長編13
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オモチャの指輪

今週に入り木村美紀は、子供の頃から打ち込んでいる水泳の夏の大会に向け、毎日十キロ以上泳ぎ込んでいた。

「美紀!腕の抜きが遅い!もっと素早く!」

必死で泳ぎながらもメガホンを通した立花瑞希コーチの声がはっきり聞こえる。

瑞希コーチは、アルバイトながらこのスイミングスクールの専属コーチで、現在大学三年生。

二年前から木村美紀のコーチについている。

今年高校三年生になった木村美紀は、大学受験のためにこの夏の大会で一旦水泳はお休みにするつもりなのだが、彼女は調子が良ければ自由形でインターハイを狙えるレベルであり、瑞希コーチも熱心に指導してくれている。

通常は学校が終わってから夜八時くらいまで三時間ほどの練習なのだが、夏休みに入ると大会に向けて午前中三時間、そして午後は受験のための塾に行った後、また夕方から夜九時まで四時間の練習をこなしている。

かなりハードだが、大会までの三週間という限られた期間であり、これが高校生活の集大成だと思い頑張っているのだ。

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◇◇◇◇

美紀がそれに気づいたのは、夜九時までの練習に切り替えてから三日目程経った頃だった。

八時で練習を切り上げていた時は、まだ数名の選手が練習を続けていたのだが、夜九時になると時折帰るのが最後になってしまう。

そしてその日は練習に熱が入り、気がつくともう九時半を過ぎていた。

「いけない。早く上がらないと警備員さんに怒られちゃう。」

美紀と瑞希コーチは、プールサイドに置いてあった荷物を手に取ると、急いでロッカールームへ向かった。

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ロッカールームには既に誰もいなかった。

女性用のロッカールームは、両側にそれぞれ二十個のロッカーが並ぶ通路が三列あり、通路の真ん中には長椅子タイプのベンチが置かれている。

そしてその通路の突き当りの壁にシャワー室が並んでいる。

瑞希コーチは右側の通路の奥にある、少し大きめのコーチ専用のロッカーを使用しており、美紀のロッカーは真ん中の通路の中央辺りになっていた。

気心知れたふたりは他に誰もいないこともあり、申し合わせたようにそれぞれ自分のロッカーの前で水着を脱ぎ捨てるとそのままシャワー室へと飛び込んだ。

シャワールームは横に五つ並んでおり、使用する時はクリーム色のシャワーカーテンを閉じるようになっている。

美紀は瑞希コーチに続いて隣のシャワー室に入り、ざっと体を流すと髪の毛を洗い始めた。

そこでふとシャワーの音が両側から聞こえているような気がした。

瑞希コーチは右側のシャワー室を使っているはずだ。

最初は誰もいない静かなロッカールームで、シャワーの音が響いているのかと思ったが、左から聞こえてくる音は右側の音と明らかに違う。

そして瑞希コーチはシャワーを浴び終わったのだろう、右側からの音が止まった。

しかし左からの音はそのまま続いている。

美紀は思わず、シャワー室のカーテンから泡だらけの頭を出して左右を確認した。

右側のカーテンは閉じられ、中で瑞希コーチが体を拭いている気配がする。

しかし左側を見ると驚いたことにカーテンが開いている。

カーテンから体を半分出して左側のシャワー室を覗き込んだが、そこには誰もおらず、床のタイルは湿っている感じはあるものの半分乾きかけており、たった今まで誰かがシャワーを浴びていたようには見えない。

