聞いた話です。
separator
子供の頃に影消という遊びが流行っていた。
影消とは鬼ゴッコに似た遊びで鬼になった者の影を消してしまう遊びだった。
これは転校生の女の子に教えて貰った遊びだ。
その子はサーカス団の家の子らしかった。
どうやって鬼の影を消していたのか原理はよく覚えていない。
サーカスの手品の類だと思って当時は別に深く考えてはいなかったからだ。
影消を遊び終わるには石ころを重ねたり人形に切った紙などを掲げて作った影を鬼の体にくっ付ける。
すると消えていた影が復活するのだ。
しかしある日の事。
人形ではなくふざけて猿みたいな影を作った鬼の子が居た。
女の子は慌てて注意したが鬼の子はお茶らけていて話を聞かなかった。
鬼の子は猿の様な奇声を発しながらどこかへ行ってしまった。
私は鬼の子の事をその日以来見た記憶が無い。
女の子はと言うと半年位でまた別の街へと転校してしまった。
卒業アルバムにも鬼の子の写真は一枚も残っていない。
作者退会会員