私は、クリーニング屋でアルバイトをしている。ある日、少し変わったお客さんがやってきた。
「ジーンズの穴を塞いでおいてください」
当店では衣服の修繕は承っておりません。私の声も聞かずにその客は、持ってきた紙袋を押しつけて何も言わずに店を出て行った。
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ふわりとしたスカートをはいた女の客だった。
おかしな人もいるのだなと思い、代金すら支払われていなかったが、私は渡されたものを広げてみた。
膝の部分に穴をあけたダメージジーンズで、よく見るとお尻のところに大きな破れを発見した。
しかしなにより、そのジーンズには、足を通す穴が三つあった。
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いったい、どの穴を塞いで欲しかったの?
私はひとりで、途方に暮れた。
作者退会会員
日常怪談No.39
*日常怪談のコンセプト
・日常的によく見るモノや光景をとっかかりにした話
・「日常」そのものをテーマにした話