「あら、美紀ちゃんどうしたの?」

後ろを振り向くと、瑞希コーチがバスタオルを体に巻き付けながらシャワー室から出てくるところだった。

「いえ、こっちのシャワー室から水の音が聞こえたような気がして。でも私達しかいないんですから気のせいですよね。」

そう言って美紀は急いでシャンプーを洗い流した。

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◇◇◇◇

そしてそれから三日程経った夜も美紀と瑞希コーチが最後になり、シャワーを浴びるとそれぞれのロッカーの前で洋服に着替えていた。

するとその時、美紀のいる真ん中の通路の向こう、左側の通路でバタンとロッカーの閉じる音が聞こえたのだ。

静かなロッカールームでその音ははっきりと響き、その後パタパタと通路を歩く音が聞こえた。

自分達が最後だと思っていたが、そうではなかったのだろうか。

足音はロッカールームの出口へと移動していくようだが、出口へ行くためには美紀がいる通路の向こうを横切らなければならない。

美紀は誰が残っていたのだろうとそちらを注視していたが、通路の向こうには誰の姿も見えずに足音だけがパタパタと通り過ぎ、出口のドアが開閉される音が響いた。

「あれ?美紀ちゃん?」

隣の通路から瑞希コーチの声が聞こえた。

おそらくドアが開閉される音を聞いて、美紀が先にロッカールームを出て行ったと思ったのだろう。

「はい。まだいますよ。」

「あら?そう。」

着替えが終わり、ロッカールームを出ると美紀は瑞希コーチに今の話をしてみた。

「実はね、私も別のコーチから聞いた事があるの。」

瑞希コーチが聞いたのは、このロッカールームに時々女の子の幽霊が出るという話だった。

警備員が夜に見回りをしているとシャワーを使う音がするが確認しても誰もいない。

夜遅い時間にロッカーを使っていると足音が聞こえる。

ロッカールームの左側の通路に中学生くらいで水着姿の女の子が立っている。

深夜に女の子のすすり泣く声が聞こえる。

こんな話が幾つもあるようだ。

「私は話に聞いていただけで、それらしい体験をしたのは今日が初めてなんだけどね。

でも美紀ちゃんがロッカーの扉の音や足音を聞いたのも噂の通り向こう側の通路だとすると、あながちデタラメではないということになるわ。」

そもそも美紀はこういった話があまり得意ではない。

「怖い。瑞希コーチ、明日から最後にならないよう早めに切り上げましょうよ。」

「そうね。」

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◇◇◇◇

しかし大会が迫ってくるにつれ、漠然とした恐怖くらいではなかなか練習を強制終了する気にならない。

数日間は早めに切り上げたが、やはり練習に熱が入るとどうしても時間が目に入らなくなってしまうのだ。

その日もふと気がつくと九時をかなり過ぎており、ふたりの他には誰もプールにいなかった。

「やだ、また最後になっちゃいましたね。」

ロッカールームへ向かいながら美紀が不安そうな表情で瑞希コーチにそう言うと、彼女も少し不安そうな表情を浮かべた。

「そうね、さっさと着替えて早く帰りましょう。」

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ロッカールームの手前まで来ると、照明が点いているのに気がついた。

