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短編2
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本の虫

僕には本が大好きな友だちがいる。

その子は休み時間になると黒色の本を持って外に行き、校庭に生える大きな木の下で読んでいた。

どんな本を読んでいるのと僕が聞いても、彼は何も答えずに本から目を離さなかった。

その様子があまりにも楽しそうだったから、その子の後ろにこっそりまわって本の内容を覗いてみた。

本のページには細かい暗号のような文字がびっしりと並んでいて、僕には一文字も読めなかった。

彼は僕が見ているのに気づかず、にやにやしながらページを指でなぞっていた。

彼はどうしようもなく本の虫なのだと思った。

それ以降その子のことが気味悪くなって、彼と仲良くすることはなくなった。

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ある日の放課後、忘れ物をした僕は誰もいない教室にひとりで取りに行った。

無事忘れ物をロッカーの中に発見し、教室を出ようとした時、自分の机の上に何かが置いてあることに気づいた。

机に近づいてみると、それはあの子がいつも読んでいる黒色の本だった。

僕は興味津々で本を開いてみた。

開いたページには、やはり僕には読めない細かい文字が並んでいた。

しかし、実際に本を手にとって、はじめてそれが文字ではないことに気づいた。

読めない文字だと思っていたのは、等間隔で潰された蟻の死骸だった。

背中をぞっとするような寒気が走り、手に持っていたものを放り投げた。

それまで下側になっていた本の表紙が目に入り、タイトルが日本語で書かれていた。

そのタイトルは、「本の虫」だった。

まばらな黒色の上に浮かびあがる、白色の文字のタイトルだった。

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