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アリス君の奇妙な話。片隅の都市伝説

中編3
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アリス君の奇妙な話。片隅の都市伝説

御久し振りです。有馬澄斗(ありま・すみと)です。

今回は友人と共に見た、都市伝説の一つに関する話を御送りしたいと思います。それでは………

*********************

室崎光二(むろさき・こうじ)君、高校は違うけどたまに今も遊びに繰り出す友人の一人で、他校生徒とも付き合いの有る、人脈の広い子でもある。

そんな彼と、中学3年の梅雨時に巻き込まれた話を。

その日も、雨がシトシト降る朝。

彼と僕は、部活の大会が近いのを除いて、自転車に乗る距離で無い学区だったので、通常が徒歩通学となっていた。

「聞いた話だけどさ」

「何?」

「関西方面で有名な都市伝説で、小さいおっさんってのが有る訳」

「それでそれで?」

「澄っちはそんな風に聞いてくれるから良いんだよね。その小さいおっさんがよ………」

何でも、その小さなおっさんとやらが、こちらの土地でも目撃されているらしい。

関西………いや東京もだけど、地方の小さな町に住む未成年からすれば、遠い外国の様な感覚なので、そんな都市伝説が遠い距離をすっ飛んで来て、近場に存在するとなっては何だか怖さよりも俄然興味が湧いて来る。

ピチャっ、ビチャっ、ピチャっ、ビチャっ………

足元の紫陽花(あじさい)が在る植え込みから、何だか水溜まりの上を歩く、ないしは叩く様な音が聞こえた。

「………遅れちまうな、行こうぜ」

普段なら、我を忘れるリアクションを取って放っぽり出す室崎君が、慌てて僕に呼び掛ける。

………………彼の内申点だか試験の学年順位が不味いと聞いていたので、僕も彼に続いて学校への歩みを速める。

********************

数日後、試験明け最初の休日に、彼と僕は買い物の名目で………正しくは御使いと言う名の買い出しで、近くのスーパーに徒歩で出掛けていた。

買い出しの済んだ僕達は、再びあの音を聞く。

ピチャっ、ビチャっ、ピチャっ、ビチャっ………

規則正しいと言うのか、長靴を履いた子どもの集団っぽくはあるのだけど、何だか若干規則正しい………子どもっぽさが無い様な足取りに聞こえて来る。

「聞こえる?」

「………ああ」

恐る恐る室崎君と共に、紫陽花の咲く植え込み越しに、音の正体を探ろうと身を乗り出す。

「あっ」

室崎君が何故か驚いた声の出そうになった僕の口を塞ぐ。

「何だよ」と彼を睨み付けようとした僕だったが、声は喉の奥に引っ込んだ。

………あの小さいおっさんが、しかも集団で、カタツムリを避(よ)けて、テクテク、もといピチャっビチャっと列をなして歩いているではないか。合羽(かっぱ)を着て、長靴姿で。

「………噂は本当だったんだ」

「カタツムリもよ、おっさん達からしたら、巨大な生き物だろうな」

剽軽(ひょうきん)な彼らしからぬ、何処か生命を慈(いつく)しむ優しささえ感じる言葉に、僕は又驚きそうになった。

********************

あの光景を見た所為かは分からないけど、僕は商店街の福引きに当たって図書カードを、室崎君は懸賞に当たって、小さな幸運に恵まれたけど、それは又別の話。

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