直前に利用した人が消し忘れたのだろうか。

瑞希コーチはためらう様子を見せずにドアノブを掴んでドアを開けた。

「??」

誰もいないと思っていたロッカールームで、ザーッという水の流れる音がしている。

シャワーの音だ。

美紀と瑞希コーチはその場で顔を見合わせた。

「やだっ!コーチっ、かっ、帰りましょ!」

「何言ってるの。水着のままで帰れないでしょう?とにかくロッカーから着替えだけ取って、トイレかどこかで着替えましょう。」

ふたりは手をつないでゆっくりとロッカールームに入って行く。

とにかくひとりになるのは怖い。まず美紀のロッカーへふたりで向かった。

シャワーの音は続いている。

美紀のロッカーへたどり着いたが、ここから見える真ん中の三つのシャワー室はカーテンが開いており誰の姿も見えず、シャワーの水も出ていない。

音を立てないように、しかし急いでロッカーの扉を開け、着替えを取り出して前に抱えると瑞希コーチのロッカーへと向かう。

しかしもちろんシャワー室の前を通る勇気はない。

一旦ドアまで戻り、瑞希コーチのロッカーのある右側の通路へと向かった。

そして瑞希コーチのロッカーの前まで来たところで、突然水の音が止んだ。

ふたりは思わず顔を見合わせ、動きが止まった。

しかしこのままじっとしていても仕方がない。

瑞希コーチは急いでロッカーの扉を開けると着替えを取り出し、美紀と同じように抱えると急いで出口へと向かった。

「!」

通路の端に水着姿の見知らぬ女の子が立っているではないか。

中学生くらいだろうか。競泳タイプの水着ではなく、いわゆるスクール水着でキャップも被っておらず、肩ほどの長さの髪を後ろで縛っている。

多少顔色は青白く感じるが、その姿ははっきりしており、この状況でなければ、何も気にせず横を通り過ぎていただろう。

しかし、今はここにいるはずのない女の子なのだ。

ふたりは出口側にその子が立っているために逃げることも出来ず、じっとその女の子と見つめ合っていた。

それが五秒だったのか、三十秒だったのか。しばらくして瑞希コーチが口を開いた。

「あなたは誰?」

するとその少女は少しだけ微笑むとすっとかき消すように消えてしまった。

ふたりは顔を見合わせると、恐る恐る少女が立っていた辺りまで進み、周囲を見回して少女がいないことを確認すると、脱兎のごとくロッカールームから飛び出した。

そして守衛のいる出入り口近くの休憩室で、そのまま水着の上から服を着ると逃げるように帰宅したのだった。

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◇◇◇◇

翌日からは、これまで以上に気を遣って他の練習生がいるうちにトレーニングを切り上げるようにしたのだが、それは根本的な解決になっていなかった。

美紀は練習を始める時を含め、これまで他に誰かがいる時には現れないと思っていたのだが、それはその存在に気がついていないだけだった。

先日その姿を認識してからは、頻繁にその姿を見掛けるようになった。

着替えている最中やシャワーを浴びている時に通路を横切る姿が見えたり、じっと物陰に立ってこちらを見つめる姿が見えたりする。

美紀がそのことを瑞希コーチに相談すると彼女も同じだと言う。

しかし彼女が何者か判らないものの、特に実害があるわけではない為、夜遅くならないようにする以外に特別に何かをするということもなかった。

そして夏の大会の県予選を終え、全国大会の出場を決めた美紀は更に練習に打ち込んでいた。

それでも夜遅い時間は避け、開始時間を早めて練習に臨んでいた。

そして全国大会まであと三日、翌日は大会が行われる東京へ移動するという時だった。

美紀は練習中に足が攣り、危なく溺れかけた。

しかし瑞希コーチがすぐに気がつき事なきを得て、美紀はすぐに医務室に運ばれたが、単なる筋肉疲労でありしばらく休めばすぐに練習へ戻れるということで、美紀はしばらくロッカールームのベンチで休むことにした。

