強そうな友達、欲しいな…って話

中編6
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強そうな友達、欲しいな…って話

僕が高3の冬の時の出来事です。

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卒業も決まり、原付免許も取り、夜遊びもしてみたり、少しずつ大人への階段を登っている気になってた頃です。

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その日も4人組で4台の原付で遊びに行く計画をしていました。待ち合わせは23:00の寂れたゲームセンター。

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近くに、ゲームメーカー直営のキレイで大きなゲーセンが出来たので、僕らの行くそのゲーセンはトラックの運転手さんが休憩で来るか、ちょっとイヤらしい麻雀ゲームをしに、おじさんが来るか…ぐらいしかお客さんが居なくなってしまいました。

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しかも店内に引っ込み、呼ばないと出てこない店員さんだったので、お客さんも店員さんも、店に誰もいない状態もしばしばあるぐらいで、一見さんは入り難いお店だったと思います。

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大通りから外れたその暗いゲームセンターの周りは、畑やオフィス、倉庫ばかりで夜は誰もいません。ポツンと光るそのゲーセンだけが、ほの暗い光を発しています。

その寂れた非日常感が、大人になりかけの僕らを「夜遊びしてる」という気にさせてくれました。

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少し早く着いたのか、まだ誰もいませんでした。

狭いお店を一回りしてみましたが、やりたいゲームもありません。

ちぇっ。どうしよう…。

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お客さんもいなくて、いくつものゲームのデモ音だけが鳴り響いています。

外は寒いので、出入口の近くのゲームに座って待つ事にしました。

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ふ…と、座っているテーブルゲームの画面を見たら、コインが一枚入っているではありませんか!

麻雀ゲームでしたが、1ゲームタダで出来そうです。

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友達はまだ来そうもないし、やっちゃおうかな。

他にはお客さんもいないので、誰かが入れた訳でもなさそうです。店員さんも居ないし、やっちゃえ!

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ゲームスタートです。

わ、本当にタダで出来た!ラッキー。

そんなに麻雀を知っている訳でもありませんが、タダだったし、友達は誰も来ないし、時間ツブしで始めてしまいました。

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強くない麻雀でしたが、上手く勝ち続けます。

人のお金だと勝てるなぁ。

画面では女の子が少しずつ服を脱ぎ始めます。

うわぁ…。

恥ずかし紛れに、興味無さそうに全然違う方を向きます。

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わっ!

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真後ろに大柄な若い女性が立っていたのです。

びっくりしたのと、こんな空間に二人っきりでいる事と、なにより目の前の画面で、ヘンな動画が流れているのを見られている事で、動揺が隠せません。

その女性は微笑みながら、ゲームをしている僕と、服を脱ぐ女の子の動画を交互にゆっくり見ます。

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「あ…あのこれ、タダでゲームしてて…」

と、聞かれてもいないのに言い訳をする始末。

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その大柄なお姉さんは、そのゲーム台の2プレイヤー側の席に座りました。え、なんで…

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25歳ぐらいかな。こんなゲーセンに何しに来たんだろ…

でも、全ゲーム空いてんだから、そこに座らなくても良いのに…。

いろんな想像や感情が湧き出ます。

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ゲームを続けますが、もう上の空です。

勝ってまたヘンな動画が流れるのもイヤだし、ワザと負けました。

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終わっちゃった。てへへ。はぁ…。次なにやろっかな。

と独り言を行って移動しようとすると、お姉さんが話しかけてきました。

「ひとり?」

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「あ、待ち合わせです」と席を立ちましたが、腕を掴まれ「話そうよ」と席に戻されます。

割と強い力だったので、びっくりしました。

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「待ち合わせってカノジョ?」

「いえ。男友達を待ってます」

「カノジョいないの?」

「いません」

「作らないの?」

「あ…。まだ興味ありません」

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するとフフッと笑い

「こんなゲームやってんのに、ウソ」

「あ!だからこれはタダだったからやっただけで。あの…」

なんだか怖くなり「別のゲームやります」と席を立ちました。

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しかし「私と遊ぼうよ」と、また腕を掴まれます。

「あ、いいです」と振りほどきました。

すると急に表情が変わり「友達なんて来ねーよ!もう20分経ってんのに誰も来ねーじゃねーか!」と低い声。

お姉さんではなく、男性だったのです。

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大柄だった事や、力が強かった事、しゃべる声はとても小さく裏声の様な声だった事の符号が合いました。

