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これはアパレル会社に勤める桐谷さんが体験した話です。
桐谷さんはいつも最寄り駅から自宅に帰るときに最短ルートではなく大通りを迂回して帰っていました。
最短ルートを通らない理由は途中にある公園が街灯もなく夜だと不気味で怖いので通りたくなかったのです。
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そんなある日、仕事が長引いてしまい終電で帰ってきた桐谷さんは少しでも早く家に帰りたかった為、普段通る大通りではなく最短ルートを通って帰ることにしました。
問題の公園の前は駆け足で通りすぎようと思っていた桐谷さんでしたが、公園を過ぎようとした時に何か音が聞こえました。
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キィ… キィ… キィ…
ブランコが軋むような音で、それは公園の方から聞こえてきたのです。
時刻はもう0時を過ぎている、こんな時間に街灯もない公園で誰かがブランコを漕いでいる?その光景を想像してさらに怖くなった桐谷さんは公園の方を見ることなく駆け足で通りすぎて帰宅し、仕事の疲れもありシャワーだけ浴びてすぐに寝てしまいました。
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次の日、仕事が休みだったのと買い出しに行く必要があったので昼間の明るい時間に例の公園を見に行った桐谷さんは公園を見て震えました。
確かに公園にはブランコはありました。
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ただ、ずいぶんと長い間手入れされていないらしく、ブランコは鉄の骨組みだけで鎖と板は付いていませんでした。
それじゃあ昨日の夜聞いたあの音は何だったの?
桐谷さんは昼間なのに背筋を冷たい汗が伝うのがわかりました。
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それから1ヶ月ほどたったある日、再び休みの日に買い出しに行くため公園の前を通りがかったのですが、その日は自治体の人なのか近所の人なのかわかりませんが、中年の男性3人が公園の掃除をしていました。
その中の一人が電動の草刈り機で公園の雑草を刈っていたのですが、何か固いものに当たったようで「ガガガッ」と音をたてて止まってしまいました。
男性が何だ?と言って当たったものを持ち上げた。
それ、何年もの間雨風に晒されてボロボロに朽ちた子供用の三輪車だったのです。
それを見た桐谷さんはあの夜の出来事を思い出してある事に気付いた。
あのキィ… キィ… キィ…という音、あれはブランコを漕いでた音ではない。
誰かがこの三輪車を漕いでいる音だったと。
それ以来、暗い時はもちろん明るい時でも公園の前は通らないようにしました。
数年後、桐谷さんは仕事の都合で別の街に引っ越しすることになった為、その後あの公園がどうなったのか、あの三輪車は誰のものだったのかはわからないままになってしまったが怖くて調べる気にはならないそうです。
作者死堂 鄭和(しどう ていわ)