練習時間の最中であり、時折人の出入りもあって、美紀はそれほど不安に感じることもなくバスタオルを体に掛け、ベンチで横になっていた。

プールの音や声が遠くに聞こえる。

医務室で筋肉の消炎鎮痛スプレーをかけてくれたため、痛みはかなり薄らいだ。

まだ日没前であり、窓からはオレンジ色がかった光が差し込み、ロッカールームを染めている。

美紀はベンチの上で仰向けになったまま目を閉じてゆっくりと体を休めていると、突然パタパタと小走りに駆け寄ってくる足音が聞こえた。

その足音には聞き憶えがある。

そう、数週間前にロッカーの向こうから聞こえてきた足音だ。

驚いて目を開けた美紀の目の前に、あの少女の顔があった。

あまりの驚きに息が止まりそうになり、声も出せずに目を見開いて少女の顔を見つめると、少女はにっこりと微笑んだ。

その穏やかな表情に美紀は悲鳴を上げるタイミングを逸してしまったが、恐怖がなくなったわけではなく、そのまま強張った顔で少女を見つめ続けた。

すると少女はバスタオルの上に乗せていた美紀の手を取ってゆっくりと引いた。

その手は驚くほど冷たい。

少女の手に引かれて美紀がベンチの上で上体を起こすと少女は手を離し、美紀に向かって手招きをした。

特に危害を加えられるような気配がなかったため、美紀は何だろうと思いながら立ち上がると少女の後に続いた。

少女は時折美紀のことを振り返りながら通路の間を進み、美紀が音を聞いた左側の通路へと入って行く。

そして少女は壁側に並んでいるロッカーの真ん中辺り、『0104』の番号がついたロッカーの前で止まり、美紀の顔を見つめてそのロッカーの扉を指差したのだ。

美紀が少女の指さすロッカーに目をやり、番号の下にあるネームプレートを確認すると名前を書いた紙は入れられていない。

名前を聞こうと少女を振り返ると、たった今までここに居たはずの少女の姿は何処にもなかった。

少女が指差していたそのロッカーの扉に手を掛けてみたが、鍵が掛かっており扉は開かない。

美紀はプールの事務所へ行き、顔見知りの事務員である村田依子に事情を説明して、ロッカーの中を確認したいから鍵を貸してくれとお願いすると、彼女は、空きロッカーだから別に構わないわよ、見たらすぐに返却してね、とすんなり鍵を貸してくれた。

鍵を受け取った美紀は一旦プールサイドへ行き、瑞希コーチを捕まえた。

話を聞いた瑞希コーチはふたつ返事で了承し、美紀と一緒にロッカールームへと向かった。

ふたりがロッカールームへ入ると人の気配は全くなく、静まり返っている。

特に理由はないのだが、ふたりは足音をたてないようにそっと静かにロッカールームへ入ると左側の通路へと向かう。

通路の端からそのロッカーの辺りを覗いて見たが少女の姿は見えない。

ふたりはほっとして『0104』のロッカーの前に進むと、瑞希コーチはロッカーの扉に手を伸ばし、鍵が掛かっていることを確認して、美紀からロッカーの鍵を受け取った。

「開けるわよ。」

ガチャンと他のロッカーと変わらない音を立ててすんなり開く。

そして瑞希コーチはまるで何かが飛び出してくるのを警戒するように、ゆっくりとロッカーの扉を手前に引いた。

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「何も入ってないわよ。」

少しがっかりしたような瑞希コーチの声に美紀も肩越しに中を覗き込んだが、確かにロッカーの中には何も入っていなかった。

空きロッカーとして事務所で鍵を管理していたのだから、何も入っていないのは当然と言えば当然だ。

「じゃあ、なんであの子はこのロッカーを見つめていたのかしら。」

美紀が空っぽのロッカーを眺めながらそう呟いた時に、ふと一番上にある小物置きの棚が目に留まった。見上げる限りその棚には何もなさそうなのだが、何となく気になった美紀は通路の真ん中にあるベンチの上に立って、高い位置からその棚を確認した。