「待ち合わせなんてウソなんだろ!」

腕を引っ張られ、店の外の方に引きずられます。

テーブルゲームを掴んで抵抗し「離してください!わー!店員さん!」と叫びましたが、誰も出てきません。

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「誰も来ねーよ!手を離せよ。ウチに行くぞ!」と凄い力で引っ張ります。

テーブルゲームがズレ始め、ゲームごと引きずられます。

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ゲーセンの扉が開きました。友達かも!と期待したのですが、友達は友達でも、このお姉さん(?)の友達でした。

しかも2人。絶望です。

手を掴んでいる人は女性の様な風貌ですが、友達二人は男性のままです。しかし男性を好きな人の様でした。

「今日はこの子?」と近付いてきます。

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「ゲーム台から手を外して!足持って!」とお姉さん(?)が指示すると、簡単に外され持ち上げられてしまいました。

「わー!助けて!誰か!」

3人に持ち上げられたまま店を出されてしまいました。

「離して!わー!」

周りは真っ暗で誰もいません。

腕を持ってた1人が耳元で言います。

「大声だすなよ、うるせえな。メチャクチャにする事も出来んだぞ」

そこらの不良より怖かったです。

あぁ…。もうダメだぁ…。

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すると遠くからビーン!と原付きの音!

1人目の友達が来ました。「おいUか!助けて!」

「お前…KOJIか?何してんだ。それ誰?」

「いいから助けて!」

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U君は原付きから降りて走り寄ってきました。

すると足を持ってた男性1人が僕の足を離し、U君の元へ。

「関係ねぇやつが出しゃばんなよ」と凄みます。

なぜかあっちは3人とも全員大柄。

僕は当時体重40kg台。U君も50kg台。

勝ち目はありません。

せっかく来てくれたU君でしたが、後ずさりをしてます。

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ようやく足が地面に付いた僕でしたが、両肩を2人にガッチリ掴まれ動けません。

「…お前ら、誰だよ」と慣れない威嚇を頑張るU君。「関係ねぇだろ!」と一蹴されます。

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ビーン!

M君もきました。彼も50kg台ですが…。

「おい、M!ヤベーよ」とU君。

大柄な女性(?)と知らない男性に掴まれてる僕、知らない男性と向かい合うU君。いつものゲームセンターの駐車場で、いつもとは完全に違う状況に焦り、M君も駆けつけます。

「なんだよ。どういう状況?」

「いや、俺も判んないけど、KOJIが連れて行かれそうで」

「え…なにそれ」

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お姉さん(?)がU君M君に対峙する男性に言います。

「ねぇ。もう連れてっちゃうから。あとから合流ね」と僕を引きずります。

U君M君の二人を目の前にしても、全く怯まない男性。

「別に取って喰ったりなんてしないんだから、もうほっときなよ。明日にはあの子に普通に会えるから。今日はお前らだけで遊んどけ」

「…」

怖くて顔を見合わせるU君M君。

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ビーン!

F君もきました。しかしF君も50kg前半…。

たくましい友達が欲しかったと、こんなに思った事は後にも先にもこれっきりです。

「おい、何人来んだよ…」腕を掴んでる男性が言います。

本当はこれで全員集合です。

しかし僕はウソをつきます。

「あと8人きます!」

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「はぁ?」男性が呆れて聞き返します。

お姉さん(?)が少し考え、ため息混じりに言います。

「はぁ。やめやめ!もうキリがない。中学生みたいなやつらがどんどん来んじゃん」

僕の肩から手を離しました。

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「良いの?」とU君たちの目の前に居た男性が振り向いてお姉さん(?)に訪ねます。

「あと8人来んだってさ。面倒くさい。今日はもう場所変えよ」と暗闇の方へ歩き始めました。すると他の二人も着いて行ってしまいました。

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何も知らない呑気なF君が「なになに?誰あれ。知り合い?女子いたじゃん。呼び戻して一緒に遊ぼうよ!」とはしゃいで近付いてきます。

訳も判らないまま、U君にパンチされるF君でした。

Concrete
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