮っている内に友達が来ました。

「よっ。ごめん。ラテなんて撮って、OLさんかよ」

「うるせえ。時間通りに来いよ」なんて軽口を叩きながら、楽しい一日が始まりました。おばさんのことなんて、すっかり忘れて…。

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夜遅くまで遊び、満足して帰ったのは、もう23時にもなっていました。

「早くお風呂入って寝なきゃ」

今日買ったものを袋から出して並べ、写真を撮りました。

「へへ。今日の収穫。良い買い物したなぁ」

確認しようと、アルバムを開きます。

「あ、そういえばラテの写真、上手く撮れてるかな」と画像を遡りました。

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「え…?」

「えっ!」

「うわぁ!!」

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信じられない画像がありました。

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あのおばさんの真正面のドアップ写真でした。

勝手に僕のガラケーで写真を撮っていたのです。

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真っ赤なリップで歯を見せ大口を開けて思いっ切り笑うその顔は、笑っていない深い黒い眼が逆に恐怖を感じさせました。

恐怖のあまり、瞬間、削除しました。

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トイレに行った時に僕の席まで来て撮影し、そのまま帰ったんだと思います。

しかしなぜ?何の為に…?

人の携帯に自分の画像が残る事を、何とも思わないのかな。

目的も意味も判らず、恐ろしい体験でした。

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すぐに立ち上げ時のパスワード設定をする僕でした。

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