「あ、何かある。」

美紀はベンチから飛び降りると、ロッカーの一番下の段に足を掛けて上段の棚の奥に手を突っ込んだ。

そこにあったのは布製の薄くて小さなパスケースだった。

赤のチェック柄で、定期券は入っていなかったが、いろいろなお店のポイントカードなどが入っている。

そして定期券が入るはずの透明なフィルムが嵌め込まれている場所には、中学の制服を着た女の子がふたりで写っているプリクラの写真が入っていた。

その写真に写っているひとりは、あのスクール水着の女の子に間違いない。

そしてファスナーがついたポケットには小さな指輪が入っていた。

「あの子はこれが気になっていたのかしら。」

美紀が指で摘まんだそれは明らかにオモチャだとわかるシンプルな形の指輪だ。

金色の塗装がところどころ剥げて白い樹脂が顔を出している。

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◇◇◇◇

美紀は、全国大会を終えて戻った翌日、ロッカーで見つけたパスケースを持ってある家を訪ねた。

事務員の村田依子からあの少女の名前と住所を教えて貰ったのだ。

彼女の名は、木下美鈴。

中学生になってから水泳教室に通っていたが、今から二年程前、彼女が中学二年生の時に急性白血病でこの世を去っていた。

美紀が母親にパスケースを渡すと、母親は中に入っていた指輪を見てぼろぼろと涙を溢した。

母親の話によると、木下美鈴には、幼い頃から小学校六年になるまで、近所に佑二くんという同い年の幼馴染がいた。

ふたりはとても仲が良く、普通であれば男女の違いを意識するような年齢になってくると疎遠になったりするのだが、そのような事もなく小学校高学年になっても仲の良さは変わらなかった。

しかし小学校六年になった春、佑二は突然この世を去ってしまった。

近所の登校班の班長になった佑二は、やんちゃで言うことを聞かない一年生の男の子を庇って車に轢かれてしまったのだ。

惨いことにそれは同じ登校班だった木下美鈴の目の前での出来事であった。

彼女は気が狂ってしまうのではないかと周りが心配する位に毎日泣き暮らした。

その頃の日記には佑二への思いと共に、事故の原因となった、あのやんちゃだった一年生の男の子を殺してやるとまで書かれていた。

それでも木下美鈴と佑二の仲の良さをよく知っていたクラスメート達が、彼女の事をとても気遣ってくれたこともあり、半年も経つ頃には彼女に少しづつ笑顔が戻ってきた。

そして中学に入ると水泳を始め、学校のプールがない時にはあのプールへ通っていたのだ。

「指輪は、ふたりが小学五年生の時に、佑二くんが美鈴の誕生日にプレゼントしてくれたものなの。ほら、ガチャガチャってあるでしょう?あれで出して、私にくれたって言っていたわ。」

そして彼女は佑二の死後その指輪をお守りとしてずっと大事にし、何か辛いことがあるとその指輪に語り掛けていたという。

しかしあろうことか、彼女が白血病で倒れ病院に担ぎ込まれた時、彼女の願いにより母親が必死に探してもその指輪は見つからず、彼女はそのまま帰らぬ人となってしまったのだ。

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◇◇◇◇

「なるほどね。そう言うことだったのか。」

プールに併設されているカフェコーナーで、美紀から話を聞いた瑞希コーチは悲しそうな顔で頷いた。

「その子の事は何となく憶えているわ。私がここのコーチになってすぐの頃、ひとりの女の子が急病だってプールから引き揚げられて救急車で運ばれていったの。その子が美鈴ちゃんだったのね。

たぶん、彼女がプールで倒れた後、誰かが荷物を片付けた時にあのパスケースが棚に残っちゃったんだわ。」

「でも病院に運ばれた美鈴ちゃんは、指輪がここにあることを知らなかったんでしょう?どうして彼女の霊はここに?」

美紀の疑問に瑞希コーチは首を横に振った。

「それは解らないけど、指輪が彼女を呼び寄せたとしか思えないわね。」

彼女の思いが染みつき、それに引き寄せられた佑二の魂もまたそこに存在していたのかもしれない。

彼女はそのふたりの思いが詰まった指輪を見つけて欲しかったのだろう。

「でもそのあと二年間もあのロッカーを使う人がいなかったのね。」

「それは、何か事故があった時には、ゲンを担いで極力そのロッカーの使用を避けるって田村さんが前に言っていたのを聞いた事があるわ。でも美紀ちゃんのお陰で美鈴ちゃんももうここに現れることはないでしょう。じゃあ、一件落着ということで、夏の大会も終わったし、美紀ちゃんは大学受験に専念してね。」

「はい。」

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◇◇◇◇

あのオモチャの指輪は、未だそのままになっている木下美鈴の勉強机の真ん中にぽつんと置かれているそうだ。

そしてそれ以来、あのプールのロッカールームで木下美鈴の姿を見掛けたという話は聞かない。

◇◇◇◇ FIN

Concrete
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